35年愛され続ける夏のアイドル「冷たい桃のスパゲッティーニ」
プラントベースの始め方52
2025.07.28

text by Takanori Nakamura / photographs by Hideo Sawai
連載:プラントベースの始め方
健康や環境への配慮から、植物性の食材を主体とする“プラントベース(Plant Based)”な食事法が注目されています。肉や魚や乳製品に頼らずとも「おいしい」料理を作る知恵は、世界各地に存在します。身近なレシピからおいしくプラントベースを始めるヒントを紹介します。
目次
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■教えてくれた人
東京・東銀座「クラッティーニ」倉谷義成さん - ■サルデーニャ島での経験から生まれたスペシャリテ
- ■「冷たい桃のスパゲッティーニ」の材料と作り方
- ■東京・東銀座「クラッティーニ」の店舗情報
教えてくれた人
東京・東銀座「クラッティーニ」倉谷義成さん

高校卒業後、渡伊。サルデーニャ島で修業を積んで帰国し、1991年に石神井に創業。西麻布、丸の内を経て、2013年より東銀座で営業。
サルデーニャ島での経験から生まれたスペシャリテ
構想からすでに35年を迎えるメニューだという。東京・東銀座にあるイタリア料理店「クラッティーニ」のシェフ、倉谷義成さんのスペシャリテ「冷たい桃のスパゲッティー二」である。
フレッシュな桃をふんだんに使うため、季節限定のこの料理。毎年、大勢のファンが待ちこがれているのであった。注文が殺到しすぎて肝心な桃が足りなくなることもあるほどだという。旬のアイドル並みの人気メニューなのである。
倉谷さんがシェフの道を志したのは、1981年に高校を卒業してイタリアのサルデーニャ島に渡ったのが始まりという。島のイタリア料理店で夏の間、修業を積んだ。
サルデーニャはフルーツがとてもおいしく、思い返せばその環境がフルーツを使ったパスタへと繋がったのではないかと倉谷さん。「冷たいパスタも、当時まかない料理で作っていましたね」。80年代前半はヌオーバ・クチーナ旋風を巻き起こした奇才シェフ、グアルティエロ・マルケージが大活躍していた。「彼のキャビアを使った冷製パスタが一世を風靡していて、当時働いていた店でも出してましたね」。
そんな現地での体験が、冷たい桃のパスタへ倉谷さんを導いたのである。
キリッと冷えたスパゲッティーニに、トマトとてんこ盛りの桃のスライス、ミントが添えられ、暑い季節に震えるほどおいしい。ロゼワインとの相性も抜群である。
「冷たい桃のスパゲッティーニ」の材料と作り方

[材料]
スパゲッティーニ・・・50g
桃(よく冷やしておく)・・・1個(約200g)
トマト・・・1個
レモン・・・1個
ミント・・・1枝
粒白コショウ・・・適量
塩・・・適量
E.V.オリーブ油・・・適量
<材料のポイント>
1.やや硬めの湯剥きしやすい桃を選ぶ
熟れすぎも硬すぎもNG。使う直前まで冷蔵庫で冷やしておく。
2.普通のトマトを使う
トマトの糖度が高すぎると、桃の味わいを邪魔してしまうため、フルーツトマトはNG。
<おいしさの秘密>
材料は氷に当てたボウルで冷たい状態をキープ

作業はボウルが常に冷たい状態をキープして行う。氷が必要なのは[4]トマトソースを冷やす時、[6]桃の皮を湯剥きする時、[7][8]切った桃を冷やす時、[9]茹でたパスタを冷やす時の計4箇所。氷とボウルを多めに用意して臨むこと。完成品を盛る皿も冷やしておけば完璧。
[作り方]
[1]トマトを湯剥きする

トマトを熱湯に3~5秒くぐらせ、冷水にとる。皮をむいて横半分に切り、スプーンでタネを取り出す。
[2]トマトの水分を出す

切ったトマトの断面に塩を振る。塩の粒が見えなくなったら、逆さにして20分水切りをする。
[3]トマトを漉す

ムーラン(裏漉し器)で粗めに漉す。ムーランがない場合は、包丁で切る。ボウルに氷と水を入れ、その上に漉したトマトの入ったボウルを置いて冷やす。
[4]トマトを調味する

レモン汁小さじ2、塩ひとつまみ強で味を調える。
[5]スパゲッティーニを茹でる

スパゲッティーニを茹でる。タイマーを表示時間にセットする。
[6]桃を湯剥きする

桃の下準備にかかる。桃は熱湯に1.5~2秒くぐらせたら、すぐ氷水に落とし、皮を剥く。【POINT】桃はあらかじめ冷やしておけば熱は中に伝わらない。
[7]桃をスライスする

氷水の入ったボウルに別のボウルを重ねる。桃を手に持ち、5ミリ厚さにスライスして冷えたボウルに落としていく。【POINT】均一さに神経質になる必要はない。大きさや幅は揃わないほうが、かえって味わいが面白くなる。
[8]桃を調味する

レモン汁小さじ1強と塩ひとつまみを加え、大きめのスプーンで底から返すように全体を軽く和える。パスタが茹で上がる前にミントを刻み、白コショウを潰しておく。【POINT】混ぜ過ぎて均一にならないように。白コショウは使う直前に潰す。
[9]パスタを冷やす

芯がなくなるまでパスタを茹でたら、氷水の中で泳がせるように冷やす。【POINT】芯までしっかりと火を通すこと(約9分)。アルデンテすぎると桃との絡みがしっくりこない。
[10]パスタの水気を取る

パスタをザルにあげて水を切り、布巾で包んで水気を絞る。途中、ザルの上で軽く押さえ、最後に茶巾のように絞るとよい。【POINT】絞る時に手の熱を伝えないように。絞り過ぎるとボソボソするので注意。
[11]パスタを調味する

パスタを絞った布巾の上部で、パスタを洗ったボウルの水気を拭きとる。パスタをボウルにあけ、オリーブ油を縁からまわしかけ、塩をして全体を和える。【POINT】パスタを冷やしたボウルを活用する。
[12]盛り付け

4のトマトを大さじ2加えて全体を和え、冷やしておいた皿に盛る。8の桃でパスタを覆い、ミントと白粒コショウを散らす。

塩とレモン果汁でさらに香りを高めた桃は、仕上げにパスタの上にのせるだけで、自然にジュースが下へ落ち、パスタ全体を桃の香りでいっぱいにする。桃色の冷えたロゼを用意すれば、マリアージュは完璧。
(雑誌『料理通信』2009年8月号掲載/本文はウェブサイト用に一部調整しています)
東京・東銀座「クラッティーニ」の店舗情報
◎クラッティーニ
東京都中央区銀座3-12-19 楽心ビルB1F
☎03-6278-7339
11:30~14:30LO、18:00~21:30LO(10~5月の月曜はランチのみ営業)
日曜、第3月曜(6~9月はランチのみ営業)休
都営線、東京メトロ東銀座駅より徒歩3分
https://crattini.com/
※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
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