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RECIPE

「サンデーベイクショップ」の裏ワザを大公開!

リンゴとルバーブのトレイベイク

レスキューレシピ【リンゴ編】

Feb 24, 2022

text by Rieko Seto / photographs by Masahiro Goda

日本の食品ロス量は年間570万トン*と言われています。生鮮食品においても、豊作で余ったり、規格外、傷、スレがあって売り物にならず、行き場のない食品が日々廃棄されているのです。なんと、もったいない! 生産者が丹精込めて作った食材を無駄にしないための食材活用レシピをシェフに教わります。2月は、リンゴで作るスイーツレシピを4回に渡って紹介。“訳アリフルーツ”でもおいしく作れますよ!
*農林水産省「日本の食品ロスの状況(令和元年度)」

教えてくれたシェフ
東京・幡ヶ谷「サンデーベイクショップ」嶋崎かづこさん

行列のできる店、「サンデーベイクショップ」オーナーシェフ。2009年に日曜日だけ営業する焼き菓子店からスタート。20年、焼き菓子とアイスクリームとコーヒーの店として幡ヶ谷に移転オープン。現在は水、金、日曜の週3日営業。21年秋『季節のくだものでつくる焼き菓子:サンデーベイクショップの一年』(柴田書店)を上梓。


手で、状態と変化を感じながらつくる

“おいしい”を知る魔法の手。菓子をつくる「サンデーベイクショップ」店主、嶋崎かづ子さんの手を見ていると、しみじみそう思う。混ぜたり、のせたりする指先がやさしくて、なんだか楽しげで、粉や果物と会話しているよう。見ているこちらまで楽しい気分になってしまうのだ。

嶋崎さんが主につくるのは、スコーンやトレイベイク、マフィン、パウンドケーキなど、いわゆるベイクと呼ばれる焼き菓子の数々。冷蔵ショーケースも店になく、ムースやクリームを使った生菓子がひしめき合うパティスリーとは大きく違う。「調理師専門学校の製菓衛生師科に行ったんですけれど、私、みんなが惹かれるようなしっかりしたお菓子には、本当に興味がなくて(笑)。コーヒーが好きになってカフェで働いて、それから本を見るなどして自分で勉強して、焼き菓子を焼くようになりました」と、嶋崎さんは話す。

手でつくれば、タイミングを逃さない

菓子づくりで使うのはとにかく手で、機械は卓上のミキサーやフードプロセッサーを補助的に用いるくらい。「手でつくれば、その時々で違う粉の温度やバターの硬さもわかるし、それに応じた加減もすぐできます。生地の状態の変化も感じられて、混ぜ具合やこね具合のタイミングも逃さず、一番いいところで止められる。手って大事だな、と思います」

極意1:手の感触で確かめる
ショートブレッド生地はフードプロセッサーに軽くかけた後、こね具合を手で確かめながらまとめて、生地に負担をかけない。

「りんごとルバーブのトレイベイク」でも、ショートブレッド生地は、フードプロセッサーでざっと材料を混ぜたらボウルへ。指でもみ込んでなじませた後、カードで生地の一部を切り分けてはボウルに残った粉っぽい部分にのせていき、生地をまとめるのは嶋崎さんならではのやり方だ。生地に負担をかけることなく、全体を同じ質感にまとめられる。

一方、バター生地は卵液と粉を数回に分けて交互に加え、泡立て器の動きを変えながら丁寧に混ぜて生地をつなげ、つやのある状態に。その手の加減が実に細やかで、よりよい乳化を目指した結果なのかと聞いてみれば、「難しいことはわからないですけれど、部分的にではなくて全体をつやよく混ぜたくて。一生懸命ガシガシ混ぜると空気が入って膨らんじゃうし、やる気を出したらだめなんです」と、嶋崎さん。ふんわりした物言いだが、どの動作や加減についても自分なりの意味づけやビジョンがはっきりあり、理にかなっている。

