古澤千恵さん(ふるさわ・ちえ) アンティークコーディネーター
第4話「イタリアの食を古物で伝える」(全5話)
2016.02.01
![](https://r-tsushin.com/wp-content/uploads/2021/09/400furusawa_chie4_01.jpg)
生きている
2005年から始まった古澤さんのブログ「トスカーナ オリーブの丘で暮らす。」には、トスカーナでの暮らしぶりと共に、手に入れた古物が紹介されています。
それらは皆、物自体は古いけれど、決して古めかしくはありません。
古びない普遍的なデザインと、枯れて際立つ美しさが同居している。
そして、今、使いたくなる。今の我々に刺激とヒントをくれる。
それらは皆、物自体は古いけれど、決して古めかしくはありません。
古びない普遍的なデザインと、枯れて際立つ美しさが同居している。
そして、今、使いたくなる。今の我々に刺激とヒントをくれる。
Photograph by Chie Furusawa
![](https://r-tsushin.com/data/people_pioneer/400furusawa_chie4_02.jpg)
Photograph by Chie Furusawa
この時代のものには珍しく、ぽってりと田舎風のオーバル皿。
模様のような貫入と独特なこの黄土色がかったこの色。
料理力のあるものをシンプルに盛り付けたい。
色をなくしたからこそ美味しくなる野菜、を盛りたい。
トスカーナの古きよき食卓を思い浮かべさせる、器です。
(2010年11月9日“カトロッセのオーバル皿”)
これを見ただけで、次々と情景が浮かぶ小さなサスペンダー。
革の色、それに繊細な真鍮の金具、縫い目の糸、間隔。裏革やゴムの色...。
いろいろなところのバランスが良くて、ドキッとするくらい、かわいらしい。
イタリアの革は時間とともに、美しさを増すようです。
今年はお洒落を楽しもう。そう思うのでした。
(2011年1月13日“小さいサスペンダー”)
模様のような貫入と独特なこの黄土色がかったこの色。
料理力のあるものをシンプルに盛り付けたい。
色をなくしたからこそ美味しくなる野菜、を盛りたい。
トスカーナの古きよき食卓を思い浮かべさせる、器です。
(2010年11月9日“カトロッセのオーバル皿”)
これを見ただけで、次々と情景が浮かぶ小さなサスペンダー。
革の色、それに繊細な真鍮の金具、縫い目の糸、間隔。裏革やゴムの色...。
いろいろなところのバランスが良くて、ドキッとするくらい、かわいらしい。
イタリアの革は時間とともに、美しさを増すようです。
今年はお洒落を楽しもう。そう思うのでした。
(2011年1月13日“小さいサスペンダー”)
歴史が裏付けるおいしさ
プライベートで台所を預かるのは、一記さんではなく千恵さんです。イタリアにいる10年間で、料理についてもずいぶん学びました。
料理本の執筆に当たり、最近、改めてトスカーナ料理について調べ直したそうです。
本を読み返すなどする中で、気づいたことがありました。
「新しい料理だと思っていたものも、実はずっと昔からある、中世の時代にまでさかのぼる料理だったんです。
改めて、イタリアってそういう国なんだな、と」。
料理本の執筆に当たり、最近、改めてトスカーナ料理について調べ直したそうです。
本を読み返すなどする中で、気づいたことがありました。
「新しい料理だと思っていたものも、実はずっと昔からある、中世の時代にまでさかのぼる料理だったんです。
改めて、イタリアってそういう国なんだな、と」。
これが本来の味
古物の世界の住人となっても、食と深く関わり続けることは、古澤さんにとって自然ななりゆきでした。
料理についてもっと知りたいという、イタリア料理店でのアルバイトを始めた時からの思い。
料理人でありソムリエの一記さんと共に人生を歩んでいくということ――「彼とのプロジェクト」、古澤さんはそんな言い方をしました。
そして、何よりそこがイタリアであるということ。
イタリアに住んでいた10年間、休日は一記さんと共にイタリア各地を巡りました。
その土地の市場やワイナリーを回り、郷土料理を食べ、食材を買って帰る。
気候風土と料理とワイン、それらが切り離せないものであることが、体験として刻み込まれていきました。
