Germany [Berlin]
ベルリン市が推進する“未来の食堂”プロジェクト
2021.08.12
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text by Hideko Kawachi / photograph by Joanna Nottebrock
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ドイツの社員食堂は長らく味や栄養は二の次で、「肉中心」で「安価」ならよしとされてきた。しかし、年々高まる環境への意識やパンデミックを経て、仕事や職場での食事の在り方が大きく変化したこともあり、近年、社員食堂の売り上げは激減している。
改革が必要だけど、どうすればよいのかわからない――そんな社食をサポートしてくれるのが、「カンティーネ・ツークンフト(KANTINE ZUKUNFT=未来の食堂)」だ。ベルリン市からの資金で運営されている、“カンティーネ(社食や学食)”の緊急変革をサポートするコンサルタントプロジェクトである。
「未来の食堂」は、少なくとも食材の6割をオーガニックにして、野菜を多くすることを提案。コストが上がりそうだが、そこは仕入れ先を見直し、近隣のサプライヤーに替えて旬の食材を中心にし、加熱調理済みの製品を減らすことでコスト面での変化をなくす。
ただし、季節や日によって異なる食材を組み合わせておいしい食事を作るには、技術も創造性も必要とされるため、「未来の食堂」では運営の見直しだけでなく、メニュー作りや星付きシェフによる料理の講習会も行う。また、仕入れ先となる近隣の農家を訪ねてオーガニック農業について学ぶことも。これらのコンサルティングは、全て無料だ。
現在ベルリン市では公共交通、水道局、清掃局、市庁舎といった公共機関の社食の他、保育園や高齢者施設など50カ所以上でサービスを提供している。
通常の飲食店とは規模も量も、求められるものも異なるカンティーネ。だからこそ、ここで提供される食のクオリティの向上は、社会にも、飲食業界にも大きな変化をもたらしてくれそうだ。
(写真)「カンティーネ・ツークンフト」は経営者と生産者と協力し、コストをかけずに改善することが目標だ。ホームページには、野菜中心に変えてもファンが多い「カレーソーセージ」も残しましょう、とのメッセージも。
◎KANTINE ZUKUNFT
https://kantine-zukunft.de
Instagram:@kantine_zukunft