疲れを癒すスパイスおかゆ。インドの養生食「キチュリー&トマトチャトニー」
プラントベースの始め方 42
2024.05.27
photographs by Sai Santo
連載:プラントベースの始め方
健康や環境への配慮から、植物性の食材を主体とする“プラントベース(Plant Based)”な食事法が注目されています。肉や魚や乳製品に頼らずとも「おいしい」料理を作る知恵は、世界各地に存在します。身近なレシピからおいしくプラントベースを始めるヒントを紹介します。
教えてくれた人
インド・スリランカ料理研究家 香取 薫さん
スパイスの香りと薬効を生かす
心身が不調の時でも喉を通るとろとろのおかゆ。癒される味わいにスパイスを加えたら、日本人は驚くだろうか。
「インドの食事は、辛さや刺激が強いものばかりではありません。消化によく、スパイスの香りと薬効を生かした優しい味の養生食が、家庭には古くから伝わっています。それらはインド予防医学アーユルヴェーダの理論に基づきます」と教えてくれたのは料理研究家・香取薫さん。
おかゆにスパイスを効かせると、特別な旨味やだしがなくても、馥郁たる香りが口に広がり、和のおかゆとはまた違ったエキゾチックな魅力が楽しめる。
例えばインドらしい豆がゆ、キチュリー。豆は消化に軽いムングダール(緑豆)のひき割りを加え、殺菌作用の高いターメリックと油を加えた水で炊き、仕上げにギーで加熱したスパイスを混ぜる。
バターを加熱し不純物を分離させて作る油、ギーは体に負担をかけず、スムーズに燃えるといわれる。北インドには今でも、胃を休めるために毎週土曜にキチュリーを食べる習慣がある。
「かつての私は、こうしたインドの食の知恵によって、日々の疲れを持ちこさない、逞しい体に変えてもらったんですよ」
<植物性だけでおいしくなるコツ>
1 風味づけオイル「タルカ」を垂らしてコクと香りをプラス
2 「トマトチャトニー」で“味変”を楽しむ
「キチュリー」の作り方
[材料](2人分)
米・・・1/2カップ
ムング豆(緑豆・皮剥きひき割りのタイプ)・・・大さじ3
水・・・2カップ
ターメリック・・・小さじ1/4
サラダ油・・・小さじ1/2
塩・・・適量
タルカ(風味づけオイル)
ギー・・・小さじ2
クミンシード・・・小さじ1/2、
ヒーング・・・ひとつまみ
ニンニク、ショウガ(みじん切り)・・・各スライス2枚
香菜(刻む)・・・適量
[作り方]
[1]米と豆を吸水させる
鍋にさっと洗った米とムング豆、水を入れ、30分吸水させる。
[2]炊く
1にターメリックとサラダ油を加えて、そのまま火にかける。沸騰したら弱火にして好みの硬さに炊いたら、塩で味を調える。
POINT:減菌性のあるターメリックを加える。脂溶性のスパイスを加えて米を炊く時は、スパイスを油と合わせてから炊く。やや硬めのおかゆにしておくと、後で水を足して濃度を調節できる。
[3]タルカ(風味づけオイル)を作る
2と並行して、タルカの準備をする。小さめのフライパンでギーを中火で熱し、クミンシードを加える。クミンがはじけたらヒーング、ニンニク、ショウガの順で加え、香りがしてきたらおかゆにかける。
POINT:ヒーングはセリ科の植物で、ガスを抜き、整腸剤のような働きをするといわれている。イモや豆料理と一緒に使うことが多い。
[4]仕上げ
器に盛り、香菜をのせ、トマトチャトニーを添える。
「トマトチャトニー」の作り方
[1]完熟トマト200g、タマネギ60g、赤唐辛子1/2本、塩小さじ2/3をミキサーにかけてペースト状にする。
[2]鍋に油大さじ1を中強火で熱し、ブラウンマスタードシード小さじ1/3を加える。
[3]マスタードシードがはじけた後、音が弱くなってきたら弱火にしてウラドダール小さじ1を加える。
[4]こんがり色がついてきたら1のペーストとカレーリーフ6枚を加えて火を強める。沸騰したら弱火にして蓋をし、約8分煮てとろりとした濃度に仕上げる。
インドの豆がゆ。とろとろと喉を通り、シンプルな味わいながら仕上げに回しかけるタルカの旨味とスパイスの香りで奥行のある味わいに。インドではおかゆにソースやカレー、スパイスなどかけ、味を重ねて愉しむ。
(雑誌『料理通信』2020年4月号掲載)
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