三ツ星出身シェフによるペルーの「ニッケイ居酒屋」がマンハッタンで人気
America [New York]
2025.05.26

text by Akiko Katayama
「ウナギのピッツァ」28ドル。親しみやすいピッツァに和の風味を凝縮させた人気の品。
ペルー料理が注目を集めて久しい。背景には、原住民はもとよりスペイン、アフリカ、中国、日本などからの移民がもたらした多彩な食文化の融合がある。そして、その価値を優れたシェフたちが昇華し進化させた結果、世界のレストランランキングでペルーのシェフが上位にランクインするなど、ペルー料理が広く認知されるようになった。
そうしたシェフの1人、ペルー系米国人のエリック・ラミレズ氏は、2015年、ブルックリンに粋でカジュアルな現代ペルー料理店「ラマ・イン(Llama Inn)」を開いて大ヒット。現在マドリードとロンドンにも支店を持つ人気ぶりだ。日本人を曽祖父に持ち、2019年には洗練されたスタイルのニッケイ料理店「ラマ・サン(Llama San)」をオープンしてさらなる定評を得ている。

2025年2月に開いた最新店は、ニッケイ居酒屋「パパ・サン(Papa San)」だ。
「ラマ・インのエネルギーとラマ・サン独自のニッケイ料理を合わせたのがパパ・サン。日本の居酒屋ならではの活気と寛ぎを、オリジナルの料理と共に楽しんでほしい」と氏。
そんなコンセプトはたちまち話題を集め、高層ビルが林立するマンハッタンの新開発エリア、ハドソン・ヤードの一角にある同店は、近隣会社員から住人、観光客まで様々な客で満席。営業時間はランチ、ディナー、ハッピーアワー、さらにバーは昼から閉店まで終日立ち寄れ、メニューも幅広いニーズに応える使い勝手のよさも人気の理由だ。
メニューには、日本の刺身をベースにしたティラディート、巻物、丼物など、ラミレズ氏がペルーの味わいを個性的に織り込んだ約30品が並ぶ。ニューヨークのミシュラン三ツ星現代アメリカ料理店「イレブン・マディソン・パーク」などで修業後独立した氏の料理は、洗練さを感じさせながらペルー流の大胆な味わいをしっかり伝えてくる。
例えば「ウナギのピッツァ」は、シイタケ、かつお節、ペコリーノチーズとほのかに甘いゴマのソースが、ウナギの旨味を倍増させる。また「ヒラメとアボカドのティラディート」にはブドウと炒った米を添え、美しい緑と食感のメリハリが印象的な一品だ。

一方、時間に限りがあるランチタイムの客には、セットメニュー「ベントー」8種も用意。バー使いが目的の客には、2024年「世界のベストバー50」ランキング7位のアルゼンチンのバー「トレス・モノス」監修のオリジナルカクテル約10種を用意している。
19世紀末からペルーに移住した日本人が生み出したニッケイ料理は、根強い和食人気の影響で、米国人にとって親しみやすいジャンルになっている。日系移民の血を引くラミレズ氏が、その魅力をカジュアルな居酒屋スタイルで、より多くの人々に伝える様子は日本人として嬉しいものだ。
「チャンスがあれば、東京にも店を出してみたい」と話すラミレズ氏。ペルーから米国を経て進化するニッケイ料理が東京に進出したら? その実現を願いたい。

◎Papa San
The Spiral 内
501 West 34th Street, New York, NY 10001
☎+1-929-822-5264
ランチ11:30~14:30、ハッピーアワー16:00~18:00
ディナー 17:00~22:00(木・金・土~22:30)
バー 11:30~閉店まで
無休(ランチ、ハッピーアワーは月曜~金曜のみ)
https://www.papasannyc.com/
*1ドル=143円(2025年5月時点)