「技術・文化を伝承する」
渡辺明/Akira Watanabe
イル・リフージョ・ハヤマ/Il Rifugio
2015.05.19
1974年1月9日生 / 栃木県出身 / O型
24歳で料理人に。地元のイタリアンなどを経て01年渡伊。フィレンツェ郊外「リストランテ ダ・デルフィーナ」(1年)ほかトスカーナ、ヴェネトで計2年半修業。帰国後、「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」(1年半)を経て05年再渡伊。サルデーニャ「イル・リフージョ」(1年)、ナポリ(2カ月)で働き帰国。07年西麻布「グットドール・アッキアーノ」シェフに就任。10年、妻の祖母の実家を改装し独立。
FAVORITE
音楽 : 『情熱大陸』テーマ曲
本 : 『味』(秋山徳蔵著)『メニューの設計図』(高橋徳男著)
映画 : 『人生は奇跡の詩』『ニュー・シネマパラダイス』
MY LEGEND
安生勝巳
「オステリア・アンジョウ(栃木・宇都宮)」シェフ。1965年生まれ。93渡伊。トスカーナ州ヴィアレッジョの「リストランテ・ロマーノ」ロンバルディア州マントヴァの「ダル・ペスカトーレ」などで修業後、帰国。96年からオトワレストランに務める。98年に現店開店。
ノンナ・デルフィーナ
「リストランテ ダ デルフィーナ(伊・トスカーナ州)」シェフ。メディチ家の別荘「ラ・フェルディナンダ」があるアルティミーノの農家に生まれ、幼いころよりヴェネチア貴族のお屋敷に使え、料理を習得する。その後、家庭をもち、1940年代ごろに狩猟にくる人々に向けて、料理をふるまい初め、評判になったことから家をレストランに。以降家族経営を続ける。
落合務
「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ(東京・銀座)」シェフ。1947年生まれ。78~81年渡伊、18店以上で修業。82年より赤坂「グラナータ」に。89年「モデルナ」のシェフ。96年「グラナータ」を退職後、97年現店を開店。著書に『「ラ・ベットラ」落合務のパーフェクトレシピ』(講談社)など。
二宮寛
「葉山パッパニーニョ(神奈川・葉山)」店主。1937年生まれ。元三菱重工所属サッカー選手、サッカー指導者。59年に三菱重工入社し、サッカー部選手、監督を務め、76年から78年には日本代表監督を務める。引退後、後に欧州三菱自動車工業の社長、会長を経て、2000年に同社を退職。葉山に移り自然環境を活かしたカフェ、現店を開店する。
シチリア風ウニのスパゲティ
シチリアでは、オレンジの皮をすりおろしてウニの生臭さを消し、地元のズッキーニとオイル、唐辛子で和える。ここ葉山でも同様に、オレンジや夏みかんの皮を使い、5月中旬〜8月下旬には佐島の殻付きウニを使う。
三浦の野菜と地卵、伊勢海老のサラダ 自家製アンチョビのソース
8月の産卵期以外は一年中目の前の海で捕れる伊勢海老だが、寒い時季はひときわ身が締まる。アワビを餌にするため濃厚なこの海老と、畑の根菜や春野菜を地卵がつなぐ。旬の鰯を漬け込んだ自家製アンチョビの塩気もマッチ。
必要とされるためのキーワード
客席の“空気感”を揃える。
おいしさは、皿の中だけにあるわけじゃない。土地の風や匂い、町並みや建物、店の雰囲気。いかに現実から切り離された時を過ごせるか、に外食の楽しみはある。
葉山の、築百年の日本家屋という舞台を得て、ここでならそれができると渡辺明シェフは思った。
三浦半島の野菜、佐島漁港の魚介も圧倒的な鮮度だが、「地元にとっては日常」。ならば鮑を食べる佐島のタコを蒸し、湯気まで絡め旨味を逃さない、といった仕込みで現実逃避の皿にもっていくのがプロの仕事。そうして初めて地元の人が「ここのタコを食べてみて」と東京から人を連れてくる。
同時に、マダムの杏沙さんは都心と同じサービスを貫く。「店の雰囲気を作るのは、お客様。隣のテーブルの空気が違い過ぎるとリラックスできないので、コーナーごとに“空気感”を揃えます」。呼ばれる前に動き、動けない時は目配せでお客を安心させる。すると次回からは安心して待っていてくれる。郊外の現実逃避は、都心のノウハウがあってこそ亨受できる。
◎イル・リフージョ・ハヤマ
神奈川県三浦郡葉山町一色2179
046-875-1515
完全予約制 11:30スタート/12:30スタート 18:30スタート/19:30スタート
月曜夜、火曜休
カード 不可
座席 全22席+夏はテラス席6席
タバコ 禁煙
アクセス JR逗子駅よりバスで20分「一色海岸」バス停より徒歩3分
http://www.ilrifugio-hayama.com
昼2200円、3000円、5500円
夜5400円~10800円、アラカルトあり(税込)
【WINE】 グラス 白赤各2種 570円~、ボトル 2900円~
「2010年11月イタリアの根っこを掴んだ若手シェフ」 掲載
「2012年05月100人のシェフが考える「必要とされる店」になるために」 掲載
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(『料理通信』2012年5月号取材時点)