柑橘だけで作る機能性ドリンク セミノール
[三重]未来に届けたい日本の食材 #42
2024.07.04
変わりゆく時代の中で、変わることなく次世代へ伝えたい日本の食材があります。手間を惜しまず、実直に向き合う生産者の手から生まれた個性豊かな食材を、学校法人 服部学園 服部栄養専門学校理事長・校長、服部幸應さんが案内します。
連載:未来に届けたい日本の食材
最近、愛飲しているのが〈すぎもと農園〉の「セミノール青みかんドリンク」。飲むほどにスッキリ爽快になり、体中に元気が漲ってきます。三重県御浜のミカン畑で、季節の柑橘類を作りながら、ブランディング、マーケティングにも力を入れ、農業ビジネスのリーダーとして活躍する社長の杉本賢さんにお話を聞きました。
「セミノール青みかんドリンク」、酸っぱいでしょう。そして、ほんのり苦味もある。実は、酸っぱいのを作りたかったんです(笑)。甘い完熟みかんジュースもいろいろ作っていますが、このドリンクは機能性に特化したもの。
以前からミカンの機能性には注目していて、ミカンで機能性のあるドリンクが作れないかと考えていたところ、早摘みミカン(青ミカン)には健康成分フラボノイドの一種であるヘスペリジンが多く含まれるという調査結果が出たんです。中でもセミノールの早摘みミカンは、皮や実(袋や筋も含む)に温州ミカンの5倍も含む、ということがわかった。
そこで、セミノールの早摘みミカンを搾り、少なからず機能成分が入るよう、粗めのメッシュで漉す。さらに、温州ミカンの青ミカンを丸ごと粉にしたものを加え、ヘスペリジン含有量をさらにアップさせたのがこのドリンクなんです。
セミノールは生食用として出荷するものは袋掛けをして、4、5月に収穫。ドリンク用のセミノールは、袋掛けはせず、除草剤・農薬を最小限に抑えて栽培し、年によって違うのですが、12月から2月ぐらいまでの間に、酸度が3%を切ったところで収穫し、搾ります。果皮はオレンジ色になっていますが、完熟には程遠い早摘みです。
そこに、7月末から8月にかけて早摘みした温州ミカンの粉を0・5%加えます。以前は、セミノール果汁を布で漉していたため、機能成分が果汁に含まれず、カスにほとんどが残ってしまっていた。だから、1%加えていたのですが、粗めのメッシュにしてから、果汁の中にも残るようになったので、0.5%にしています。粉そのものはとても苦いので、全体のバランスをとるのが大変でした。
開発スタッフが1年余り、試行錯誤を繰り返した成果です。これまでセミノールの畑が十分なく、粉は温州ミカンでしたが、畑が確保できたので、今、セミノールの粉の準備も進行中です。
柑橘類は天候リスクが大きい上に、いわば嗜好品ですから、景気の影響も受けやすい。柑橘農家が自分たちの作る農産物のみに頼らず、地域一体となったブランディングをして、クオリティの高い商品を開発していくこともこれからは大事だと思います。それによって、農業従事者の収入も上がるはずです。今後も、仲間ともども、上質のミカン、また、このドリンクに続くような商品を開発し、地域の活性化を図っていきたいと思っています。
◎すぎもと農園
三重県南牟婁郡御浜町神木394
☎05979-2-3120
www.o-mikan.com
(雑誌『料理通信』2015年5月号掲載)
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