火入れで引き出すアーモンドの深い味わい「クロッカン・オ・ザマンド」
フェーズフリーな食材レシピ:アーモンド
2025.03.06

photographs by Tsunenori Yamashita
乾物や缶詰など常温で長期保存できる食材は、備蓄食品にも向く優れもの。普段の食事にも取り入れることで、「いざという時に賞味期限が切れていた」「食べ慣れない味で食が進まない」という問題も避けられます。「いつも」と「もしも」をつなぐフェーズフリー*な食材を、おいしく活用するレシピ。今回は、栄養価の高いアーモンドをたっぷり使ったクリスピーな食感が持ち味の「クロッカン・オ・ザマンド」です。
*フェーズフリー(Phase Free)は、防災の専門家として活動を続けてきた佐藤唯行氏が2014年に提唱した考え方。
目次
- ■教えてくれた人:東京・碑文谷「パティスリー ジュン ウジタ」宇治田潤シェフ
- ■ローストしすぎないことが肝心
- ■クリスピーに仕上げるポイント
- ■「クロッカン・オ・ザマンド」材料と作り方
- ■東京・碑文谷「パティスリー ジュンウジタ」の店舗情報
教えてくれた人:東京・碑文谷「パティスリー ジュン ウジタ」宇治田潤シェフ

宇治田 潤シェフ。1979年東京生まれ。神奈川・葉山「サンルイ島」を経て2004年に渡仏。パリ「パティスリー・サダハル・アオキ・パリ」で修業後、鎌倉「パティスリー雪乃下」を経て 11 年独立。
ローストしすぎないことが肝心
ナッツの火入れは難しい。こんがり色づいていながら、食べてみると、思いのほか味がないということがある。香ばしさばかりで、アーモンド本来の味わいが広がらないのである。「ナッツは焼き過ぎてもいけませんね。一番味が引き出されるポイントを見極めなければ」と宇治田潤さん。
クロッカン・オ・ザマンドは、ローストしたアーモンドに卵白の生地を絡めて焼くお菓子。つまり、アーモンドを2度焼きすることになる。だから、「生地に混ぜる前のローストは焼き過ぎないことが肝心です」。皮付きのおいしさを表現するため、皮ごとローストする分、火入れの加減が見極めにくい。こまめに窯から出して、ひと粒割って、確認する手間を怠らないようにしよう。
もうひとつ、このお菓子で、意外に注意が必要なのは卵白だという。「卵は、季節によって状態が変わります。夏場は暑くて鶏が水をたくさん飲むので、卵白が水っぽくなる。卵白の配合が2~3グラム違っただけで、生地の密度が変わりますね」。
シンプルなお菓子ほど、素材や火入れの些細な違いが味や食感に大きく影響するのである。「そうなんです、シンプルなお菓子ほど、奥が深いんです」
クリスピーに仕上げるポイント
【1】卵白の状態を確かめて

