Italy [Torino]
ハラール・ツーリズムは文化の懸け橋
2021.12.09
text & photograph by Sayaka Miyamoto
イスラム圏の経済発展に伴い、世界各国で注目が集まるハラール・ツーリズム。イタリアの現状を検証する「第5回トリノイスラム経済フォーラム(TIEF)」が、10月13日から15日の3日間、トリノで開催された。
ムスリム旅行客のための観光インフラを評価する『グローバル・ムスリム・トラベル・インデックス(GMTI)』*によれば、2019年には2200億ドルの市場が見込まれていたが、その数字が2倍になる日は近いと予想されている。そんな中、イタリアのハラール・ツーリズムは未発達であるという現状が、トリノ大学の研究チームによって発表された。
「イタリアは移民の歴史が浅く、人々は慣れていないんです」と分析するのは、スローフード・インターナショナルの移民文化セクション責任者で、自身もモロッコからの移民2世としてイタリアに暮らすアブデラマン・アマジョウさんだ。イタリアの食材にハラール認証を付けることはイメージダウンにつながるなどの偏見があり、イスラム系観光客は、安心してイタリア料理を食べることができない状態だと言う。
「EUでは、死んだ肉を“禁忌”とするイスラムの教えに従うと畜方法が残酷だと批判されていますが、最近はEUと同じ方法(と畜直前の気絶処理)を取り入れています。互いの文化を尊重し、理解し合い、改善していこうという前向きな姿勢です」とアブデラマンさん。「まずはハラール・ツーリズムを活性化させる。イスラム経済の存在が大きくなれば、文化の理解も進むと思います」
*GMTI:Global Muslim Travel Index(最新版)
https://www.crescentrating.com/reports/global-muslim-travel-index-2021.html
(写真)イタリアの大手精肉業者のハラール認証付き鶏肉。イスラム系の人が利用する専門店では認証付きのイタリア産食材が売られているが、一般の店ではほとんどその姿は見られない。
◎TIEF(Turin Islamic Economic Forum)
https://www.tief.it/
1ドル =115円(2021年11月時点)