表面はパリッと薄く、中はもっちりふわっ。「カヌレ ド ボルドー」
レスキューレシピ【小麦粉編】
2025.04.14

photographs by Hide Urabe
連載:レスキューレシピ
日本の食品ロス量は年間472万トン*と言われています。生産者が丹精込めて作った食材を無駄にしないための活用レシピをシェフに教わる連載「レスキューレシピ」。今月のテーマは【小麦粉】です。今回は、表面と内側の食感のコントラストが絶妙な「カヌレ ド ボルドー」を紹介します。
*農林水産省「食品ロス量(令和4年度)」(前年度比-51万トン)
目次
- ■教えてくれた人: 東京・恵比寿「パティスリー レザネフォール」菊地賢一シェフ
- ■糖化と沸騰、凝固の合わせ技
- ■生地作りのポイント
- ■「カヌレ ド ボルドー」材料と作り方
- ■東京・恵比寿「パティスリー レザネフォール」の店舗情報
教えてくれた人: 東京・恵比寿「パティスリー レザネフォール」菊地賢一シェフ

都内洋菓子店や国内外のホテルで修業後、渡仏。在仏中、フランス三大コンクール「ガストロノミックアルパジョンコンクール」優勝。帰国後、都内菓子店にてシェフパティシエを務めながら、製菓学校講師や製菓関連企業のアドバイザー業務などを行う。再渡仏後、2012年に現店を恵比寿にオープン。2018年には中野区新井に2号店をオープン。
糖化と沸騰、凝固の合わせ技
「僕が好きなのは、パリ『ルモワール』(現在は閉店)のカヌレですね」と菊地賢一シェフ。理想は、香ばしく焼けた皮はパリッと薄く、中の生地はもっちりふわっと立ち上がって、ハチの巣のような気泡が美しく入っている状態。「カヌレは、レシピ自体はシンプルですが、窯の中で起こる生地変化がタイミングよく進まないとおいしく仕上がらない、難しいお菓子でもあります」
カヌレの生地は、粉が入るがほぼ液状。これが型の中で熱せられると、中心は沸騰して沸き立ち、気泡を抱えながら上へと持ち上がる。並行して、型に接した面には膜ができる。中は沸き立ちながら火が入ることで美しい網の目ができ、外の膜は熱によって生地中の糖分が糖化&カラメル化していく。
これらの変化がタイミングよく同時並行で起きることで、理想の状態に焼き上がるのだという。「加熱時間が長いと皮が分厚かったり、カラメルに苦味が出たりする。生地がねっちり詰まっているのは、焼成温度が低いから。型から生地が飛び出てしまうのは、生地中のグルテンの休ませ方が足りず沸きすぎるからでしょう」
窯での変化の時間がタイミングよく揃う成功のコツは、生地を休ませてグルテンを伸ばし、よく冷やした生地をしっかり温めた窯に入れること。焼成の途中に窯を開けたりしないこと。そう、窯での時間はもちろん、生地づくりの時間でもある。
生地作りのポイント
【1】粉類は入るがほぼ液状

カヌレの生地は、牛乳がたっぷりと入り、ほぼ液状。糖類を卵、牛乳にそれぞれよく溶かし混ぜること。
【2】まず少量を混ぜてから

均等に混ざりにくいので気を付ける。材料を加える際、まず少量だけ混ぜ入れてから、残りを混ぜていくとよい。
【3】冷蔵庫で一晩寝かせる

生地は一晩、冷蔵庫で寝かせる。グルテンを休ませ、伸びをよくするため。使う直前に冷蔵庫から出し、よくかき混ぜて沈殿物をなくしてから使う。
「カヌレ ド ボルドー」材料と作り方
[材料](7~8個分)
牛乳・・・300g
生クリーム(38%)・・・30g
バニラビーンズ・・・少量
グラニュー糖・・・150g
卵黄・・・46g
カソナード・・・22g
薄力粉・・・60g
強力粉・・・15g
発酵バター・・・30g
ラム酒・・・8g
[作り方]
[下準備]
・粉類は合わせてふるっておく。
・バターは溶かしておく。
・型にオイルスプレーを吹きつけ、小麦粉(分量外)をはたく。
[1]温めた牛乳&生クリームとグラニュー糖を混ぜる

大鍋に牛乳と生クリーム、バニラビーンズを入れて熱し、ひと煮立ちさせて火を止める。グラニュー糖の半量を加え、ホイッパーでよくすり混ぜる。
[2]卵黄と糖類を合わせる

卵黄をボウルに入れてほぐし、残りの砂糖とカソナードを加え、ホイッパーでよくすり混ぜる。
[3]粉類を加える


ふるっておいた粉を少しずつ加え混ぜていく。ホイッパーで力強く、粉気がなくなるまでコシを切るようにかき混ぜる。
[4]牛乳等を加える

3に1を少量加えてよく混ぜ合わせる。混ざったら1を全量加え入れ、泡立て器でよくかき混ぜる。
[5]溶かしバターを加える

小鍋にバターを入れ、熱して溶かし、4を少量加えてよく混ぜ合わせる。混ざったら4に全量戻し入れ、ホイッパーでしっかり混ぜ合わせる。
[6]ラム酒を加える

ラム酒を加え、さらによく混ぜ合わせる。【POINT】香りがなるべく飛ばないよう、ラム酒は最後に加える。
[7]漉す

ザルで6を漉し、ざらつきを除く。粉の配合が非常に少ないため、流動性が高く液体に近い。
[8]一晩寝かせる

閉できる容器に移し、一晩冷蔵庫で寝かせる。
[9]型に流し入れる

焼成の直前に8を取り出し、絞り出し器に移して均等に80gずつ型に注ぐ。型の縁から5~8mmほどあけて注ぐように。
[10]焼成:220℃ × 40分

220℃に余熱したオーブンで40分熱する。生地が沸き立ち、表面が高温で焼き固められ、ハチノス状に浮き上がりながら凝固してゆく。
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30分ほどしてくると、生地が気泡を抱き込みながら、全体に立ちあがって茶色みを帯びていく。
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さらにもう一息、表面が茶褐色に焼き上がるまでオーブンへ。【POINT】オーブンの蓋はなるべく開けない。
[11]粗熱を取る

焼き上がったら型から出し、粗熱を取る。

香ばしい甘さが魅力の、ラム香る郷土菓子。糖が多く粉の配合が少ない液状の生地を、高温で沸かすように焼く。表面は糖がカラメル化してパリッと、中は網の目状の生地でもちっと。軽さの中に多彩な食感が。
東京・恵比寿「パティスリー レザネフォール」の店舗情報
◎パティスリー レザネフォール
東京都渋谷区恵比寿西1-21-3
☎03-6455-0141
10:00~21:00
不定休
JR、東京メトロ恵比寿駅より徒歩5分
https://lesanneesfolles.jp/
(雑誌『料理通信』2018年2月号掲載/本文はウェブサイト用に一部調整しています)
掲載号はこちら
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