タマネギ、ニンニクは使わない。インドの“精進”カレー「ピトゥライ」
プラントベースの始め方33
2023.08.07
photographs by Sai Santo
連載:プラントベースの始め方
健康や環境への配慮から、植物性の食材を主体とする“プラントベース(Plant Based)”な食事法が注目されています。肉や魚や乳製品に頼らずとも「おいしい」料理を作る知恵は、世界各地に存在します。身近なレシピからおいしくプラントベースを始めるヒントを紹介します。
教えてくれた人
東京・西荻窪「エヌ・ハーベスト」鈴木裕さん
スパイス・ドライフルーツ専門店「エヌ・ハーベスト」代表。未知なるスパイスを求めつつ、現地の家庭や店で料理を習う旅する料理人。食材のほか、雑貨や衣類も取り扱い、各地で学んだ家庭料理を作って味わうスパイス講座を毎月開催する。今年(2023年)店舗をリニューアル。グルテンフリー・オーガニック食材のみで作る完全無添加「有機玄米粉カレールウ」(¥950)も発売中。
定番カレーの必須素材、入りません
私がインドで驚くのはスパイス使いよりも、むしろスパイスに負けない味のバランスの取り方、素材の香りの立て方の巧さです。
たとえば精進カレーの味づくり。インドの階級層ブラーミンの人たちは五葷(精神を高揚させるとされる食材)が使えません。一般的なカレーの味づくりの土台となるタマネギやニンニクが使えない。
そこで使うのが豆、根菜の旨味、ナッツのコク、南国果実、タマリンドの酸です。いずれもインドカレーにはよく使われる素材ですが、これらを組み合わせて、柔らかな酸味と旨味の、繊細で深みのある味わいに仕立てます。ほろほろ煮崩した根菜と絡む味が肝なのでインドでは珍しく、長めに煮込むのも特徴です。
<植物性食材だけでおいしくなるコツ>
1 パウダースパイスはターメリックだけで控え目に。
2 レンズ豆やヒヨコ豆など、豆は2種類以上加える。
3 根菜が煮崩れるまでしっかり煮込む。
「カレー(ピトゥライ)」の作り方
[材 料](作りやすい分量)
菜種油・・・大さじ3
青唐辛子(両サイドに縦に切れ目を入れる)・・・1本
香菜の茎根(みじん切り)・・・大さじ1
カレースタータースパイス(クミン1、マスタードシード1、フェ
ヌグリーク1/4、カレーリーフ1/2を合わせたもの)・・・小さじ1
塩・・・小さじ2
ヒヨコ豆※・・・50g
カボチャ、ゴーヤ、ズッキーニ(各1.5㎝角切り)・・・各50g
レンズ豆※※・・・1/4カップ
ヒヨコ豆の煮汁・・・1カップ
<ピトゥライペースト>
A
コリアンダーシード・・・大さじ1
赤唐辛子・・・1本
カシューナッツ・・・5粒
ココナッツファイン・・・1/2カップ
タマリンド水(1カップのぬるま湯にタマリンドを20分程浸しておく)・・・10g
<パウダースパイス>
ターメリック・・・小さじ1/4
<下準備>
※一晩浸水させ、鍋に豆を漬け汁と一緒に入れ、柔らかくなるまで30分程茹でる。煮汁はとっておく。
※※鍋にレンズ豆と2㎝かぶるくらいの水を入れて火にかける。沸騰したら差し水をしながら10分ほど煮る。ザルで漉し、ホイッパーでペースト状になるまですり潰す。
[1]ピトゥライペーストを作る
ココナッツファイン以外のAの材料をフライパンの中火でから炒りし、コリアンダーシードがパチパチ弾け、香りが立ったらココナッツファインを加える。
POINT:ココナッツは色づくとすぐに焦げるので軽く色づく程度で火を止め、余熱で火を通す。
[2]タマリンド水を加え、撹拌する
ココナッツファインが軽く色づいたら火を止め、タマリンド水と一緒にミキサーに入れて撹拌する。
[3]スパイスを炒める
鍋に菜種油とカレースタータースパイスを入れて、中火で炒める。
[4]青唐辛子、香菜を加える
マスタードが弾けて、フェヌグリークが黄色く色づきはじめたら、青唐辛子、香菜を加える。香りが立ってきたらターメリック、塩を加えてさらに軽く炒める。
[5]具材を加える
香りが立ったらヒヨコ豆、カボチャ、ゴーヤ、ズッキーニを加え、表面がしんなりするまで中火で炒める。
[6]ピトゥライペースト、ヒヨコ豆の煮汁を加えて煮る
ピトゥライペーストとヒヨコ豆の煮汁、レンズ豆のペーストを加えてよく混ぜ、沸騰したら蓋をして弱火で約15分煮る。
現地のピトゥライはチャナダールやウラドダールなど複数豆類を加え、さらに味に奥行きを作る。後で加えるパウダースパイスはターメリックだけで控えめに。カシューナッツはアーモンドでも代用OK。
◎エヌ・ハーベスト
東京都杉並区松庵3-31-17
☎03-5941-3986
11:00 ~ 19:00
月曜休
JR西荻窪駅より徒歩5分
http://www.nharvestorganic.com/mix.html
※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
(雑誌『料理通信』2019年10月号掲載)
◎購入はこちら
関連リンク