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RECIPE

より安全においしく。磨き上げた定番「炙り鯖とじゃがいもの一皿」

ブルーフード・レシピ:「オルガン」紺野真さん

2025.02.10

より安全においしく。磨き上げた定番「炙り鯖とじゃがいもの一皿」

text by Kei Sasaki/ photographs by Masahiro Goda

連載:ブルーフード・レシピ

海に囲まれ、豊かな漁場を有する日本には魚食文化が根付いています。魚を食べるなかで培われ、受け継がれてきた知恵や知識を継承し、上手に食べることは、多様性豊かな海の保全につながります。日本周辺でとれる水産物(ブルーフード*)の魅力を再発見するレシピを人気店のシェフに教わります。今回は、元祖・小さくて強い店「オルガン」で長く愛された「炙り鯖とじゃがいもの一皿」です。変わらないようでいて進化し続ける、定番の“味の磨き方”に迫ります。

*ブルーフードとは、淡水・海洋環境に由来する植物、動物、藻類など水生生物性食品のこと。食料危機や気候変動などの課題に対応し、健康的で持続可能な食料システム構築への貢献が期待されている。
**日本の海面漁業の漁獲量ランキング(漁獲量/前年比)【農林水産省:令和5年漁業・養殖業生産統計】
全体(282万3,400t/-4.3%):1位マイワシ(68万900t/+6.1%)、2位ホタテガイ(33万600t/-2.8%)、3位サバ類(26万1,100t/-18.3%)、4位カツオ(15万2,600t/-20.0%)、5位スケトウダラ(12万2,900t/-23.4%)、6位カタクチイワシ(11万4,000t/-7.3%)、7位マアジ(9万2,000t/-7.0%)、8位ブリ類(8万1,000t/-12.9%)、9位サケ類(6万t/-31.8%)、10位マダラ(5万4,000t/-6.9%)

目次







教えてくれた人:東京・西荻窪「オルガン」紺野真さん

東京・西荻窪「オルガン」紺野真さん

高校卒業後、1987年に米国・ロサンゼルスに移住。南カリフォルニア大学に通いながらロックミュージシャンを目指すも、現地のレストランで働いた経験から食の世界に転向。97年に帰国し、カフェやフレンチレストランでサービスをしながらワインを学ぶ。05年、自然派ワインブームの先駆けとなる三軒茶屋「uguisu」を、11年には西荻窪に「organ」を開く。23年末、麻布台ヒルズにオープンしたコンランショップ併設のレストラン「Orby」のヘッドシェフに就任。


試行錯誤の足跡が刻まれたレシピ

「オルガン」をオープンしたのは2011年。ワイン1杯でも立ち寄れる気軽なビストロは、いつの頃からかゲストの半数が7~8皿からなるコース料理とワインペアリングを楽しむ店に。流れているのはまぎれもなく「レストランの時間」だ。

ペアリングを考えるためのテイスティングは定期的に行っている。「ワインのテイスティングメモを手掛かりに食材をピックアップし、本当に合うかを検証します。理論は存在するけれど、頭の中のイメージだけでなく実際に検証してみると毎回必ず意外な発見があります」。こうしてペアリングを突き詰めることで、紺野さんの料理は少しずつ進化してきた。

時期を同じくして、休暇を利用し、パリの「クラウンバー」や「スプリング」の厨房でスタジエを経験したことも大きい。緻密で構成要素の多いガストロノミーの料理について、考え方と技術の一端を吸収した。

「ナチュラルワインといえばボトルを立てて、塊で焼いた肉をがっつきながらガンガン飲む印象。その格好良さは僕もよく知っているけれど、違うことをする店が一軒ぐらいあってもいいような気がして」

ないから作る。自分の「行きたい」を形にする。想いは三軒茶屋に「ウグイス」を開いた頃と同じだ。それでも「お客様の自由度は残したい」から、仕事量は増えるけれどアラカルトもやめないし、ファンの多いシンプルなビストロ料理もメニューに残す。ただし、味を見直して。「炙り鯖とじゃがいもの一皿」のレシピも度重なるバージョンアップを繰り返してこの形に。

