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RECIPE

酸味が肝「ゴマサバのオリーブオイル煮 ビネガーとオレガノ風味」

ブルーフード・レシピ

2024.05.02

photographs by Kouichi Takizawa

連載:ブルーフード・レシピ

海に囲まれ、豊かな漁場を有する日本には魚食文化が根付いています。魚を食べるなかで培われ、受け継がれてきた知恵や知識を継承し、上手に食べることは、多様性豊かな海の保全につながります。日本周辺でとれる水産物(ブルーフード*)の魅力を再発見するレシピを人気店のシェフに教わります。今回はシチリアの風を感じるゴマサバのオリーブオイル煮を紹介します。

*ブルーフードとは、淡水・海洋環境に由来する植物、動物、藻類など水生生物性食品のこと。食料危機や気候変動などの課題に対応し、健康的で持続可能な食料システム構築への貢献が期待されている。
**日本の漁獲量ランキング(農林水産省:令和3年漁業・養殖業生産統計)
1位マイワシ(21.1%)、2位サバ類(13.7%)、3位ホタテガイ(殻付き)(11.0%)、4位カツオ(7.6%)、5位スケトウダラ(5.4%)、6位カタクチイワシ(3.7%)、7位ブリ類(2.9%)、8位マアジ(2.8%)、9位マダラ(1.8%)、10位サケ類(1.8%)。

目次






教えてくれた人:「ピスカリア」シェフ 出雲択逸さん

アパレル&インテリア業界から転身、料理の道へ。「バスタパスタ」等を経て渡伊。帰国後、2006年にシチリア料理を提供する現トラットリアをオープン。


鮮度を決めるひと仕事

相模湾の東岸には、海を挟んで佐島と長井、2つの漁港が対峙する。豊かな漁場で育まれた獲れたての地魚を目当てに通うのは「ピスカリア」出雲択逸シェフ。2006年のオープン以来の日課だという。

「近くに住んでいるから天候や風の具合で水揚げする魚種もある程度予測できるようになりました。『今日は風が強いから定置網の大型船しか出ないな』『今日は、小さなはえ縄船も出るからホウボウが揚がるな』とかね。潮の早さや月の満ち欠けで水揚げ量も変わりますね」

佐島と長井は入江の対岸にあって、片方が時化ていても、一方は十分に揚がるという。長井の直売所、佐島の鮮魚店、移動販売のマルセ福本鮮魚店などで魚を仕入れたら、海水が使える処理場を借りて下仕事をする。「特に表皮は海水で下処理した方が断然痛まない。ホウボウやキンメダイなどの赤い魚は真水で洗うと、皮目も身も白っぽくなっちゃう」

シチリア島のカターニアという港の食堂で魚料理の魅力にとりつかれたという出雲シェフ。「その風景と、ここ佐島が似ているんですよね」。砂浜が小さく、海底には磯が広がる。その磯に海藻が生えて、海藻やプランクトンを餌に小魚や貝、アワビが多く棲む。

この日はサバ2尾、イカと背黒イワシ、メバル1尾を購入。
「では帰って早速、料理しましょう」

「ゴマサバのオリーブオイル煮 ビネガーとオレガノ風味」材料と作り方

[材料](1皿分)
ゴマサバ・・・2尾
塩・・・ 適量

A
オレガノ(乾燥)・・・ 1つまみ
バジル(フレッシュ)・・・ 1つまみ
ニンニク・・・ 1 片
白コショウ・・・ 少量
オリーブ油・・・ 50ml
白ワインビネガー・・・ 25ml

[鮮度を保持する下仕事]
[1]鱗と頭と内臓を落とす

丸で使わない魚は、漁港でエラと頭、内臓を落とす。店内の仕込みがぐっとラクに。

[2]歯ブラシで血合いを洗い流す

内臓を取った後、血合いはブラシで洗い流す。できるだけごわついた歯ブラシがよい。

[作り方]
[1]三枚におろす

サバを三枚におろす。腹骨をすいて、中骨も抜く。流水で流し、ペーパーで水気を拭き取る。新鮮な身は中骨が抜きづらいが、頑張って抜く。

[2]塩を振る
塩を両面によく振り、しばらく置く。浮いてきた水気をよく拭う。
POINT:塩は食べておいしい程度で強すぎないように。

[3]ハーブ類をすり潰す
モルタイユ(なければすり鉢、フードプロセッサーでも)でをよくすり潰す。

[4]オリーブ油で加熱
フライパンにサバを入れ、オリーブ油を浸るぐらいまで注ぎ、中弱火にかける。

[5]煮る
ぐつぐつと火が入り、身の縁の色が変わってきたら裏返し、3~4 分ほど煮る。

[6]ハーブ類とビネガーを加える
のペーストを加え溶かし、さらに煮る。香りが立ってきたら白ワインビネガーを振り入れる。
POINT:酸味を効かせるのが肝。白ワインビネガーでシャープに決めたが、フレッシュトマトを使えば家庭的で優しい味わいに。

[7]完成
ひと煮立ちしたら皿に移す。オイルもごちそう。


神奈川・葉山「ピスカリア」の店舗情報


◎ピスカリア
神奈川県三浦郡葉山町堀内918-20
☎ 046-802-8388
12:00~14:00LO、18:00~20:30LO
月曜、火曜休(祝日は営業)
JR横須賀線 逗子駅 東口 車13分(バスの場合、元町停留所で下車、徒歩1分)
Instagram:@piscaria.hayama

※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。

(雑誌『料理通信』20120年4月号掲載)

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