「Reborn-Art Festival 2017」のフードディレクターとして
目黒浩敬さん連載「アルフィオーレの農場日記」第4回
2016.05.09

「Reborn-Art Festival」とは。
「Reborn-Art Festival 2017」とは、東日本大震災直後から積極的に支援や炊き出しを行ってきた「ap bank」の小林武史さんが中心となって、来春、石巻・牡鹿半島で開催するお祭りです。サイトではこんなふうに説明されています。
連載:目黒浩敬さん連載
「Reborn-Art Festival」とは、東日本大震災から5年、ここまで歩んできた現地の方々の“生きる力”や“生きる術”に共感した様々なジャンルのアーティストが、東北の自然や豊かな食材、積み重ねられてきた歴史と文化を舞台に、そこに暮らす人々とともに繰り広げる、いままでになかった総合祭とも言えるものです。
ここで生まれる新しいつながりから、地域復興や振興につながるさまざまな循環を生み出すことがこのお祭りの目的です。過疎の地域と都市との循環、伝統と新しさの循環、生命力の循環、自然と人間の循環、そして“被災地”と“支援者”との循環。これらの多様な循環をとおして地域の潜在力が目覚め、この地域の10年後、20年後の未来を形づくるきっかけになることを、私たちは目指しています。
「Reborn-Art Festival 2017」の話を初めて伺ったのは、その頃。話をお聞きしているうちに、単なる音楽やアートのイベントでないことはすぐに理解できました。それほど真剣に宮城のことを考えていらっしゃるのだなと、深く共感できました。
何度か話を伺っていく中で、小林さんから「食に関して何か協力してもらえないだろうか?」との打診があり、「ぜひご協力させてください」と即答しました。
具体的に、何をお手伝いできるかは後回しにして、自分なりの構想をお伝えしたら、なんと、「Reborn-Art Festival 2017」におけるフードディレクターという責務をいただくことになったのです。
継続と循環のむずかしさ。
しかし、小林さんがおっしゃる地域や資源の循環に関しては、そう簡単に語れるものでなく、まして実現できるものでもないなと思うのです。食において最も大事な部分ですし、地域に根付くには、2~3年で成し得るものでもない……。
真の意味で「地域に根付く」には、継続的で、環境に負荷をかけずに、循環していくものでなければなりません。でなければ、長続きしないからです。
ごく当たり前のことなのですが、その当たり前が一番むずかしいのかもしれません。
自然豊かな石巻・牡鹿半島では、震災以降、大規模な復旧工事も進んで、街の機能自体は、回復しつつあります。
でも、元に戻すだけでよいのだろうか、とも思います。
長い視野で捉え、見えにくいところに目を届かせて。
森がなくなってしまったら、海産物は今までと同じようにはいかなくなる。
先人たちの恩恵を受けて、その資源でこれまで行われてきたことが、未来の子孫に継承できなくなってしまう。継続的とは言えなくなってしまいます。
「Reborn-Art Festival 2017」の「食」については、そういった環境も見据えてなければなりません。地域の文化や資源を守ることから考えていかなければ……。
長い視野で物事を捉えた時に初めて、今、やらなければいけないことが何なのか、自ずと見えてくるはずです。
多くの人々の目には見えにくいところに、今回の責務はあるのだと思うのです。その役割をくださったご縁に感謝していますし、ずっとその問題に取り組んでいきたいと思います。
*「Reborn-Art Festival 2017」開催に向けて、2016年夏、石巻港雲雀野埠頭をメイン会場に、プレイベントとなる「Reborn-Art Festival × ap bank fes 2016」が開催されます。詳しくは、コチラまで。
目黒浩敬(めぐろ・ひろたか)
1978年福島県生まれ。教師を目指して大学に入るが、アルバイトで料理に目覚め、飲食店などで調理の基本を身に付ける。2004年渡伊。05年、仙台市青葉区に「アルフィオーレ」を開店するも、いったん閉めて、2007年現在地に再オープン。自然志向を打ち出した創作イタリアンとして評価を得る。2014年から宮城県川崎町の耕作放棄地にぶどうを植樹。2015年、店を閉め、農場づくりに本格的に取り組み始める。 https://www.facebook.com/hirotaka.meguro