様々な古物との出会いは、そこに時間という縦糸を通していくようなものでした。
「現在も使われている道具でも、時代が遡ったり場所が変わると、素材や形が違うものがあります。
古物を通じて、当時の状況や、その土地の風景が見えてくる。
田舎の方では、たとえばチーズを作るのに、そういう道具が今も現役で使われていることがあります。そんなチーズがまた、すごくおいしくて。
あぁ、本来はこういう味なんだって気づかされます」。
料理についてもっと知りたいという、イタリア料理店でのアルバイトを始めた時からの思い。
料理人でありソムリエの一記さんと共に人生を歩んでいくということ――「彼とのプロジェクト」、古澤さんはそんな言い方をしました。
そして、何よりそこがイタリアであるということ。
イタリアに住んでいた10年間、休日は一記さんと共にイタリア各地を巡りました。
その土地の市場やワイナリーを回り、郷土料理を食べ、食材を買って帰る。
気候風土と料理とワイン、それらが切り離せないものであることが、体験として刻み込まれていきました。
様々な古物との出会いは、そこに時間という縦糸を通していくようなものでした。
「現在も使われている道具でも、時代が遡ったり場所が変わると、素材や形が違うものがあります。
古物を通じて、当時の状況や、その土地の風景が見えてくる。
田舎の方では、たとえばチーズを作るのに、そういう道具が今も現役で使われていることがあります。そんなチーズがまた、すごくおいしくて。
あぁ、本来はこういう味なんだって気づかされます」。
古物で食を表現する
古くて、新しい。
新しそうなものに、歴史がある。
イタリアでは、過去と現在が古物を通じて、食を通じて繋がっていました。
「古物も料理もワインも、それだけを見ているより、それを取り囲むものを知ることで、より味わい深くなります。
料理を作ったり、ワインを選ぶのは彼(一記さん)の仕事。
私はイタリアの食を、この国の奥深さを、古物によって表現していきたいと思っています」。
新しそうなものに、歴史がある。
イタリアでは、過去と現在が古物を通じて、食を通じて繋がっていました。
「古物も料理もワインも、それだけを見ているより、それを取り囲むものを知ることで、より味わい深くなります。
料理を作ったり、ワインを選ぶのは彼(一記さん)の仕事。
私はイタリアの食を、この国の奥深さを、古物によって表現していきたいと思っています」。
![](https://r-tsushin.com/data/people_pioneer/400furusawa_chie4_03.jpg)
Photograph by Chie Furusawa
最後の質問。
Q. 10年前と今で、古物の好みは変わりましたか?
A. 変わりましたね。昔は、好みが変わることは悪いことだと思っていたんです。それってスタイルが変わることだから。でも、ある古物商のおじさんに「それでいい、変わらなきゃダメなんだ」と言われて、受け入れるようになりました。選ぶものが変わると、認識の幅も広がるんです。お客様にも新たな発見を届けられます。
そうしてまた一つ、イタリアという国の素顔が見える。
「あぁ、やっぱりイタリアって、奥が深い」。
(次の記事へ)
Q. 10年前と今で、古物の好みは変わりましたか?
A. 変わりましたね。昔は、好みが変わることは悪いことだと思っていたんです。それってスタイルが変わることだから。でも、ある古物商のおじさんに「それでいい、変わらなきゃダメなんだ」と言われて、受け入れるようになりました。選ぶものが変わると、認識の幅も広がるんです。お客様にも新たな発見を届けられます。
そうしてまた一つ、イタリアという国の素顔が見える。
「あぁ、やっぱりイタリアって、奥が深い」。
(次の記事へ)
Text by Kyoko KIta
古澤千恵(ふるさわ・ちえ)
音楽大学を卒業後、ブライダル企画会社に就職。その後、夫の一記さんと共にイタリア留学へ。足繁く通った骨董市をきっかけに古物の世界に入り、2008年、イタリア古物などを販売するサイト「OVUNQUE」を立ち上げる。そのセンスに信頼を寄せる人は多く、テーブルコーディネートのほか、飲食店の什器手配、執筆など活躍は多岐にわたる。