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RECIPE

按田優子さんに教わる、ジャングルでも日持ちする豚バラ肉の「チチャロン(塩豚)」

レスキューレシピ【豚肉編】

2022.08.18

photographs by Daisuke Nakajima

連載:レスキューレシピ

日本の食品ロス量は年間570万トン*と言われています。生鮮食品においても、豊作で余ったり、規格外、傷、スレがあって売り物にならず、行き場のない食品が日々廃棄されているのです。生産者が丹精込めて作った食材を無駄にしないための活用レシピを教わります。今回のテーマは、ペルーの塩豚、「チチャロン」。ジャングルでも日持ちする豚肉の保存食は、いろんな料理に応用できるすぐれものです。
*農林水産省「日本の食品ロスの状況(令和元年度)」

目次






教えてくれたシェフ:東京・代々木上原 「按田餃子」按田優子さん

東京・代々木上原と二子玉川で「按田餃子」を営む。菓子・保存食研究家。食品加工専門家としてJICAのプロジェクトに参加し、ペルーのアマゾンを6回訪問。カメラマン・鈴木陽介氏らと2012年現店開店。著書に『食べつなぐレシピ』(家の光協会)、『たすかる料理』(リトルモア)、『冷蔵庫いらずのレシピ』(ワニブックス)などがある。現在、三浦半島に移住し、古民家をDIYしながら暮らしている。


輪のような始末のよい営みを

按田優子さんが仕事で通った南米・ペルーの日常食、豚バラ肉の「チチャロン」。豚バラ肉の塊肉を、塩を加えた湯で時間をかけて煮詰め、豚から出た脂で香ばしく揚げ焼きする。ペルーのジャングルでも日持ちが可能な保存食で、塩分を強めるほど長く持つ。脂は捨てて保管し、使う分だけその都度切り分ける。真夏でなければ常温で5日程度保存できる。時間に余裕のあるときに仕込み、スライスしてそのまま食べたり、豆と一緒に煮たり・・・いろんな料理に活用して、おいしく食べつなぐことができる。

店では、チチャロンにする手前、ゆで豚を料理に使っている。ゆで豚を仕込む段階で、2店舗で1週間に3キロくらいのラードが出る。そのラードを使って、石鹸を作り、店の洗い物や掃除をしているそうだ。「常温で脂を保存できる作戦は何か・・・と考えた時に、食品でなく鹸化(けんか)する作戦に出ました」

仕込み量が増えれば、当然、副産物の量も増える。店をやっていく上で、輪のように始末のよい営みを続けたいという思いから、豚肉のラードは、食器用・掃除用石鹸に姿を変えて店に戻ってきたわけだ。「豚さん、おかえりなさい」

ちなみに、ゆで豚で出る大量のゆで汁は、味付けをして汁麺や定食につける海藻スープにして、こちらもきっちり、見事に使い切っている。

ラードで作った石鹸は、「おかえり石鹸」という商品で販売中。オンラインショップで購入できる。


「チチャロン(塩豚)」材料と作り方

[材料](作りやすい分量)
豚バラ肉*・・・ひと塊
塩・・・適量
水・・・適量
*時間がない時は、とりあえず1%の塩をまぶしてしばらくおいてから茹でるとよい。

[1] 塩を加えた湯で2時間煮る

中華鍋に豚肉を入れ、被る程度の水を張り、塩を加えて強火で熱し、2時間ほど煮る。

[2] 脂とゆで湯が乳化する

豚から出た脂とゆで湯が乳化し、脂で肉を揚げるような状態になったら中火に落とす。

[3] 肉に焼き色を付ける

脂身を鍋肌に押し付けるようにし、焼き色が付いたら肉を返し、各面に焼き色を付ける。

[4]粗熱をとり保存

全面に焼き色が付いたら火から下ろし、粗熱を取る。余分な脂を捨て、食品袋などに入れて保存。


チチャロン(塩豚)活用レシピ

展開例「チチャロンと里芋、白インゲン豆の南米ワンプレート」

[材料](1人分)

蒸し白インゲン豆・・・適量 
水・・・適量
チチャロン(ひと口大にカット)・・・適量
蒸し里芋(皮をむく)・・・適量(2個)
赤タマネギ(みじん切り)・・・適量(1/4個)
レモン汁・・・適量(1/2個)
塩・・・適量
パセリ(刻む)・・・適量

[1]鍋に白インゲン豆を入れ、浸る程度の水を加えて強火で煮る。

[2] チチャロンを加え、沸々としてきたら、里芋も加えて蓋をし、弱火で3分煮る。

[3]赤タマネギはレモン汁と塩で和えておく。

[4] を皿に盛り、を添え、パセリを散らす。
※すべての具材が同じように温かければ、鍋で煮なくてもいい。塩っぱい時は、芋で調整する。


「按田餃子」店舗情報


◎按田餃子
東京都渋谷区西原3-21-2
☎03-6407-8813
10:00~21:30LO
09:00~21:30LO(土、日曜、祝日)
火曜休
東京メトロ小田急線代々木上原駅より徒歩3分
https://andagyoza.tumblr.com/

※新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。

(雑誌『料理通信』2017年7月号掲載)

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