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RECIPE

これぞ黄金比!元祖「スイカのショートケーキ」

レスキューレシピ【夏野菜編】

2024.08.08

text by Takanori Nakamura / photographs by Hideo Sawai

連載:レスキューレシピ

日本の食品ロス量は年間570万トン*と言われています。生産者が丹精込めて作った食材を無駄にしないための活用レシピをシェフに教わります。テーマは【夏野菜】。夏が中盤に差し掛かると、夏野菜の食べ方もマンネリ化しがち。バリエーションの幅を広げ、食材のおいしさを再認識するレシピを紹介します。今回は「スイカのショートケーキ」。生みの親である「ヌキテパ」で生地、スイカ、クリームの黄金比を伝授していただきます。

*農林水産省「日本の食品ロスの状況(令和元年度)」

目次






教えてくれた人:東京・五反田「ヌキテパ」田辺年男シェフ

東京・五反田「ヌキテパ」田辺年男シェフ

プロボクサーを経て料理の世界へ。西麻布「ビストロ・ド・ラ・シテ」で修業後、渡仏し「エスペランス」「ヴィヴァロア」「ラ・マレ」等ミシュラン三ツ星店で研鑽を積む。93年に帰国。都内レストランのシェフを務めた後、88年、恵比寿に「あ・た・ごおる」をオープン。94年に五反田に移転し「ヌキテパ」と改名。南仏のオーベルジュのような雰囲気の店内で魚介や野菜を中心にした料理が楽しめる。2017年、厚生労働省発表の「現代の名工」受賞。


レストランデザートならではの繊細なバランス

今でこそ、レストランの食材としてスイカが使われることは珍しくないが、「ヌキテパ」はその元祖と言ってもいい。中でも不動の人気を誇るのが、スイカのショートケーキ。「このレシピが生まれたのは22年前のこと」と田辺年男シェフは振り返る。

「きっかけは、お客さんに不意打ちでケーキを注文されて、即興の創作で作ってみたのが始まり」。スイカはケーキの素材に合わないと思っていたら意外にも好評だった。それからグランドメニューとなり、改良が重ねられ2000年頃に今のスタイルが完成した。

田辺シェフは、もともとスイカ好き。「スイカの赤い部分はもちろん、皮に近い白い部分も、皮も、タネもすべて無駄にせず使います」。スイカは漢方の素材にもなっているほど奥が深く、健康にもいろいろとおいしい作用があるそうだ。

特にこの季節は「スイカのコース」を設けて、スイカのリゾットやスイカとウイキョウのサラダ、スイカの炭火焼など、様々なスイカ料理が登場する。もちろん、〆はスイカのショートケーキだ。

ナイフを使ってサクサク切る手応えもシズル感たっぷり。口の中で生クリームとスイカの汁気は心地よく弾け合うではないか。これもマリアージュの妙と言っていいのか、味わいの相性もいい! 人前でホールから切り分けた時の、鮮やかなレッドは歓声が上がるに違いないが、「テイクアウトにはできないのよ」と田辺シェフ。スイカとスポンジ、生クリームの儚い口溶けは、レストランデザートならではのバランスだったのである。

「スイカのショートケーキ」材料と作り方

[材料](直径22cmのケーキ型2個分)

卵・・・8個
グラニュー糖・・・200g
薄力粉・・・200g
バター・・・5g

スイカ(3L)・・・1玉
シロップ*¹・・・適量
スイカのリキュール・・・少量
生クリーム・・・300g
スイカのジャム*²・・・少量

*1 シロップは水に同量のグラニュー糖を溶かしたもの
*2 スイカのジャムはザルに果肉を押しつけて種をよけた果肉と果汁を、とろみが出るまで煮詰めたもの

<あると作業がスムーズになる納得の道具>

右より、3cmの高さに切りだされた角材はスイカを輪切りにする時の必需品。ハサミはスポンジ生地をカットする時にあると便利。パンナイフは刃が長いので、大玉のスイカを切るのに重宝する。

【作り方】
[1]卵と砂糖をミキシング

卵と砂糖をミキサーに13分かける。しっかりと空気を含ませて、カサを増やすイメージで。(この間に、型に溶かしバターを塗って、冷蔵庫で冷やしておく)

[2]粉を加える

薄力粉を3回に分けて、ふるいにかけながら加え、ボウルも回しながら、泡をつぶさないように全体に混ぜる。

[3]型に入れて焼く

 

型の内側に薄力粉を薄くはたく。生地を流し、タオルの上でトントンと型を落としてならす。180℃のオーブンで25分焼く。焼けたら型から外し、網の上で冷ます。

[4]スイカを切る

スイカは頭1/4のところで切り落とし(材料写真を参照)、断面を下にしてまな板に置く。高さ3cmの角材をスイカの横に添え、パン切りナイフを角材に当て、スイカを回しながら輪切りにする。
POINT:スイカは厚すぎても、バランスを崩す。まずは、この黄金比を厳守すべし。

[5]皮を切り取る

スポンジ生地の型より一周り小さいケーキ型をスイカに当てる。型にそって周りに包丁を入れ、皮を外す。

[6]スイカの水分を取る

キッチンペーパーを当てて、上からケーキ型などの軽い重石をして、余計な水分を吸い取る。

[7]スポンジを切る


パン切りナイフでスポンジを厚さ8mmに切りだす。

[8]生クリームを塗る

スポンジの表面にシロップとスイカのリキュールを合わせたものを刷毛で塗り、7分立てのゆるめの生クリームを薄く全体に伸ばす。
POINT:生クリームにはグラニュー糖を加えない。スイカの甘味を邪魔せず、みずみずしいフルーツ感が引き立つ。

[9]スイカを重ねる

スイカを重ね、周りにはみ出した余分な生地を包丁でカットする。

[10]生クリームをのばす

スイカの表面に7分立てのゆるめの生クリームを薄く伸ばす。

[11]余分な生地を落とす

スポンジを重ね、周りにはみ出した余分な生地をハサミでカットする。

[12]生クリームで全体を覆う

スポンジの表面にシロップとスイカのリキュールを合わせたものを刷毛で打ち、7分立てのゆるめの生クリームで全体を覆う。冷蔵庫で冷やす。
POINT:最後のケーキカットはよく切れるナイフを必ず使うこと。美しい断面は、感動をさらに高める。

これぞ黄金比!元祖「スイカのショートケーキ」

高さ3cmに切りだしたスイカを厚さ8mmのスポンジで挟み、ゆるめに泡立てた生クリームでコーティング。スイカとスポンジの厚み、生クリームの硬さが絶妙なバランスで溶け合う。テイクアウトできないレストランならではのデザート。


東京・五反田「ヌキテパ」の店舗情報


◎ヌキテパ
東京都品川区東五反田3-15-19
☎03-3442-2382
12:00~13:30LO、18:00~20:00LO
月曜休、不定休あり
JR、都営地下鉄五反田駅より徒歩10分
https://nequittezpas.com/

※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。

(雑誌『料理通信』2012年9月号掲載)

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