DIYレシピ09
手作りで、辛さも香りも格段に鮮やかに! レッドカレーペースト
タイ料理研究家 長澤恵さん
2022.07.04
photographs by Kouichi Takizawa
連載:DIYレシピ
塩蔵、乾燥、発酵・・・調理メソッド&テクニックを身に着けて、普段買っている食べ物を一から作ってみると、自分で味を作る喜びや安心感を得られます。天日に干したり、発酵させたり、自然の力にゆだねるレシピは、人間本位ではない生き方を学ぶ処方箋。シンプルな材料と道具で作れる自家製アイテムをシェフに教わります。
教えてくれたシェフ:タイ料理研究家 長澤恵さん
潰す順番で香りも舌触りも変わる
タイカレーは数多くの種類があり、使うハーブや香辛料によって色、香りや辛さが違います。レッドカレーは乾燥赤唐辛子が主役。複雑で奥行きが出るので、辛味と香り豊かな小さなタイ産唐辛子、甘味のある大きなタイ産唐辛子の2種を合わせますが、手に入る唐辛子でよいでしょう。
叩き潰す工程が一番大切です。フードプロセッサーでもよいですが、クロック(タイのすり鉢)で作ると香りも舌触りも抜群です。うまく潰すには順番を守ること。乾燥唐辛子はハサミで輪切りにし、水に浸けてやわらかく戻してから最初に潰します。カーやレモングラスは繊維を断つように輪切りにし、ニンニクやホムデン(赤小タマネギ)は丸のまま加えていきます。粒の香辛料は、乾煎りしてから別途すり潰しておき、旨味のベース、カピを混ぜてから最後に加えることで粉スパイスが水分を吸い更に滑らかに潰せます。
このペーストはタイ中部地方のもの。カレーだけでなく、料理全般に広く使えます。カレーや炒めものには最初に炒めて火を通してから使うと香りが立ちます。ココナッツミルクと一緒に使えば辛味が奥深くまろやかに、そのままなら、また違った表情の辛味に。ココナッツミルクは均質化してない物を選んでください。固形分をまず溶かし炒め、液体分で具を煮るようにするとおいしく仕上がります。
自家製レッドカレーペーストの極意
1 乾燥唐辛子は水で戻しておく。
2 スパイスとハーブは、潰す順を守ると滑らかに仕上がる。
3 レッドカレーなどには、最初に炒めて香りを出してから。
【材料】(作りやすい分量)
【A】
乾燥唐辛子(大・タイ産)・・・10g
乾燥唐辛子(小・タイ又は国産)・・・4g
塩・・・8g
【B】
カー(タイのショウガ)・・・15g
レモングラス・・・20g
パクチーの根・・・2束分
【C】
ニンニク・・・20g
ホムデン(エシャロットでも代用可)・・・20g
【D】
白粒コショウ・・・2g
コリアンダーシード・・・大さじ1/2
クミンシード・・・小さじ1/2
カピ(蝦味噌)・・・15g
[1] 唐辛子を水に浸ける
Aは、両方ともハサミで細い輪切りにし、種を抜いてから、水に2時間以上浸けてやわらかく戻しておく。
[2] 繊維の多い材料を輪切りに
Bはすべて、繊維を断つように薄く輪切りに。レモングラスは緑色に変わる手前まで。Cは皮をむく。
[3] 香辛料を乾煎りする
Dはすべて、中火のフライパンで乾煎りする。
[4] 香辛料を潰す
クロックで叩き潰す。粉状になったら一旦取り出す。
[5] まず唐辛子をペースト状に
1の水気を切ってクロックに移し、塩を加えてすり潰す。
[6] 粘り気が出るまで潰す
時間がかかるが、粘り気が出るまで根気よく潰す。
[7] 水分の少ない材料から順番に潰す
続いて2を潰す。一度に加えず、少しずつクロックの底の中央に落として潰していくときれいに潰せる。
[8] カピを加える
B、Cがすべて滑らかに潰せたら、カピを加えて全体に溶かし混ぜる。
[9] 粉状のスパイスを戻す
カピが混ざり切ったら、最後に粉状に潰した3をクロックに入れ戻し、つやが出るまで叩き潰す。
◆制作時間:2時間 ◆食べごろ:すぐ ◆保存期間:冷蔵庫で2~3日、冷凍庫で1カ月程度
[道具のポイント]
要の調理道具・クロック
石製のすりこぎ&すり鉢「クロック」で潰す方が粘りも香りも出る。タイ食材店で5000円前後で買える。フードプロセッサーでも可。
[仕上げのポイント]
ココナッツミルクは2つに分けて
カレーペーストと一緒に使うことが多いココナッツミルク。固体(バター)と液体(それ以外)に分離しているタイプを選び、2つに分けて用いる。
レッドカレーペースト <展開例>
ペーストは非加熱なので、香り出しの意味も兼ね、必ず火が入る用い方を。炒め物や煮物は、ココナッツミルクを使うか使わないかで、さらに味の変化もつきます。
◎タイ料理教室 ティッチャイタイフード
https://www.titcaithaifood.com/
(雑誌『料理通信』2017年5月号掲載)
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