天草から作る本格ところてん。にょろっと突き出すのも楽しくて。
【DIYレシピ】東京・門前仲町「酒亭 沿露目」大野尚人さん
2023.07.03
photographs by Tsunenori Yamashita
連載:DIYレシピ
塩蔵、乾燥、発酵・・・調理メソッド&テクニックを身に着けて、普段買っている食べ物を一から作ってみると、自分で味を作る喜びや安心感を得られます。天日に干したり、発酵させたり、自然の力にゆだねるレシピは、人間本位ではない生き方を学ぶ処方箋。シンプルな材料と道具で作れる自家製アイテムをシェフに教わります。今回はつるっとのど越しのいいところてんを。夏だけではもったいない、素朴な味です。
教えてくれた人:東京・門前仲町「酒亭 沿露目(ぞろめ)」大野尚人さん
ところてん作りはエンターテインメントです!
大の「道具好き」です。海苔を炙る道具、大掛かりなレモン搾り器、昨日はガス台で使うピザ窯が届きました(笑)。「そのためだけに存在する」道具を見ると、それを作る職人のことを考え、試してみたくてうずうずするんです。ところてんもそう、天突き器を使ってみたくてオンメニュー。7月頃からの夏季限定です。
作り方はひたすら天草を煮出すだけ。煮る前に天草は水で1時間戻します。一晩浸ける方もいますが、僕は省略。あまり海藻臭さを出したくないので。基本は強火で、天草を常に鍋の中で対流させます。できた寒天は冷凍できるので、使う時は蒸し器で温めて溶かし、再度固める。寒天はお客さんの目の前で突き出します。あのつるんっとしたものがにょろっと出てくるライブ感を味わってほしくて。味付けはさっぱりと二杯酢。散々飲み食いした後の口直しにも好評です。
溶けた寒天にあんを混ぜて固めると、水ようかんに。甘さを控え、食後もいけるさらっとした食感を目指して寒天との割合を決めました。作ってみて意外、あんこはビール、ウィスキーなど麦系の酒と相性がいい。甘いつまみにも最適です。
料理の展開例:水ようかん・・・寒天とあんの絶妙なバランスで、口の中でサラッと溶ける食感に。甘さは控えて、満腹の食後でも、スルッと入る。
自家製ところてんの極意
1 海藻臭さを出さないため、戻す時間は1時間に
2 天草が常に対流する火加減をキープ
3 目の前で突き出し、ライブ感を演出する
[材料](20人分)
天草・・・50g
水・・・3L
〈ニ杯酢〉
濃口醤油・・・10ml
米酢・・・15ml
ゴマ、ネギ、鰹節、練り辛子・・・各適量
[作り方]
[1]水に浸けて戻す
分量の水に天草を1時間以上浸け、戻しておく。
[2]戻した水ごと火にかける
鍋に、ふやかした天草を戻した水ごと加えて強火にかける。
POINT:天草を戻した水は、そのまま使う。
[3]対流させて40分煮る
沸騰したら中火に落とし、約40分程度煮出す。
POINT:グツグツと天草が対流し、常に細かい気泡が沸いている状態を保つ。
[4]粘り気が出たら火を止める
気泡がさらに細かくなり、液体に粘り気が出始めたら、火を止める。
[5]漉す
ザルにキッチンペーパーを敷き、4を漉す。
[6]冷蔵庫で冷やす
5を保存容器に移し、粗熱をとったら蓋をして冷蔵庫で冷やす。
[7]固まったら取り出す
約2時間後、固まったら保存容器からとり出す。
POINT:寒天は冷凍で1カ月保存できる。
[8]天突きで突き出す
10cm×5cm程度の棒状に切り、天突き器に入れて押し出す。
[9]器に盛りつける
器に盛り、ニ杯酢をかけて、ゴマ、鰹節、刻んだネギ、練り辛子を添える。
◆仕込み時間:約4時間◆食べ頃:すぐ◆保存方法:冷蔵で1週間、冷凍で1カ月
<道具のポイント>
天突き器は必須。大野さんはこれを使ってみたいがためだけに、ところてんをメニューに加えた。
◎酒亭 沿露目
東京都江東区富岡1-12-6 1F
☎03-5875-8382
17:00 ~ 24:15LO
日曜、第2、4月曜休
東京メトロ、都営線門前仲町駅より徒歩1分
※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
(雑誌『料理通信』2016年4月号掲載)
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