食×ヴィンテージバッグで持続可能なビジネスモデルを目指すレストラン
Finland [Helsinki]
2025.11.27
text by Asaki Abumi / photographs by Rue Madame
店名「リュ・マダム」は、イタリア出身でフランスに嫁いだ貴族マリー・ジョゼフィーヌ・ド・サヴォワにちなんで名づけられた“マダム通り(リュ・マダム)”から。店内はフランス的な優雅さと、イタリア的な気ままさをミックスした世界観で溢れている。料理はイタリア料理とフランス料理のテイストを融合させ、季節や新鮮な食材の入荷具合に応じてメニューを変えている。
ヘルシンキのエスペランディ通りに位置するレストラン「リュ・マダム(Rue Madame)」のオープニングがフィンランドで注目されるのには理由がある。オーナーのノーラ・ハウタカンガスは地元の有名人。元ミス・フィンランドであり、5店舗のヴィンテージショップ&カフェ「リラブ(Relove)」の創業者だ。
リュ・マダムに入店した瞬間に、パリ風の空間が他のレストランとはどこか違うことを肌で感じるだろう。入り口の受付のガラスショーケースには、シャネルやグッチなどのヴィンテージハンドバッグが美しく飾られている。ここでは、食事のメニューの最後のページに、新しい宿主を探すバッグたちが載っており、同席していた恋人への贈り物として会計の際に購入する人もいるという。実は国内で唯一、売り場を併設したレストランともされている。
リラブは、フィンランドではすでによく知られた存在だ。2023年にはヘルシンキ空港にも店舗を増設し、気候排出量が高いとされる空港に、セカンドハンドショップ&カフェを登場させた。そのため、創業者ノーラによる新しいプロジェクト、リュ・マダムには「次は何をするのだろう?」という期待が集まった。
ノーラの夢は「古着ファッションと食への愛を融合させる」ことだった。リュ・マダムでもこのコンセプトを継承したいと考え、ヴィンテージハンドバッグを装飾として活用するアイデアが生まれた。リラブよりさらに落ち着いた、大人びた空間でありながら、装飾はフィンランドにしては大胆。ノーラが信じる、「減らすよりも増やす」という理想“モア・イズ・モア(more is more)”が具体化された結果だ。家具はフィンランドの職人による特注品とヴィンテージ品を組み合わせ、食器類も蚤の市で見つけた品やヴィンテージ品をカスタムメイドするMunkaa社によるものだ。
魚、肉、野菜といった地元の食材を料理に取り入れるだけでなく、持続可能なビジネスモデルは、フィンランドの料理界全体で強くなっている。国際指標「GDS Index」では、フィンランドの首都ヘルシンキが「持続可能な観光・イベント目的地」として2025年も1位を獲得し、2年連続で世界トップの評価を受けた*。
リュ・マダムが大切にしている価値観のひとつが、自然と人々に優しい「善良な人々(good guys)」とだけ働くことだ。この理念に基づき、同じ価値観を持つ料理人、地元の生産者や小規模事業者と協働している。
「私たちの目標は、自分たちも過ごしたいと思うレストランを作ることです」と語ったのはマネージャーであるヘイディ・モイラネンだ。
「より気楽でありながらスタイリッシュで、少しお手頃な価格帯のレストランとして際立ちたいと考えています。犬を散歩させながらシャンパンを1杯飲みに立ち寄る方も、家族で誕生日を祝う方も、すべてのお客様に歓迎されていると感じていただきたいのです。最近はリュ・マダムで初めての結婚式も開催されました!」
「食×持続可能性×〇〇」というテーマで展開されるノーラのプロジェクトは、訪問者に特別でおいしい体験を提供しながら、環境に優しいビジネスが可能であることを証明している。
◎Brasserie Rue Madame
Pohjoisesplanadi 25–27, Helsinki
メインメニュー25ユーロ~
https://www.ruemadame.fi/
*1ユーロ=176円(2025年11月時点)
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