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RECIPE

スパイス衣が主役のインド式てんぷら「カリフラワーのバジ」

プラントベースの始め方17

2022.07.19

photographs by Shinya Morimoto

連載:プラントベースの始め方

健康や環境への配慮から、植物性の食材を主体とする“プラントベース(Plant Based)”な食事法が注目されています。肉や魚や乳製品に頼らずとも「おいしい」料理を作る知恵は、世界各地に存在します。身近なレシピからおいしくプラントベースを始めるヒントを紹介します。

教えてくれたシェフ
「インド食堂 TADKA(タルカ)」小此木(おこのぎ)大さん

小此木大さん。「ムガール」などのインド料理店で経験を積み、2012年現店、21年12月には2号店もオープン。「バジは南インドではストリートフード。青唐辛子やバナナもあって、午後にコーヒーと一緒に食べたりもします」


スパイスで野菜の風味を引き立てる

北インド料理店で修業したのですが、豆や野菜を使った料理のバリエーションが豊富な南インド料理にはまりました。毎年、南インドに行く度に新しい野菜料理を発見しては日本で再現しています。

インドでは、揚げ物は屋台で買ったり、レストランでは前菜の扱いになることが多いです。パコラやバジと呼ばれるてんぷらのような料理は、衣にべスン粉(ヒヨコ豆の粉)を使うのが特徴。南インドのバジは米粉も入れますね。具材はタマネギやローバナナ(未熟バナナ)などが定番でしょうか。他にも屋台料理の「65(シックスティファイブ)」という真っ赤なから揚げ、小麦粉の生地で包んで揚げたサモサや、ワダという豆の生地で作る甘くないドーナッツのようなものが軽食としてよく食べられていますが、いずれも具材よりむしろ衣・生地が主役。スパイスを効かせた衣の味で具材を食べる感覚です。

カリフラワーは味が淡いので、塩とターメリックで持ち味を引き出してからスパイスで味付けした衣を絡めて油で揚げると、味わいがグンと増すんです。味の要は、ヒング。ニンニクやタマネギの代わりに使うことがあり、香りに奥行きを出します。強烈な香りですが、野菜料理にはなくてはならないスパイス。日本でもパウダーが入手可能です。

揚げる際に重要なのは、衣の濃度。粉に水を少しずつ加えながら混ぜて、衣が野菜に絡む位の濃度に調整してください。揚げ加減は色でなく、泡の大きさで判断するのも重要。

店で使うのは京都府や滋賀県産中心の旬のオーガニック野菜。日本特有の野菜も活用しつつ、味わいは現地の味を忠実に再現するのがポリシーです。例えば、刻んだ壬生菜とココナッツを炒めてふりかけ風にしたり、ツルムラサキを混ぜご飯にしたり。スパイスのことはもちろん、野菜のこともよく理解していないと南インド料理は作れません。奥が深くて、探求しがいのある世界です。


<植物性食材だけでおいしくなるコツ>


1 カリフラワーはスパイス風味で下茹でしておく
2 揚げ加減は色ではなく、泡の小ささで見極める

「カリフラワーのバジ」の作り方

[材 料(2~4人分)]
カリフラワー・・・150g
塩・・・ティースプーン3
ターメリック・・・ティースプーン1/2

〈衣〉
ベスン粉(ヒヨコマメの粉)・・・60g
米粉・・・20g
塩・・・ティースプーン1
ターメリック・・・ティースプーン1/2
チリパウダー・・・ティースプーン2/3
ヒング・・・ティースプーン1/2
ガーリック・ジンジャー(ニンニクとショウガ同量をすりおろして混ぜたもの)・・・小さじ2
重曹・・・ティースプーン1/5
水・・・約90ml

[材料のポイント]

ヒング。英語名・アサフェティダ(assafoetida)。豆料理や野菜料理に深みとコクをプラスするのに使われる香辛料。強烈な匂いがあるが、他のスパイスに混ざると香りにぐっと奥行きが出る。小此木さんが現地で購入した箱入りは固形状で、水に浸けた汁を使用。パウダー状は日本で入手可。

[1]湯を沸かす

鍋にカリフラワーが浸かる程度の湯を沸かす。

[2]香辛料と塩を入れる

沸騰したら、ターメリック、塩を入れる。

[3]カリフラワーを下茹でする


一口大に切ったカリフラワーを入れて、約30秒茹でてザルにとる。
POINT:沸騰状態をキープし、茹ですぎないこと。約30秒が目安。

[4]衣の粉を用意する

ボウルに水以外の衣の材料を全て入れる。

[5]水を加えながら混ぜる

泡立て器でまず全体を混ぜてから、水を少しずつ加えながら、しっかりダマにならないように混ぜる。
POINT:カリフラワーにまとわりつく程度の濃さになるよう、水を少しずつ加えて調整する。ゆるくなってしまったら、ベスン粉を足すとよい。

[6]カリフラワーを入れる


衣が程よい濃さになったら、のカリフラワーを入れて、しっかりまとわせる。

[7]油で揚げる

サラダ油を190℃に熱し、カリフラワーを入れる。
POINT:生地を作り置きすると揚げた時に色が濃くなるので、揚げ加減を色で見極めにくい。カリフラワーの周りの泡が少なくなったらOK。

[8]揚げる時間は約2分

カリフラワーの茹で加減にもよるが、揚げる時間は約2分が目安。

[9]油を切る

油を切り、皿に盛る。好みでコリアンダーのチャトニ、レモン(共に分量外)を添える。



◎インド食堂 TADKA
京都府京都市中京区押小路通高倉西入左京町138 
☎075-212-8872
12:00~14:00LO 18:00~21:00LO 
日、月曜休
京都市営地下鉄烏丸線烏丸御池駅より徒歩5分
https://tadka-kyoto.com/

※新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため要請に合わせて営業時間が変わることがあります。

(雑誌『料理通信』2018年5月号掲載)

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