だし要らずで作るベトナムの汁かけご飯「冬瓜とエビのスープ」
レスキューレシピ【夏野菜編】
2024.08.15
photographs by Tsunenori Yamashita
連載:レスキューレシピ
日本の食品ロス量は年間570万トン*と言われています。生産者が丹精込めて作った食材を無駄にしないための活用レシピをシェフに教わります。8~9月のテーマは【夏野菜】。夏が中盤に差し掛かると、夏野菜の食べ方もマンネリ化しがち。バリエーションの幅を広げ、食材のおいしさを再認識するレシピをご紹介します。今回は身体の熱を冷ましてくれる冬瓜を使った「冬瓜とエビのスープ」。エビの旨味たっぷりのおかずスープです。
*農林水産省「日本の食品ロスの状況(令和元年度)
目次
教えてくれた人:ベトナム料理家 足立由美子さん
スペインや南米料理の研究を経てベトナム料理の道へ。1998年、東京・江古田に雑貨店「マイマイ」をオープン。2001年頃からカフェを併設しベトナム料理の提供をスタートし、2005年に食堂に変更。2013年には3軒隣に「エコダ ヘム」をオープン。著書に『バインミー~ベトナムのおいしいサンドイッチ』(文化出版局)、『はじめてのベトナム料理』(共著・柴田書店)、他多数。2024年6月に「エコダ・ヘム」を、7月に「マイマイ」を閉店。引き続き、ポップアップレストランなどイベント等は開催予定。
冬瓜で体にこもった熱を出す
「ベトナムの食事に汁物は欠かせません。ご飯とおかず、スープでワンセットなので、定食屋さんの持ち帰りご飯にもビニール袋に入れたスープが必ず付いています」と、足立由美子さん。ちょうど和定食に付いてくる汁物のようにも思えるが、食べ方は日本とかなり違って、スープの具はご飯にのせて食べ、汁もご飯にかけてさらさらと流し込む。
「日本ではお行儀悪いとされる汁かけご飯がベトナム流です。粘り気のないご飯なのでスープとのなじみが良くて、いくらでも食べられます」
ベトナムのスープには“カイン”と呼ばれる汁がシャバシャバしたタイプと、片栗粉やくず粉でとろみをつけたタイプとがあるが、今回ご紹介するのは家庭でもよく作られているカインの方。
特別にスープストックを用意しなくても具材から出るだしとヌクマムの旨味が味の柱になるからとても手軽にできるうえ、何と言っても爽やかなハーブの香りが食欲を刺激する。具材にはトマトや冬瓜、ゴーヤなど体にこもった熱を出してくれる夏野菜がたっぷり入る。
「具沢山なのでおかずはなくても、スープとご飯だけで食事になります」
エビの旨味たっぷり!「冬瓜とエビのスープ」材料と作り方
[材料](4人分)
干しエビ・・・大さじ2(15g)
水・・・50ml
エビ・・・6尾
A
ヌクマム・・・小さじ1
コショウ・・・少量
冬瓜・・・500g(正味400g)
ニンニク(みじん切り)・・・小さじ2
万能ネギ(みじん切り)・・・4本
水・・・800ml
ヌクマム・・・小さじ2
グラニュー糖・・・小さじ1/2
塩・・・小さじ1/2
コショウ・・・少量
<ベトナムスープのおいしさのヒミツ>
ヌクマム(魚醤)が旨味と塩味の素
ベトナム料理の必須調味料ヌクマムは具材から出る旨味をアップさせ、塩味の素となる。産地や商品により塩気や風味が微妙に違うので必ず味見をし、塩気がきつい時は砂糖を加えて味のバランスをはかる。
[作り方]
[1]干しエビを戻す
干しエビは水に浸けて戻し、粗く刻む。戻し汁はとっておく。
[2]エビに下味をつける
エビは殻を剥き、包丁の腹などで叩いて潰し、刻んで調味料Aで下味を付ける。
[3]冬瓜を切る
冬瓜は一口大に切って薄く皮を剥く。
[4]炒める
鍋に油(分量外)を入れて熱し、ニンニク、万能ネギのみじん切りを炒め、干しエビを加えて炒める。干しエビの香りが出てきたら、2のエビも加えてさらに炒める。
POINT:干しエビは水で戻したあと刻んでから炒めると、香りがたち、旨味も引き出せる。
[5]水と戻し汁を加える
水と干しエビの戻し汁を加えて加熱する。アクは丁寧に取り除く。
[6]冬瓜を加えて煮る
沸騰したら、冬瓜を入れて煮る。アクをとりながら弱火で約15~20分煮る。
[7]調味する
冬瓜に竹串がすっと通るようになったら、ヌクマム、グラニュー糖、塩、コショウで調味する。
冬瓜は夏のむくみに効果あり。戻して刻んだ干しエビに叩いた生エビも加えて旨味たっぷりのスープを作って、冬瓜を煮込む。じんわり味のしみた冬瓜はいくらでも食べられそう。
(雑誌『料理通信』2011年8月号掲載)
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