極意2:“やる気を出さない”混ぜ方
バターを力強く混ぜると空気が入って生地が膨らむが、目の詰まった質感にしたいので、「やる気を出さない」 適度な力で混ぜる。

素材にしても、薄力粉は、「風味がよくて粒が粗めで、ふわふわではなく私が好きなしっかりした食感が出るから」と、業者に頼んでイギリスからお気に入りのものを輸入してもらい、全粒粉は国内産小麦を自家製粉。スパイスは専門店で自ら購入し、使う直前に乳鉢ですり潰す。果物は畑を訪ねるなどして信頼できる生産者から取り寄せたり、皮を使う柑橘は無農薬のものを選んだり。一般的なものに比べて値の張るものも多いが、「あと一歩頑張ればおいしくなるんだったら、いい素材を選びたい」というのが、嶋崎さんの考えだ。

極意3:イメージに近づける素材選び
英国から輸入する薄力粉、自家製粉する全粒粉、使う直前にすり潰すスパイス・・・目指す味、食感に近づけるためなら、躊躇せず、いい材料を使う。

ワクワクするお菓子をたくさん揃えたい

作りたいと思うのは、「特別じゃなくていつもある、毎日のお菓子」。お茶やコーヒーを片手にパクッと頬張ったり、ピクニックで楽しんだりするようなシーンを、いつも思い描きながら作るという。果物やスパイス、ハーブ、チョコレートなどの組み合わせは、季節やその日のひらめきから。粉や砂糖の種類も思い浮かべた味わいに応じていろいろ変え、定番ももちろんあるが一期一会の味も数多く、それもまた足繁く店に通う多くのファンを惹きつけてやまない、大きな魅力となっている。

「来てくださった人を、『こんにちは』って笑顔で迎えて、構えずに入ってもらえるお店でありたいし、絶対笑顔で帰ってもらいたい。作るときも難しい顔をしていると難しい味になりそうだから、好きな音楽を聴きながら笑顔で楽しんで作って、ワクワクしてもらえるお菓子をたくさん揃えたいと思っているんです」と、嶋崎さん。気づけば笑顔の輪はどんどん広がって、みんなが笑顔に。それもまた、嶋崎さんがかける幸せな魔法なのかもしれない。

極意4:寝かさず、縦に挿す
リンゴの水分で生地がべちゃっとしないよう、ランダムに縦に挿す、目からウロコのワザ! すきまにルバーブ、クランブルをのせる。


「リンゴとルバーブのトレイベイク」材料と作り方

[材料](22×22cm、高さ4.5cmのスクエア型2台分)

<ショートブレッド生地 >
材料A
  上新粉・・・100g
  薄力粉・・・100g
  全粒粉・・・100g
バター(スライスして冷やす)・・・200g
グラニュー糖(ビート)・・・100g

<バター生地 >
バター(室温に戻す)・・・350g
グラニュー糖(ビート)・・・350g
全卵・・・240g
材料B
  薄力粉・・・400g
  ベーキングパウダー・・・8g
  塩・・・ひとつまみ

<クランブル >
スペルト小麦粉・・・120g
グラニュー糖(ビート)・・・90g
バター(スライスして冷やす)・・・90g
オートミール・・・60g
カルダモン(正味)・・・小さじ1

<仕上げ >
リンゴ(紅玉、長野「りんご家SUKEGAWA」)・・・300g
ルバーブ(山梨「N&N」)・・・300g

<準備>
オーブンペーパーを約30㎝四方に切る。スクエア型の底面の大きさに合わせて4辺を折り、4つの角にハサミで切り込みを入れて、型の底と側面に敷く。*材料A、Bは、それぞれ合わせてふるう。

