手作業が生むなめらかな舌触り。「チーズケーキ」
コーヒーショップのレシピ:「ワンルームコーヒー」
2023.10.05
photographs by Kiyu Kobayashi
連載:コーヒーショップのレシピ
一杯のコーヒーを中心に、人と情報が集まるコミュニティの拠点として、私たちの暮らしに欠かせないコーヒーショップ。時には産直野菜の受け渡し所になるなど、社会に開けた場として様々な機能をもつようになりました。そこで提供されるコーヒーやスイーツにも、店主の個性が色濃く反映されています。コーヒーショップで何ができるのか?それぞれの取り組みとレシピを紹介します。
目次
教えてくれた人:東京・中板橋「ワンルームコーヒー」内山道広さん
カフェやレストランで勤めた後、千葉・長生村「KUSA.喫茶 自家焙煎COFFEE+PAN.」の豆に出会い、独立への具体的なイメージを膨らませた。2013年11月、現店オープン。定番+新作スイーツが人気で、「チーズケーキ」はオープン当初から店を支えているエース級メニューの1つ。
〈コーヒーショップの取り組み〉
通常は予約不可だが、開店前の数時間を予約できる「ラグジュアリーパス」の導入や、夜にスイーツ+お酒を提供する「ヨル1R」の開催、営業について一人で悩むカフェ店主向けにオンラインでコンサルを実施するなど、常に新しいチャレンジを続けている。同じ板橋区内の有機栽培農園「THE HASUNE FARM」の野菜を飲食店等で受け取れる「ハスネコ便」の拠点になっていた時期も(現在、配送ルートから外れたため休止)。
滑らかな舌触りと口溶け感を意識して
濃厚なクリームチーズのコクを感じさせながら、シルキーな感触でするりと舌を通り抜けていく。コーヒーの酸味に合わせて流れる軽さが心地いい。東京・中板橋「ワンルームコーヒー」のチーズケーキは、シンプルなレシピの中に、店主・内山道広さんの丁寧な作業が詰まっている。
食感を損なう原因となるヨーグルトやクリームチーズのダマは、徹底的に潰す。特にクリームチーズは数回に分けて根気よくゴムベラで柔らかくし、滑らかな液状になるまで混ぜて使う。効率を考えてハンドミキサーを使ったこともあった。が、空気を含んで仕上がりがフワフワな食感になりがちなのと、クリームチーズの硬さを毎回均一にしたくて、手作業に戻した。甘さは控えめに、レモン汁で軽い酸味を加え、コーヒーのほのかな酸味に寄り添わせる。仕上げは長方形カットで断面を美しく、シンボリックに。お菓子作りはほぼ独学ながら、センスと細やかな仕事が光る内山さんのケーキ類を目当てに、遠くから訪れるファンも多い。
「チーズケーキ」材料と作り方
[材料](15cm四方のスクエア型2台分/8カット分)
クッキー生地(市販)・・・140g
有塩バター(溶かす)・・・20g
クリームチーズ(常温に戻す)・・・800g
プレーンヨーグルト・・・260g
てんさい糖・・・160g
生クリーム(35%)・・・140g
レモン汁・・・18g
卵黄・・・2個分
[作り方]
[1]土台の材料を混ぜる
クッキー生地を麺棒で細かくすり潰し、バターを入れたボウルに加えて全体が馴染むまで混ぜ合わせる。
[2]土台を型に敷く
型に1を隙間なく敷く。フォークで全体をならして冷蔵庫に30分以上入れておく。
[3]ヨーグルトとてんさい糖を合わせる
ボウルにヨーグルトを入れてゴムベラで滑らかになるまで混ぜ、てんさい糖を数回に分けて加え、全体を混ぜる。
[4]生クリームとレモンを加える
3に生クリームを加えて混ぜ、さらにレモン汁を加えて混ぜる。
[5]卵黄を加える
4に卵黄を加えて混ぜ合わせる。この時点で、ほぼ液体に近い状態に。
[6]クリームチーズをやわらかくする
別のボウルにクリームチーズを入れてやわらかくなるまで混ぜる。
POINT:クリームチーズは滑らかになるまで徹底的に混ぜて使う。全部一気に混ぜるとダマになりやすいため、数回に分けて。
[7]生地を合わせる
5を6のクリームチーズに3、4回に分けて加え、しっかりと混ぜる。
[8]型に生地を流す
型に生地を流し込む。型の底を叩いて、できるだけ気泡を抜いた後、楊枝などを刺して表面の気泡を抜く。140℃のオーブンで20分焼く。
[9]冷ます
オーブンから出し、粗熱を取って冷蔵庫で半日以上置く。
[10]完成
生地を丹念に混ぜることでシルキーな食感に。甘さ控えめで、仄かな酸味がコーヒーとマッチする。
<おすすめのコーヒー>
カフェラテ
「ワンルームコーヒー」の店舗情報
◎1ROOM COFFEE(ワンルームコーヒー)
東京都板橋区中板橋30-1
11:00~17:00LO(土曜、日曜、祝日11:30~16:00LO)
不定休
東武線中板橋駅北口より徒歩5分
https://1room.fun/
※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
(雑誌『料理通信』2017年2月号掲載)
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