影響は世界規模に?カリフォルニア州の新アニマルウェルフェア法が施行
America [California]
2023.10.16
text & photographs by Kuniko Yasutake
(写真トップ)家畜の人道的な飼育、と殺のガイドラインを提唱する様々なプログラムが、州・地方自治体レベルで複数存在するアメリカ。「グローバル・アニマル・パートナーシップ」は、2008年、民間大手の有機・自然食スーパー「ホールフーズ・マーケット」のCEOが旗揚げした非営利団体。アニマルウェルフェア・スタンダードを精肉売り場で可視化している(ホールフーズ・マーケット、ロードアイランド州クランストン店の精肉売り場)。
アメリカ外食産業は、これからベーコンを使うメニューの見直しを強いられそうだ。2年以上インフレが続く米国で、豚バラ肉の卸売り価格が2023年6月から3カ月で約3倍の上昇を記録。1ポンド(約453g)当たり、5月末の87.3セントから、2ドル70セントまで急騰した(米国農務省調べ)。
そもそも米国では夏に豚肉の生産量が低下傾向になる反面、BLT(ベーコン、レタス、トマトのサンドイッチ)の需要が高まることがその背景にあるが、今期はカリフォルニア州で7月に新しく施行されたアニマルウェルフェア法が大きく作用。さらに今後、世界市場にも影響を及ぼす可能性がある。
アニマルウェルフェアとは、動物の健康とウェルネスの維持を目標に、より安全かつ人道的な取り扱い方を推奨する方針を指す。カリフォルニア州の新法は、州内で食品となる精肉用豚の小屋において、メス豚が自由に動ける面積を1匹につき少なくとも24平方フィート(約2.2㎡)とすることを定めた。これは、妊娠/出産後のメス豚が、壁に体を擦ることなく方向転換できる最小サイズと認識されている。
全米一の人口を有する同州の豚肉消費量は全国の15%を占めるが、これを支えるのは実は他州の供給元。この新法に則らなければならないのは、中西部や南部の業者なのだ。大幅な施設改築費を要することから、中小の養豚農家はカリフォルニア以外への販売ルート変更や経営困難に陥ることが懸念されている。カリフォルニアに続けと、同じようなアニマルウェルフェアのルールを定める州が増えていく可能性も、畜産農家にとっては不安の種だろう。
また、米国は豚肉輸出量がスペインに次いで世界第2位。日本は長年輸出先の上位にリストされている。生き物としての尊厳を母豚に認める、つまり家畜に対するこれまでの「無意識バイアス」の是正を米国の一州が唱道したことで、豚肉に対する価値観がシフトする潮目を、いま世界が目撃しているのかもしれない。
◎California Proposition 12 – Animal Confinement
米国農務省 カリフォルニア州法案第12号―家畜の拘束について(2023年7月1日施行)
https://www.cdfa.ca.gov/AHFSS/AnimalCare/
*1ドル=148円(2023年9月時点)
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