サバで作るフレンチつまみ。「サバのリエット レモンとかんずり風味」
ブルーフード・レシピ
2023.06.29
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photographs by Tsunenori Yamashita
連載:ブルーフード・レシピ
海に囲まれ、豊かな漁場を有する日本には魚食文化が根付いています。魚を食べるなかで培われ、受け継がれてきた知恵や知識を継承し、上手に食べることは、多様性豊かな海の保全につながります。日本周辺でとれる水産物(ブルーフード*)の魅力を再発見するレシピを人気店のシェフに教わります。今回はアペロにぴったり、サバのリエットを紹介します。
*ブルーフードとは、淡水・海洋環境に由来する植物、動物、藻類など水生生物性食品のこと。食料危機や気候変動などの課題に対応し、健康的で持続可能な食料システム構築への貢献が期待されている。
**日本の漁獲量ランキング(農林水産省:令和3年漁業・養殖業生産統計)
1位マイワシ(21.1%)、2位サバ類(13.7%)、3位ホタテガイ(殻付き)(11.0%)、4位カツオ(7.6%)、5位スケトウダラ(5.4%)、6位カタクチイワシ(3.7%)、7位ブリ類(2.9%)、8位マアジ(2.8%)、9位マダラ(1.8%)、10位サケ類(1.8%)。
教えてくれた人
東京・外苑前「アミニマ」鳥山由紀夫さん
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ワインビストロ「Aminima」オーナーソムリエ。福岡県出身。調理師学校を卒業後、料理人を経てサービス担当に。乃木坂「レストラン・フゥ」で13年、恵比寿「サリュー」で12年、計25年の経験を積み、2014年に独立して現店をオープン。
photograph by Hide Urabe
旨味も水分も逃さずしっとりした口当たりに
ワインと相性のよいリエットは、豚など肉で作るのが主流ですが、私が無類のサバ好きなので、ここはサバで。
油分ではなく、水分でしっとりした口当たりにしたいので、サバに火を通しすぎてパサパサにしないのがポイントです。サバが含む水分が出過ぎないように、塩は加熱する直前に。煮るのはラードではなく、オリーブ油を使用。サバの皮と身の間の脂に旨味があるので、皮が鍋底にくっつかないよう、最初に皮を上にして煮ます。とは言え、加熱すると皮はほぐれにくく、口当たりが悪いので、加熱する前に表面の薄皮をむくのを忘れずに。
煮る油の温度は、よく言われる80℃だと加熱に時間がかかりすぎてサバから旨味が流れ出てしまうし、高過ぎると火が入りすぎてパサパサになる。試行錯誤して、100℃に保って10分程度煮て、火がちょうど入った状態で取り出しています。切り身の大きさ、脂ののり方にもよるので、時々取り出して火の入り具合を確認します。
サバをほぐし、新潟の唐辛子発酵調味料「かんずり」を加えます。辛みというより、味が締まり、コクと深みが出るんです。全体をよく混ぜ、味を調えます。パサつく場合はサバを煮た油を加えて。冷蔵庫で冷やし、1時間後から食べられます。肉のリエットと違い、手早く作れるのもこの料理のよいところです。形はラグビーボール形に。ラグビー愛も強い私のこだわりです!(笑)
「サバのリエット」材料と作り方
[材料](10皿分)
真サバ(フィレ)・・・800g
塩、コショウ・・・適量
オリーブ油・・・300ml
<材料A>
ニンニク・・・3片
タイム・・・3本
ローリエ・・・1枚
かんずり・・・5g
レモンの皮(ノーワックス)・・・1/2 個分
バター(溶かす)・・・40g
<仕上げ>
レモンの皮・・・適量
ピマンデスペレット・・・適量
[作り方]
[1] サバを3枚におろす
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サバは頭、内臓を取り、3枚におろす。小骨を抜き、薄皮をむく。
POINT:サバの皮はそのままだとほぐれず口当りが悪いので、表面の薄皮をむく。
[2] 直前に塩をふる
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サバを2等分に切る。塩をふると魚の水分が出るので、煮る直前に、身の面に塩、コショウをふる。
[3] 油で煮る
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鍋にオリーブ油、材料Aを入れて火にかける。香りが出たらサバの皮目を上にして入れる。100℃に保って煮る。
POINT: パサつかず、旨味が逃げない、最適の温度が100℃。皮と身の間の脂がおいしいので、皮を損なわないよう皮目を上にして煮る。
[4] ジャストの火入れで上げる