[1]ショートブレッド生地を作る

ショートブレッド生地を作る。すべての材料をフードプロセッサーに入れ、サラサラした状態になり、少し塊ができ始めるまで回す。ボウルに移し、指でもみ込む。

[2]生地をまとめる

ある程度の大きさの塊ができるまでなじませたら、カードで生地の一部を切り分け、粉っぽいところにのせて軽く押しつける。粉っぽい部分がなくなるまで繰り返す。
POINT:ほろほろした状態で全体をくっつける。

[3]生地を型に敷いて焼く

生地を型に入れ、指で押さえて底に広げる。フォークで穴をあける。160℃のコンベクションオーブンで約12分焼く。型に入れたまま室温で冷ます。
POINT:隙間なく敷き詰めるが、押さえすぎない。

[4]バター生地を作る

バター生地を作る。ボウルにバターを入れて、泡立て器でクリーム状にする。グラニュー糖を加え、ざらっとした感じがなくなってなじむまで、すり混ぜる。

[5]卵を加えて混ぜる

溶きほぐした全卵の半量を[4]に加えて、バターをのばすイメージでやさしく混ぜ合わせる。

[6]卵を加えて混ぜる


合わせてふるった材料Bの少量を[5]に加え、ホイッパーで混ぜて生地をつなげる。[5]の残りの全卵を加え、小さい円を描くようにしながらやさしく混ぜ合わせて、生地をつなげる。
POINT:果物の水分を支えるため、粉の多い配合に。

[7]粉を加えて混ぜる

残りのBの1/3量を加え、よく混ぜて生地をつなげる。残りのBを加え、泡立て器で少しずつ粉と生地をなじませていく。

[8]卵を加えて混ぜる

底からすくい上げるように力強く混ぜたり、上部の生地をやさしく混ぜたりして、生地をしっかりつなげ、なめらかでつやのある状態にする。ゴムベラに持ち替え、底からすくい混ぜてムラをなくす。

[9]クランブルを作る

クランブルを作る。カルダモンは乳鉢でつぶして殻を取り除き、粗めにすりつぶす。

[10]バターと粉をなじませる


すべての材料をボウルに入れ、バターをちぎってつぶしながら粉となじませる。バターが細かくなったら手ですくい取り、指先でもむようになじませ、しっとり、ほろほろにする。

POINT:クランブルは少し塊ができてくるまで生地を混ぜることで、ザクザクした食感に焼き上がる。のせる素材、その日の気分で細かいクランブルにしてもよい。

[11]バター生地を加える

【8】のバター生地をゴムべらでショートブレッド生地の上に移す。小さいL字パレットナイフで型の角まで広げ、表面をざっとならす。

[12]リンゴをランダムに挿す

リンゴの芯をくり抜き、縦1/4に切ってから厚さ7㎜~1㎝のイチョウ切りにする。[11]の上に挿すようにしてランダムにのせる。
POINT:厚さや向きが不揃いのほうが食感に違いが出る。リンゴを寝かせて焼くと生地の水分が飛びにくいので立てる。

[13]ルバーブを加える

ルバーブは皮の硬い部分を取り除き、長さ4~5㎝に切る。生地に挿すように立てたり寝かせたりしながらリンゴの間にのせる。

[14]クランブルを散らす

クランブルを手で握って塊を作りながら、[13]の上に散らす。
POINT:塊がところどころにあるほうが食感にメリハリが出る。

[15]オーブンで焼く


180℃のデッキオーブンで30分焼き、ダンパーをあけてさらに約30分焼く。室温で冷まし、型からはずして9等分に切る。

カルダモンが爽やかに香るクランブル、旬のリンゴとルバーブたっぷりのバター生地、サクサクのショートブレッド。3種の生地の食感と味わいが、型の中で調和する。


◎Sunday Bake Shop
東京都渋谷区本町6-5-3
☎なし
7:30~19:00(水、金曜)
9:00~19:00(日曜)
※水、金、日曜のみ営業
京王線幡ヶ谷駅より徒歩5分
https://sundaybakeshop.jp/

※新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。

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