ひとたらしで料理に深みを与える「檸檬塩」
【DIYレシピ】野村友里
2024.03.04
photographs by Tsunenori Yamashita
連載:DIYレシピ
塩蔵、乾燥、発酵・・・調理メソッド&テクニックを身に着けて、普段買っている食べ物を一から作ってみると、自分で味を作る喜びや安心感を得られます。天日に干したり、発酵させたり、自然の力にゆだねるレシピは、人間本位ではない生き方を学ぶ処方箋。シンプルな材料と道具で作れる自家製アイテムを食のプロに教わります。今回は、料理にキレと深みを与える「檸檬塩」。季節の柑橘でも応用できる自家製調味料です。
目次
- ■教えてくれた人:フードディレクター・野村友里さん
- ■自家製調味料で自分だけの味に
- ■「檸檬塩」材料と作り方
- ■展開例「ジャガイモと檸檬塩の温かいサラダ」
- ■展開例「鮪のグリル、ピスタチオと檸檬塩のソース」
- ■東京・明治神宮前「イートリップ・ソイル」の店舗情報
教えてくれた人:フードディレクター・野村友里さん
自家製調味料で自分だけの味に
素材がいいと、料理はどんどんシンプルになる。オリーブオイルと塩があれば事足りることも多々。となると、素材の組み合わせ方や一つひとつの調味料が大事になってくる。その調味料を手作りすれば、自分だけのストーリーが込められ、おいしさもひとしおとなる。
アンチョビーを始め、調味料的に使える保存食を幅広く作っているフードディレクターの野村友里さん。「檸檬塩」もそのひとつ。材料はレモンと塩だけ。作り方は至って簡単。でも、その効果はてきめん。ひとたらしで、料理にぐっと深みが加わる。
カラカラに乾いた、ころんと小さなドライレモンは香りのよさが身上。「自分でも作ってみようと思ったんです。でも日本の気候では、ここまで乾燥しない。檸檬塩ならば、ドライレモンと同じように使え、日本の風土に合っていると思いました」。野村さんが好きなモロッコの鶏料理には、このドライレモンがマル必だが、檸檬塩を使うと香りだけでなく塩分も加えられるという。
レモンは大好きな豊島(手島)産始め、無農薬の国産を使用。「作る料理はイタリアンでもフレンチでも、素材は足元のもの、国産がいいと思っています」。ポイントは「切り口に塩を付けること」。2週間経った頃、塩が溶け始めたら使用開始可能。「レモンももちろん使えます。新しいものですと、食感も楽しめますし、古漬けもまたよし」。塩は好みの塩で。レモンの採れる地域なら、レモンも塩も地元産で作ると、「その土地ならではの風土の味になり、自分らしい調味料が出来上がります」。
「檸檬塩」材料と作り方
[材料]
<レモン>
レモンは皮ごと使うので、国産無農薬のものが望ましい。無農薬が手に入らない場合は、熱湯に通してよく洗ってから。無農薬の場合もよく洗い、水気を拭いておく。
<塩>
手に入りやすい天然塩をお好みで。細かい粒のものを選ぶと溶けやすい。
[下準備]
口が広い保存容器を用意する。使う前に、熱湯消毒しておくこと。
[作り方]
[1]レモンの断面に塩をつける
レモンのヘタをカットして2等分する。レモンの切り口に塩をつける。
POINT:レモンの切り口に塩を付けておくと、水分が出て塩が溶けやすい。
[2]瓶に詰めて塩を加える
隙間が空かないように、きっちり瓶に詰めていく。レモンをいくつか入れたところで、塩を加える。
POINT: 時間が経つと嵩が減るので、隙間が空かないようにきっちり詰めること。
[3]さらに詰める
ぎゅっと押し込むようにして、さらにレモンを詰め、隙間に塩を加える。
[4]蓋をして塩を行き渡らせる
瓶の口いっぱいに塩とレモンが入ったら、蓋をする。瓶を振り、塩を行き渡らせる。
[5]2週間程寝かす
塩が溶けた2週間後くらいから使用可能。溶けたら実が空気に触れないように、たまに天地を返す。
展開例「ジャガイモと檸檬塩の温かいサラダ」
ぼんやりしがちなジャガイモが檸檬塩でキリッと締まる。刻んで混ぜたレモンの皮が、心地よいアクセントに。
[材料](2~3人分)
ジャガイモ(中)・・・2 個
無塩バター・・・大さじ1
檸檬塩・・・適量
檸檬塩のレモンの皮(みじん切り)・・・小さじ1
茹で卵・・・1個
[作り方]
[1]ジャガイモは皮を剥かずに水から茹で、竹串が通るくらいまでやわらかくなったら、皮を剥く。
[2]ジャガイモが熱いうちに粗く潰し、バターと檸檬塩、レモンの皮を加えて混ぜ合わせる。
[3]2を皿に盛り、仕上げにE.V. オリーブ油と檸檬塩を2:1 で混ぜたもの(共に分量外)を回しかけ、カットした茹で卵を添える。
展開例「鮪のグリル、ピスタチオと檸檬塩のソース」
マグロと相性の良いアボカドの組み合わせ。コクがあるピスタチオのソースには、檸檬塩を加えて爽やかさを添えて。皮のみじん切りも加えることで、味わいにメリハリが生まれる。
[材料](約2人分)
マグロのサク・・・100g
ピスタチオペースト*・・・大さじ1
檸檬塩・・・適量
檸檬塩のレモンの皮(みじん切り)・・・小さじ1
アボカド・・・1/2 個
ピスタチオ・・・適量
ミント・・・少量
*ピスタチオとE.V.オリーブ油を1:1で合わせ、ミキサーにかけて滑らかになるまで撹拌したもの。
[作り方]
[1]マグロは薄く塩をしてから少量のオリーブ油(分量外)をまぶし、よく熱したグリルパンで表面をさっと焼く。食べやすい大きさに切る。
[2]ピスタチオペーストに檸檬塩とレモンの皮のみじん切りを加えて混ぜ、皿に広げる。
[3]2の上にスライスしたアボカド、1のマグロを置き、仕上げに粗くみじん切りにしたピスタチオとミントを散らす。
東京・明治神宮前「イートリップ・ソイル」の店舗情報
◎イートリップ・ソイル
東京都渋谷区神宮前5-10-1 表参道GYRE 4F
☎03-6803-8620
11:00~19:00(日曜~18:00)
月曜休
東京メトロ明治神宮前駅
表参道駅より徒歩3分
Instagram:@eatripsoil
※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
( photograph by Hide Urabe )
(雑誌『料理通信』2013年3月号掲載)
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