Spain [Madrid]
食品廃棄物を徹底的になくす! スペインの新法案整備
2022.01.24
text by Yuki Kobayashi
スペインでは年間130万トンの食品廃棄物を生み出している。1人につき年間31kgも、食品を捨てている計算だ。そんな中、「捨てる食品ほど高い食品はない」をモットーに、農水省を筆頭に食品廃棄物を徹底的に削減する法整備が進んでいる。
法案は15項目からなり、食のサプライチェーン全体を包括している。生産者や製造業、小売、レストランまで食に関わるすべての業種は、各自食品廃棄予防計画を作成しなくてはならない。余剰がある場合は民間慈善団体、食料バンクへ提供する。その提供方法、回収方法、保存、運搬、食料種類や他の面についても、明記された両者間での契約書を交わすことになる。また事業者には、年間食品廃棄に関する報告書提出義務も発生する。
もちろん、寄付する食品は賞味期限まで余裕がある状態でなくてはならない。スーパーなどで売れなかった食品は加工に回され、食用にならない食材は動物飼料やコンポストなどへ回す。従事者が食品廃棄についての研修や、食品衛生についての育成講習を受けることも必要だ。
飲食店は提供した料理が残ったら客に持ち帰りを勧め、テイクアウト用の容器の用意もしなくてはならない。メニューには食べ残しを無料で持ち帰れるサービス提供を明記する――など、15項目の法案の内容は仔細に及ぶ。
法案の有効な施行には各省庁の横のつながりも必須。消費者省や経済産業観光省など多くの省庁やEUとの連携を円滑にし、これまで様々な方策でも実現しきれなかった状況を打破する勢いだ。規則違反には6001~15万ユーロの罰金を設定しており、悪質な場合は最高で100万ユーロまで課すことを厭わない。廃棄する側だけでなく、受け取る側の処理方法にも目を光らせる。法案は今後、各州政府と関係者の聞き取りが始まり、その後関係各省庁の受理、閣僚会議と国会にかけられ、2023年1月から施行の予定だ。
(写真)収穫から消費者までを包括する今回の新案。2030年には食品廃棄量を今の半分にするための大胆な目標だ。
◎Gobierno de Espana
Ministerio de Agricultura, Pesca y Alimentacion
スペイン農林水産食糧省のサイトより
*1ユーロ=128円(2021年12月時点)