卵白の濃度は季節によって変化する。暑くて鶏が水を飲む夏場は水っぽくなる。卵白の濃度は生地の濃度や焼き上がりにも影響するので注意しよう。
【2】合わせるだけでいい

厚かったり薄かったり、ナッツが偏っていたり、ムラがあるのがこのお菓子の味。あえてざっくりと、均一にならないように作りましょう。
【3】ナッツとスパイスが立つ配合

卵白と小麦粉の量は少なめ、あくまで素材をまとめるつなぎ役。アーモンドとスパイスの風味が立ち上る配合なんですね。
「クロッカン・オ・ザマンド」材料と作り方
[材料](直径約4cm×100枚分)
アーモンド(皮付き)・・・300g
卵白・・・100g
薄力粉・・・150g
アーモンドパウダー・・・100g
シュークル・バニーユ*1・・・80g
シナモン・・・5g
ドリュール*2・・・適量
*1 使い終わったバニラビーンズの莢を乾燥させてミルで粉砕したパウダー40gとグラニュー糖40gを混ぜ合わせたもの。乾燥させた莢がない場合は、
*2 卵黄2個、グラニュー糖10g、牛乳10gを混ぜ合わせる。
[作り方]
[1]アーモンドを焼く
![[1]アーモンドを焼く](https://r-tsushin.com/wp-content/uploads/2025/03/phasefree_recipe_31_patisserie_junujita_06.jpg)
(左)ロースト後/(右)ロースト前
アーモンドを焼く。天板に並べて、180℃で約30分。途中、3回ほど窯から出し、アーモンドをガラガラと混ぜて、全体に火を通す。
[2]低速で撹拌
![[2]低速で撹拌](https://r-tsushin.com/wp-content/uploads/2025/03/phasefree_recipe_31_patisserie_junujita_07.jpg)
ミキサーボウルに、卵白、薄力粉、シュークル・バニーユ、シナモンを入れて、低速で1分弱ほど撹拌する。
[3]アーモンドを加え混ぜる
![[3]アーモンドを加え混ぜる](https://r-tsushin.com/wp-content/uploads/2025/03/phasefree_recipe_31_patisserie_junujita_08.jpg)
粉気がなくなる前に、アーモンドを投入。ほんの数十秒回して、全体が混ざり合ったら、ボウルをミキサーから外す。
[4]カードで返し混ぜる
![[4]カードで返し混ぜる](https://r-tsushin.com/wp-content/uploads/2025/03/phasefree_recipe_31_patisserie_junujita_09.jpg)
ボウルの底から生地を返すようにして、カードで全体を混ぜ合わせる。
[5]手でまとめる
![[5]手でまとめる](https://r-tsushin.com/wp-content/uploads/2025/03/phasefree_recipe_31_patisserie_junujita_10.jpg)
まな板の上に取り出し、手でまとめる。
[6]ザクザク切る
![[6]ザクザク切る](https://r-tsushin.com/wp-content/uploads/2025/03/phasefree_recipe_31_patisserie_junujita_11.jpg)
生地の中のアーモンドを2~3等分するつもりでザクザク切る。
[7]棒状に伸ばす
![[7]棒状に伸ばす](https://r-tsushin.com/wp-content/uploads/2025/03/phasefree_recipe_31_patisserie_junujita_12.jpg)
生地とアーモンドがなじみ合うように、手で軽くこねながら、まとめあげた後、棒状に伸ばす。
[8]切る
![[8]切る](https://r-tsushin.com/wp-content/uploads/2025/03/phasefree_recipe_31_patisserie_junujita_13.jpg)
1cm幅にカットする。
[9]天板に並べる
![[9]天板に並べる](https://r-tsushin.com/wp-content/uploads/2025/03/phasefree_recipe_31_patisserie_junujita_14.jpg)
手のひらでつぶして(不揃いでよい)、天板に並べる。
[10]ドリュールを塗る
![[10]ドリュールを塗る](https://r-tsushin.com/wp-content/uploads/2025/03/phasefree_recipe_31_patisserie_junujita_15.jpg)
表面にドリュールを塗る。
[11]粉糖をふる
![[11]粉糖をふる](https://r-tsushin.com/wp-content/uploads/2025/03/phasefree_recipe_31_patisserie_junujita_16.jpg)
粉糖をふる。
[12]焼く
![[12]焼く](https://r-tsushin.com/wp-content/uploads/2025/03/phasefree_recipe_31_patisserie_junujita_17.jpg)
155℃のコンベクションオーブンで30~40分焼く。生地中の糖分と表面の粉糖とで、全体がカラメリゼされる感じに焼き上がる。

Croquant(クロッカン)とは、フランス語で「カリカリした」の意味。火入れによって引き出されたナッツの深い味わいと、名前通りクリスピーな食感が持ち味。バニラやシナモンの風味も一役買っている。
東京・碑文谷「パティスリー ジュンウジタ」の店舗情報
◎パティスリー ジュンウジタ
東京都目黒区碑文谷4-6-6
☎03-5724-3588
10:30~18:00(土曜、日曜、祝日は~17:00)
月曜、火曜休
東急線学芸大学駅より徒歩18分
http://www.junujita.com/
(雑誌『料理通信』2014年9月号掲載/本文はウェブサイト用に一部調整しています)
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