M.O.F.グラシエが仕込む“香り”と“テクスチャー”ゴディバ100周年アイスケーキ「トレゾール」
エマニュエル・リオン
2026.05.02
カカオポッドを象ったチョコレートシェル。その内部に3段階のチョコレートが重なる。上層のホワイト、中層のミルク、中心部のダークチョコレート。それぞれが異なる温度帯で溶け始め、香りが立ち上がり、食感を変えていく。
ゴディバが創業100周年を迎える2026年の記念コラボレーション第3弾として、M.O.F.グラシエ、エマニュエル・リオンとのコラボレーションアイスケーキ「トレゾール ~3つのチョコレートを楽しむアイスケーキ~」をゴディバオンラインショップ限定で発売中だ。 「冷菓では、温度もまた味の構成要素である」。来日したリオン氏に、冷菓における温度設計、香りとテクスチャーの重ね方について聞いた。
目次
温度を設計する
「トレゾール」は、チョコレートシェルの内部に、上層のホワイトチョコレートのアイスクリーム、中層のミルクチョコレートのアイスクリーム、中心部にダークチョコレートのソルベを据え、カカオがもたらす甘さ、華やかさ、力強さが段階的に現れる。
2種類のアイスクリームと1種類のソルベを組み合わせたのは、「チョコレートの本質はカカオの力強さにあるから。ダークチョコレートの純粋な味わいをソルベで最後に利かせています」とリオン。
ホワイトチョコレートとバニラの甘やかな導入から、柚子が香るミルクチョコレートの華やかな厚みへ移り、ほろ苦いダークチョコレートのソルベで締める。ソルベにはクランチを加えることで、ダークチョコレートのフィニッシュをくっきり印象づける。
重要なのは、温度を提供条件ではなく、味の構成要素として扱うことだ。皿盛りデザートと同じように、乳脂肪、カカオバター、糖の配合によって、溶け始める温度帯で香りの出方もテクスチャーも変わる。
“頭の中の図書館”
エマニュエル・リオンはパティシエであり、グラシエ(glacierは、アイスクリーム職人の意)である。パティスリー由来の構成力と、グラシエならではの温度設計とテクスチャーコントロールを組み合わせ、アイスケーキを完成された一皿として設計する。
2002年には、アイスクリーム製作の理論をまとめた専門書を出版。その後、20年以上にわたり年間8〜12カ国を訪れながら、300種類以上のフレーバーを開発してきた。13年からは、料理人、アンヌ=ソフィー・ピックのヴァランス・ローザンヌ・パリ、3店舗のエグゼクティブパティシエも務めた。
2015年にオープンしたパティシエ・オリヴィエ・メナール氏と共同経営するパリのマレ地区のアイスクリーム専門店「Une Glace à Paris(ユヌ・グラス・ア・パリ)」では、フランス伝統的な冷菓の技術をベースに、大胆な素材の組み合わせで異彩を放っている。
素材をいかに高みにまで到達させるか、一口、また一口と進めたくなる食べ心地をどう演出するかは、飽くなき素材への探求心に現われている。
「例えば、アスパラガスとマダガスカルのアニスの木の皮。アニス特有のくどさがなく、爽やかな風味が貴重でした。一昨年の夏は、ジャガイモと中国・雲南省の燻製紅茶『ラプサンスーチョン』、カリフラワーとジュニパーベリーを合わせました」
興味を持って、さまざまなものを試して、“頭の中の図書館”を作る。「もちろん一発で当たることもあれば、6カ月間かかる時もあります」
見えないクリエイション
「興味の湧かない素材こそ、ツイストするのがおすすめです」
カシスだけでは複雑性に欠けるが、ミントやシナモンを混ぜることで深みが出る。単一の味ではなく、複数の味わいが時間差で現れ、最後に絡み合い、余韻を残す。
ゴマとラムのチョコレートボンボンを例にすると、「まずチョコレート、次にゴマ、その後ラムが来て、最後に3つの組み合わせを感じる。長く口に残るのはラムの香りです。たくさん味わえる複雑性のある構成が好きなのです」
日本のそば粉やそば茶にも関心を寄せている。「チョコレートやバニラ、フルーツと一緒に使います。そば茶は軽く焙煎して、水や牛乳、クリームに抽出すると、繊細な香味が引き出せます」
だが、最終的に全てを左右するのはテクスチャーだ。「いくら味のバランスを狙っても、テクスチャーが伴わなければ、味わいも崩れます」。テクスチャーなくして、アイスデザートは成り立たない。だからこそ、テクスチャーを最優先に考える。
冷菓ならではの温度とテクスチャー。見えない部分が、食べ手の体験を左右する。日本で出合う機会の少ないエマニュエル・リオンのクリエイション「トレゾール」。温度、香り、食感がどう一体で設計されているのか、体感してほしい。
◎GODIVA
https://www.godiva.co.jp/
◎Une Glace à Paris
15 rue Sainte-Croix de la Bretonnerie、75004 パリ、フランス
+33 1 49 96 98 33
https://www.instagram.com/une_glace_a_paris/
(料理通信)
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