HOME 〉

JOURNAL / 世界の食トレンド

パリの若者の心を掴んだフィリピン産コーヒーとローカルスイーツ

France [Paris]

2025.02.10

パリの若者の心を掴んだフィリピン産コーヒーとローカルスイーツ

text by Sakurako Uozumi
フィリピン産コーヒーが楽しめるカフェ「カペ(KAPÉ)」。エスプレッソ用にはフィリピン南部産、フィルター用には北部産と、2種類のコーヒー豆を使い分けている。お茶は2区のティーショップ&サロン「コダマ(KODAMA)」から。中央:ケーキのような柔らかさとビスケットのようなサクサク感が融合した「ウベ(紫山芋)のクッキー(Ube Cookie)」。バニラとヘーゼルナッツの風味が特徴。右:バナナの葉で蒸した米粉のケーキ「プト(Puto)」にはココナッツジャムを添えて。ふわふわとした軽い食感が魅力だ。photo by The Travel Buds

多文化に敏感な街パリでは、新しい味やスタイルの店が若者を中心に流行している。旧植民地や難民を受け入れた国々の料理が広く市民権を得ている一方、あまり知られていない国の料理に触れる機会は少ない。

しかし、2024年に登場したフィリピン・コーヒーショップ「カペ(KAPÉ)」は、例外といえる存在。紫山芋「ウベ」を使った色鮮やかなドリンクやデザートが若い層の間で人気を集めている。

運営するのはジェシカ・ゴンザレスとオレリー・ヴェショ。2人は5年前、11区オベルカンフ地区にフィリピン食堂「ボビ(BOBI)」を開き、1年前、近所にカペをオープンさせた。料理を担当するジェシカはこう語る。
「“カペ”とはタガログ語でコーヒーを意味します。フランスではまだ知られていない、フィリピンの豊かな食文化を広めたいという思いでこの店を開きました」

フィリピン料理はスペイン、中国、マレーシアなどの食文化の影響を受けた多彩な料理だが、フランスではその魅力が十分に知られていない。

共同経営者のジェシカ・ゴンザレス(写真右)とオレリー・ヴェショ。ジェシカはシェフ兼アートディレクター、オレリーは接客とドリンクを担当している。photo by The Travel Buds
共同経営者のジェシカ・ゴンザレス(写真右)とオレリー・ヴェショ。ジェシカはシェフ兼アートディレクター、オレリーは接客とドリンクを担当している。photo by The Travel Buds
左:フィリピンの伝統的なパンの一種「パンデサル(Pandesal)」。パン粉をまぶしたカリッとした食感のクラストと、ふわっとしたクラムのコントラストが特長。自家製ジャムとイズニー産クリーム、またはニンニク入りバターを添えて提供する。中央:フィリピンの伝統菓子の「シルヴァナス(Silvanas)」。フィリピン産カカオを使ったチョコのムースリーヌをカシューナッツ入りのダックワーズでサンドし、オレオクッキーで覆っている。右:ポテトを練り込んだバンズに、マリネしたチキンの煮込み、ガーリック・コンフィ、ルッコラ、青いパパイヤをたっぷり挟んだバーガー「アドボディップ(Adobo Dip)」。photo by The Travel Buds
左:フィリピンの伝統的なパンの一種「パンデサル(Pandesal)」。パン粉をまぶしたカリッとした食感のクラストと、ふわっとしたクラムのコントラストが特長。自家製ジャムとイズニー産クリーム、またはニンニク入りバターを添えて提供する。中央:フィリピンの伝統菓子の「シルヴァナス(Silvanas)」。フィリピン産カカオを使ったチョコのムースリーヌをカシューナッツ入りのダックワーズでサンドし、オレオクッキーで覆っている。右:ポテトを練り込んだバンズに、マリネしたチキンの煮込み、ガーリック・コンフィ、ルッコラ、青いパパイヤをたっぷり挟んだバーガー「アドボディップ(Adobo Dip)」。photo by The Travel Buds

フィリピン産コーヒーを提供するのは、現在パリではここだけ。濃厚でヘーゼルナッツのような風味とコクのあるまろやかな味わいが特徴だ。また、ウベをブレンドしたオリジナルドリンクや、もち米を使った自家製スイーツは、素朴でどこか懐かしさを感じさせる。1人で入っても居心地の良い空間で、好奇心旺盛なパリっ子たちの心をしっかりと掴んでいるようだ。

甘味、酸味、塩味が融合した独特な味わいと温かい雰囲気のインテリアは、フィリピンの食文化の新たな魅力を伝える場所として人気を博すこと間違いなしだ。

時間をかけて煮込んだ鶏肉とショウガ入りのお粥「アロズ・カルド(Arroz Caldo)」。フィリピンで愛される家庭料理の一つだ。
時間をかけて煮込んだ鶏肉とショウガ入りのお粥「アロズ・カルド(Arroz Caldo)」。フィリピンで愛される家庭料理の一つだ。
淡い紫色の「ウベ・ミルク(Ube Milk)」。ミルクは牛乳かオーツミルクを選択できる。
淡い紫色の「ウベ・ミルク(Ube Milk)」。ミルクは牛乳かオーツミルクを選択できる。
建築家ユニットMur.Murによる内装のコンセプトは、食べ手と作り手の間に壁を作らないオープンな空間作り。中央に大きな丸テーブルを設置し、カピス貝で作った蓮の花の照明を吊り下げている。この照明は直接フィリピンから取り寄せた。ナチュラルな素材と温かみのある色合いが調和した穏やかな空間。
建築家ユニットMur.Murによる内装のコンセプトは、食べ手と作り手の間に壁を作らないオープンな空間作り。中央に大きな丸テーブルを設置し、カピス貝で作った蓮の花の照明を吊り下げている。この照明は直接フィリピンから取り寄せた。ナチュラルな素材と温かみのある色合いが調和した穏やかな空間。

KAPÉ – Café philippin
17 Rue de Malte 75011 Paris
8:30〜16:00(土曜、日曜9:00〜17:00)
月曜、火曜休
フィリピンコーヒー4〜7ユーロ
ドリンク3〜6.5ユーロ
スイーツ4.5〜6ユーロ
アドボディップ 9.5ユーロ
アロズ・カルド 11ユーロ
https://kapeparis.com/

*1ユーロ=160円(2025年2月時点)

料理通信メールマガジン(無料)に登録しませんか?

食のプロや愛好家が求める国内外の食の世界の動き、プロの名作レシピ、スペシャルなイベント情報などをお届けします。