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5分程度で裏返し、さらに5分間煮る。取り出して、身の厚い部分の火の通りを確認する。
[5] 身をほぐす
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サバの身を取り出して熱いままボウルに入れ、木べらでほぐす。フライパンの油はとっておく。
[6] かんずり、煮油を加える
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かんずりを加えて混ぜ、5の油を約100ml 加えて全体によくなじませる。
[7] 溶かしバターを加える
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溶かしたバターを加えてよく混ぜる。塩で味を調える。
[8] 氷水にあてて冷ます
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ボウルの底を氷水にあてて冷やし、練るように混ぜる。粗熱がとれたら、レモンの皮をすりおろして加え、混ぜる。
[9] 形が保てる状態に
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持ち上げた時に形が保てる固さに。バットに広げてならし、表面をラップで覆って冷蔵庫で1時間冷やす。
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豚肉ではなくサバをリエットに。油分ではなく、火入れの具合でしっとりした食感に。爽やかなレモンの皮とピマンデスペレットでアクセントをつける。
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◎アミニマ
東京都渋谷区神宮前2-5-6
☎03-6804-2846
17:00~22:00LO(月曜~金曜)
16:00~21:00LO(土曜)
日曜休
東京メトロ外苑前駅より徒歩6分
https://www.aminima.jp/
※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
(雑誌『料理通信』2015年4月号掲載)
海洋資源を保護し、持続的に利用する
今日からできる気候変動へのアクション
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国連広報センターが「SDGメディア・コンパクト」に加盟する日本のメディア有志とともに、気候変動対策のアクションを呼び掛けるキャンペーン「1.5℃の約束 – いますぐ動こう、気温上昇を止めるために。」を実施しています。料理通信はこのキャンペーンに参加し、食にかかわる気候変動への取り組みを国内外から紹介しています。
海洋生態系による「ブルーカーボン」が温室効果ガス排出対策として期待されています。海の資源を守り、大切に使うことは気候変動対策につながることから、6月は、海洋保全について考え、アクションを起こすきっかけになる記事をお届けします。
●ActNow! 今すぐできる『10の行動』
「ActNow」は、個人レベルでの気候アクションをグローバルに呼びかける国連のキャンペーン。どんなことが気候変動の抑制に役立つのか、身近な行動を10項目挙げています。「環境に配慮した製品を選ぶ」では地産地消が、「廃棄食品を減らす」では食品を廃棄せず使い切ることが気候変動の防止に役立つとされています。
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環境に配慮した製品を選ぶ
私たちが購入するあらゆるものが地球に影響を及ぼします。あなたには、どのような商品やサービスを支持するかを選択する力があります。自身が環境に及ぼす影響を軽減するために、地元の食品や旬の食材を購入し、責任を持って資源を使ったり、温室効果ガス排出や廃棄物の削減に力を入れていたりしている企業の製品を選びましょう。
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廃棄食品を減らす
食料を廃棄すると、食料の生産、加工、梱包、輸送のために使った資源やエネルギーも無駄になります。また、埋め立て地で食品が腐敗すると、強力な温室効果ガスの一種であるメタンガスが発生します。購入した食品は使い切り、食べ残しはすべて堆肥にしましょう。
(国連・ActNowキャンペーン:気候変動の抑制に対して個人でできる『10の行動』より)
イラスト:Niccolo Canova
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