DIYレシピ04
飲みさしのワインで作る、自家製ワインビネガー
神奈川・鎌倉「オルトレヴィーノ」古澤一記シェフ
2022.02.07
photographs by Masahiro Goda
連載:DIYレシピ
塩蔵、乾燥、発酵・・・調理メソッド&テクニックを身に着けて、普段買っている食べ物を一から作ってみると、自分で味を作る喜びや安心感を得られます。天日に干したり、発酵させたり、自然の力にゆだねるレシピは、人間本位ではない生き方を学ぶ処方箋。シンプルな材料と道具で作れる自家製アイテムをシェフに教わります。
教わるテクニック:発酵
教えてくれたシェフ:神奈川・鎌倉「オルトレヴィーノ」古澤一記さん
酢酸菌にまかせて、気長に待つ
ワインビネガーはワインに酢酸菌を自らおこすやり方と、生きた酢酸菌を持つ他のビネガーをワインに足して作る二つの方法があります。いずれの場合も、気長に待つのが仕事です。待つ時間は、選んだワインによって様々。環境によっても左右されるので「このワインなら何カ月」と明確な数字はお伝えできないのですが、ビネガーになりやすいワインの特徴はあります。なるべく色調が淡く、酸化防止剤(SO2)の使用量が少ないもの。また濾過をしていないワインがおすすめです。
待つこと以外に人間ができる作業は、酢酸菌が繁殖しやすい環境を作ること。保管場所は冷蔵庫では寒すぎるので、室温で。うちは15〜25℃に置いてます。人が快適に感じる温度帯と同じです。
ワインだけで作る場合、酢酸菌膜ができるまでは、空気に触れさせる必要があります。瓶の口までいっぱいにせず、また空気を遮断しないよう、通気性のよい紙や網で覆います。蓋をしないほうが酢酸菌のできるスピードは速いのですが、小さな羽虫が寄りやすいので覆うものは必要です。
いろんなワインで、個性豊かなビネガーを
数カ月後、ワインの液面に白いもやもやとした膜が表れます。酢酸菌膜です。これができたら成功ですが、もう少し発酵させたほうがいいので、匂いを嗅いだり、膜を壊さないように味をみて判断します。瓶を揺らしたり、ワインで濡らすとせっかく育った酢酸菌が死んでしまうので注意を。
自家製ビネガーは、イタリアのレストラン「アメリーゴ」で知りました。芳醇な香りでツンとしない。どこの酢だろうと思ったら、自家製でした。樽に酢母(マザービネガー)入りの元酢があって、必要な分を抜いたら、ワインを足していくオルレアン方式というやり方です。僕も、自家製ビネガーに飲みさしのワインを足したり、逆に飲みさしのワインに、自家製ビネガーを足して、いろんなビネガーを作っています。先日、白でも仕込んでみました。今、出来上がりを待っているところです。
自家製ワインビネガーの極意
1 無濾過、ナチュラルな造りの赤ワインがおすすめ。
2 酢酸菌は好気性。空気に触れる面を大きくする。
3 瓶は揺らさず、静かに気長に待つ。
【 材 料 】
【 作り方 】
[1]ワインを瓶に注ぐ
〈材料A 赤ワインのみの場合〉
瓶の7分目までワインを注ぐ。
〈材料B赤ワイン+酢酸菌の生きた酢の場合〉
ワインを半分まで注いだら、7分目まで酢を注ぐ。
POINT:液の上に空間を作る
[2]蓋をして静かにおく
網や通気性のよい紙で覆う。数カ月で表面に酢酸菌の膜が張り、半年~2年かけて酢になっていく。
POINT:エナメル塗料のようなにおいがあるうちはまだ酢になっていないので、待つ。
[3]ワインを追加する
酢になったら必要な分を取り出し、再び新しいワインを注いで酢になるのを待つ。 酢酸菌の働きは環境や酢酸菌そのものでも違うので、完成する速さは異なる。
POINT:熟成期間や、ワインのタイプによって色合いは様々。柔らかい紫色、シェリービネガーのような琥珀色になるものもある。
【完成品】
熟成期間や、ワインのタイプによって色合いは様々。柔らかい紫色、シェリービネガーのような琥珀色になるものもある。
◆仕込み時間:5分 ◆食べごろ:半年~2年 ◆保存方法:室温で
【 ワンポイントアドバイス 】
<初心者編>
酢酸菌は好気性なので、最初は特に空気に触れる面を大きくしたい。酢酸菌の膜が張った状態もよく見えるよう、口の大きな瓶が望ましい。
<上級者編>
自家製酢が安定してきたら、飲みさしのボトルにそのまま加えて待つ方法も。古澤さんはこの方法で個性豊かなワインビネガーをいくつも作っている。
<自家製ビネガーの料理展開例>
◎OLTREVINO
神奈川県鎌倉市長谷2-5-40
☎0467-33-4872
レストラン:12:00~21:30(17:30LO)
ショップ:12:00~17:00
水曜、木曜休
江ノ島電鉄長谷駅より徒歩4分
http://oltrevino.com/
※新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
(雑誌『料理通信』2015年7月号掲載)