「オルガン」の料理には、毎晩、満席のゲストと向き合いながら「もっとできることが」と考え、試行錯誤した足跡がしっかり刻まれている。


「炙り鯖とじゃがいもの一皿」材料と作り方

[材料](6皿分)
サバ・・・3尾
塩・・・適量
セロリ・・・1本
タマネギ・・・1個
人参・・・1/3本
ニンニク・・・2片
サラダ油・・・適量
黒糖・・・30g
白ワインビネガー・・・100㎖
ジャガイモ・・・9個
塩、コショウ、オリーブ油・・・各適量
イタリアンパセリ・・・適量

<ソース>
無塩バター・・・100g
アンチョビー・・・5g
レモン汁・・・10g

[作り方]
[1]サバをおろす
サバを3枚におろし、骨を抜く。

[2]塩を打ち、水気を取る
バットに塩を打ち、サバの身を下にして並べる。皮目にも軽めに塩を打つ。ラップをしてワインセラーで約30分置き、皮目に浮いた水分を拭き取る。黒糖を裏表両面にふる。

[3]野菜を弱火でゆっくり炒める
セロリとタマネギを薄切りにして、多めのサラダ油を引いた鍋に入れ、塩をして弱火でゆっくり、野菜の水分を出すように炒める。炒め終えたら粗熱を取る。

[4]野菜の香りをサバに吸わせる
サバが入る大きさのバットにを入れてならし、その上にサバを皮目を上にして並べ、残りの半分ので全体を覆う【POINT】以前はクールブイヨンに浸していたが、野菜の香りをサバにダイレクトに吸わせて食感をアップさせるようにした。

[5]酢を注ぎマリネする

[6]酢を注ぎマリネする

白ワインビネガーを野菜の上から回しかけ、ラップをして冷蔵庫で2時間マリネする。【POINT】マリネ液に酢を加えるのではなく、酢を直接サバにかけることで、殺菌効果がアップ。

[6]コンベクションオーブンで火入れ

[7]コンベクションオーブンで火入れ

110℃のコンベクションオーブンで皮目を下にして4分~4分20秒、皮目を上に返して2分焼く。粗熱が取れたら冷蔵庫で保存。【POINT】身崩れしにくく、かつ繊細な火入れが可能に。

[7]ジャガイモを焼く
オーダーが入ったら、ジャガイモの皮を剥いて1㎝厚さに切り、塩、コショウをする。オリーブ油を引いたフライパンで両面をゆっくり焼く。

[8]サバを切り分けて炙る

[9]サバを切り分けて炙る

サバを切り分け、1切に3本、寄生虫対策の隠し包丁を入れる。バーナーで皮目を炙る。【POINT】サバの皮目に細かく包丁を入れるのは、万が一の食あたりを防ぐ知恵。仕上げに炙れば完璧。

[10]ソースを作る
小鍋にバターを溶かし、バターがノワゼット(はしばみ色)に色付いたタイミングで叩いたアンチョビーとレモン汁を搾り混ぜ、ソースを作る。

[11]皿に盛る
器にジャガイモとサバを重ね、ソースをかける。刻んだイタリアンパセリを散らす。

[11]皿に盛る

フライパンで焼いてから鯖をマリネ液に浸していた元祖のレシピから、食味と安全性を考慮しマイナーチェンジを重ねてきた。食材はそのまま、しっとりとした食感とまろやかな酸味が繊細なビストロノミーの一皿に。(現在は不定期に提供)


東京・西荻窪「オルガン」の店舗情報


◎organ
東京都杉並区西荻南2-19-12
☎03-5941-5388
火~金曜17:00~23:00
土・日曜12:00~15:00、17:00~21:00
月曜休、第4火曜と翌水曜休
JR西荻窪駅より徒歩7分
Instagram:@organ_tokyo

(雑誌『料理通信』2017年11月号掲載/本文はウェブサイト用に一部調整しています)

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