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RECIPE

和洋中問わず使える!新感覚かつおだし「かつおオイル」活用術

フェーズフリーな食材レシピ:かつお節

2025.03.24

和洋中問わず使える!新感覚かつおだし「かつおオイル」活用術

photographs by Tsunenori Yamashita

連載:フェーズフリーな食材レシピ

乾物や缶詰など常温で長期保存できる食材は、備蓄食品にも向く優れもの。普段の食事にも取り入れることで、「いざという時に賞味期限が切れていた」「食べ慣れない味で食が進まない」という問題も避けられます。「いつも」と「もしも」をつなぐフェーズフリー*な食材を、おいしく活用するレシピ。今回は、高たんぱくで9種類すべての必須アミノ酸を含み、災害時の栄養補給としても役立つかつお節を使った、新感覚のかつおだし「かつおオイル」を紹介します。

*フェーズフリー(Phase Free)は、防災の専門家として活動を続けてきた佐藤唯行氏が2014年に提唱した考え方。

目次






教えてくれた人:やさい料理家 二部桜子さん

やさい料理家 二部桜子さん

ニューヨークのアートスクールを卒業し、アパレル業界で働く。2017年、東京・蔵前にスタジオ「SHUNNO KITCHEN」を構える。レシピ開発やスタイリング、ケータリング、料理教室、マルシェなど、多方面で野菜の美味しさを伝える活動を行う。
https://shunnokitchen.com/


旨味と風味豊かな万能フレーバーオイルに

かつお節から取る「かつおだし」は、料理に豊かな風味を加える和食の基本。料理人の世界では昔から、「かつお節は客の顔を見てから削れ」と言われてきたほど、削りたての風味が味の決め手になるらしい。パック包装しか知らない身には未知の話だ。

「シュンノ・キッチン」主宰の二部桜子さんにとっても「かつお節削り器」は、昔、母親が使っていた懐かしい道具だった。長く暮らしたブルックリンと同じく、下町情緒が残る蔵前にスタジオを構えて以来、御徒町の専門問屋「安藤鰹節店」で削り節を求めていたが、一念発起してかつお節削り器を買うまで、自分で削ったことはなかった。削りたてを食べてみると、「今まで食べていたかつお節とはまったく違う。スモーキーで、チーズみたいなコクも。これだけでつまみになる!と思いました」。

二部さんが使うのはカビ付けして天日干しした「枯れ節」。かつお節には枯れ節と、カビ付けする手前、「焙乾(ばいかん)」という燻す工程を経て作る「荒節」がある。カビ付けすることで脂肪分が分解され、よりすっきり、上品な味になり、旨味成分も増すという。

「魚を使った保存食でもアンチョビーやカラスミほど塩気や魚っぽさが前面に出ず、まろやかでやさしい味。いろんな料理に使えそう」

新しい食材に出合った気分になり、和食の枠にとらわれない自由な発想が広がる。オリーブ油に加えると、かつお節の旨味が移った「かつおオイル」ができた。醤油と合わせるだけで風味豊かなドレッシングになる。ニンニクと一緒に火を入れた「ガーリックかつおオイル」は食欲をそそる、万能のフレーバーオイルだ。

シュッシュッとかつお節を削る音。ふわりと漂う香り・・・。母親が削っていた情景が蘇り、心が豊かに満ちていく。


かつお節の準備

カビをつけて天日に干した「枯れ節」

カビをつけて天日に干した「枯れ節」。枯れが進むほどすっきりして深い味に。使用後は袋に入れて冷蔵庫で保存する。左側が雄節(背側)で脂肪が少なくすっきりした味わい。右側が雌節(腹側)で、雄節に比べて脂肪が多くコクがある。削る時は、頭側(上部)から斜め45度に刃を当てる。下半分に見えている黒っぽい部分が皮。

<カビの取り方>
[1]水を流しながら、タワシでゴシゴシ洗う。濡れ布巾で拭きとるより簡単でよく落とせる。

水を流しながら、タワシでゴシゴシ洗う

[2]水気を拭き取り、焦がさないように遠火で炙り、表面を乾かす。

焦がさないように遠火で炙り、表面を乾かす

かつお節の削り方

<カンナの調整>

カンナの上下を木槌で叩いて調整する

うまく削るために刃の調整が不可欠。紙1枚分を目安に刃を出す ため、カンナの上下を木槌で叩いて調整する。

<持ち方>

頭側を下に、残した皮の面が手のひら側、腹側が親指になるように持つ。

頭側を下に、残した皮の面が手のひら側、腹側が親指になるように持つ。

<手の動かし方>

カンナの刃先を手前に向けて置き、かつお節を45℃の角度で奥に押し出すように削る

カンナの刃先を手前に向けて置き、かつお節を45℃の角度で奥に押し出すように削る。最初は粉が出るが、面ができると大きく削れる。滑り止めに布を敷くとよい。

表面は真っ平らでべっ甲のように艶やか

削り始めは粉状だが、徐々に面ができ、削りやすくなる。表面は真っ平らでべっ甲のように艶やか。

削り節

削りたてはスモーキーでチーズのようなコクがあり、これだけでつまみになるおいしさ。炊きたてごはんにたっぷりのせて醤油を回しかけても最高。


「かつおオイル」2種の作り方と活用術

【1】基本のかつおオイル

かつおオイル

削りたてのかつお節をオリーブ油に加えて一晩おく。時間をかけてかつお節の風味を移したオイルはさらりとして旨味もしっかり。

[作り方]
保存容器にオリーブ油(1カップ)を入れて削ったかつお節(1/2カップ)を加えて一晩おく。冷蔵庫で1週間程度保存可能。

<展開例>
ダイコンとカブのサラダ

ダイコンとカブのサラダ

紅心ダイコンやカブなど数種類の野菜をかつおオイルと醤油を合わせたドレッシングで和えて、パリッとした食感が小気味良いサラダに。

[作り方](すべて適量)
[1]ダイコンとカブは皮付きのまま、食べやすい大きさにスライスする。
[2]別のボウルにかつおオイル(大さじ1)と醤油(小さじ1)を合わせてドレッシングを作る。
[3]を加えて和え、皿に盛る。半分に切ったラディッシュ、茹でたスナップエンドウ、かつお節、ハーブを飾る。


【2】ガーリックかつおオイル

ガーリックかつおオイル

ニンニクとオリーブ油にかつお節の旨味をプラスしたフレーバーオイル。コクのある味わいでローストしたジャガイモに絡めても美味。

[作り方]
鍋にかつお節(1/2カップ)、オリーブ油(1カップ)、スライスしたニンニク(2片)を入れて蓋をし、100℃のオーブンで1時間煮る。冷蔵庫で1週間程度保存可能。

<展開例>
茎ブロッコリーのパスタ

茎ブロッコリーのパスタ

歯応えよく炒めたブロッコリーとガーリック&かつお風味のオイルは相性抜群。アンチョビーほど塩気も癖もなく、いろんな料理に使えそう。

[作り方](すべて適量)
[1]フライパンにガーリックかつおオイルを温め、ブロッコリーを加えて炒める。茹でたパスタ、茹で汁を加えて和える。
[2]皿に盛り、かつお節を飾る。オイルを回しかける。

(雑誌『料理通信』2019年3月号掲載/本文はウェブサイト用に一部調整しています)

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