ミルクマンが40年ぶりに復活!豪州の酪農農家にエールを送る配達サービス
Australia [Sydney]
2024.08.15
text by Akiko Ganivet / photographs by RESTORE
(写真)昔懐かしい瓶入り牛乳。長年シドニーでは、牛乳配達のおじさんを「ミルクマン」、愛称「ミルコ」と呼んでいた。エリアによっては90年代まで存在していたようだ。
「ミルクマンが40年ぶりに来た!」
80年代まで、玄関前に瓶入り牛乳が並ぶ光景が日常だったシドニー北部で、早朝の牛乳配達が再開している。
配達するのは、コンサルタント出身のドミニク・ライアン氏。毎日スーパーで買う牛乳のプラスチック容器が、環境に悪影響を与えていることに頭を悩ませていたライアン氏が、2023年10月、瓶入り牛乳を配達する会社「リストア(RESTORE)」を立ち上げた。
リストアのウェブサイトには、「1リットルのプラスチックボトル1本あたり、24万個のマイクロプラスチックが含まれている」という衝撃的な事実が掲載されている。しかもシドニーでは、プラスチック製品をリサイクルごみとして廃棄しても、多くは再利用されないのが現実だ。
ライアン氏が最初に始めたのは、相性の合う酪農農家探し。酪農家の多くは大手スーパーマーケットと契約しているが、インフレもあって毎年酪農製品の利益率は下がり、業界全体が苦難に面している。まずは小規模酪農家に手を差し伸べたいと考え、シドニー南部にある家族経営の「ティルバ農場(Tilba Dairy)」にアプローチ。主にファーマーズマーケットで牛乳を販売していたティルバは、ライアン氏のビジネスに賛同し、リストアが誕生した。
手始めに近所の家庭に毎週、再利用可能な瓶入り牛乳の配達を試験的にスタート。現在ではシニア世代を始め、小さな子供がいる家庭を中心に利用世帯は急拡大中だ。
幼少期、牛乳配達をいつも楽しみにしていたというライアン氏。両親は小学校で、瓶入り配達牛乳が支給されていた世代だ。シドニーの裕福なエリアから、環境改善に挑むリストア。2024年末までに、同社はシドニー北部で3000キロのシングル・ユース・プラスチック(リサイクルされずに捨てられるプラスチック)を削減するというターゲットを掲げているが、瓶入り牛乳配達は、その第一歩として頼もしいプロジェクトだ。
◎RESTORE
https://therestore.au/
*1豪州ドル=96.3円(2024年8月時点)
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