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RECIPE

セロリの葉が主役。ハーブのように香る「セロリの葉のパスタ」

レスキューレシピ【捨てないレシピ編】

2022.10.06

photographs by Masahiro Goda

連載:レスキューレシピ

日本の食品ロス量は年間570万トン*と言われています。生鮮食品においても、豊作で余ったり、規格外、傷、スレがあって売り物にならず、行き場のない食品が日々廃棄されているのです。家庭内で料理中に出る端材や余らせがちなパーツも、新たな魅力を見出し、活用法を考えることで捨てる量を減らせます。生産者が丹精込めて作った食材を無駄にせず、おいしく食べるための活用術をシェフの技に学びます。
*農林水産省「日本の食品ロスの状況(令和元年度)」

目次






教えてくれたシェフ:群馬「VENTINOVE(ヴェンティノーヴェ)」竹内悠介さん

群馬県出身。東京・広尾「アッピア」で5年勤務後、渡伊。トスカーナの精肉店&レストラン「チェッキーニ」などで修業し、2011年西荻窪に「trattoria29」、2015年サンドイッチ専門店「3&1 Sandwich」を開業。2020年群馬に移住し、群馬で採れた旬の野菜や果物を瓶に詰めて届けるオンラインショップ「29 in bottiglia(ヴェンティノーヴェ イン ボッティーリア」を運営。2022年11月に新店「VENTINOVE」をオープン予定。

<フードロスへの取り組み>
「東京にいた時よりも農家さんがより近い存在になり、彼らが、ほんの少しの傷や曲がりなどで市場に出荷できないものを、どうやったら無駄にせずにすむかをいつも考えている事を知りました。瓶詰め作りはそのような野菜を積極的に商品にできるので、フードロスの視点から見てもいい取り組みだと思っています。新店では、どうしても出てしまう生ゴミを全て敷地内のコンポストで処理をし、ガス台ではなくかまどと薪の焼き台を設置。この土地の自然と共存しながら、いかに環境への負荷を減らすかが、新しいレストランでの大きな課題になっています」

 


よく切れる包丁でセロリの葉の繊維を断ち切る

修業先、広尾「アッピア」の賄い料理です。イタリアのジェノベーゼを模した、生のフレンチパセリと大葉が香る和製パスタ「バジリコ」の練習台として作っていました。パセリを、セロリの葉で代用していたんです。名付けて「セロリコ」。セロリの葉は繊維が硬くて、残ってしまいがちでしょう。でも火を通すと実はハーブのように香る。バジリコ同様、このセロリコもバターのコクと香味野菜の香りで食べ進めるレシピ。だから、セロリの葉をいかに芳醇に、爽やかに香らせるかが肝心なのです。 

まずはみじん切りから。よく切れる包丁で、丁寧に細かく。パスタと一体感が出るようにしっかり繊維を断ちます。量が多くなると、このみじん切りだけでひと汗。ついフードプロセッサーを使いたくなるけど、そこはNG。フードプロセッサーだと水ばかり出てべちゃべちゃになる。切れない包丁も同じです。せっかくのフレッシュな香りが飛びます。また、セロリの葉は薄緑の部分と濃い緑の部分、両方使って香りに幅を出します。パスタが主役なので、舌触りが悪くなる茎は入れないこと。

バターの香りが立ったら、水かブロードを加えてひと煮立ち。このパスタにゆで汁は加えません。乳化させたオイルベースでツヤツヤに仕上げるわけでない、やや乾き気味に仕上げる“和製”パスタ。だからパスタのゆで時間も指定時間きっかりに、芯を残すことも意識しないでいい。パスタに火が入りすぎないよう、ソースは先に調味しておき、パスタを加えたらスピード勝負。ですが、ここでさらに香りを立てるコツが。セロリの葉が鍋肌に直接当たるように、ぐるりとふた回しを。これがセロリの香りをたてるダメ押しの一手。直接熱せられることでグッと豊かな香りが増すんです。以上のポイントを押さえて、風味豊かな「セロリコ」を愉しんでください。材料?  セロリにこだわりはないです。なぜなら僕らが食べる賄い料理ですからね。

セロリの葉使いの極意

1.濃い緑と薄緑の葉を混ぜる
濃い緑の葉は青々しく、淡い黄緑色の葉は繊細な優しい香り。混ぜることで香りに幅が出て、仕上がりがより芳醇な香りになる。

2.茎は入れない
「茎も一緒に」なんてこのパスタにはNG。茎が入ると口当たりが悪く、香りも変化。セロリは具でなく、ハーブの役割だと意識する。

3.よく切れる包丁で刻む
セロリの葉のみじん切りにはフードプロセッサーを使わない。よく研いだ包丁で細かく切ると細胞が壊れず、水分も出ず、香りも逃げない。


「セロリの葉のパスタ」材料と作り方

[材料](1人分)
セロリの葉・・・17g
ニンニク(みじん切り)・・・1片
バター(無塩)・・・10g
塩、コショウ・・・各適量
水、または野菜のブロード・・・70ml
スパゲッティ(1.4mm)・・・100g

[1]茎と葉を分ける
セロリの茎から葉を外す。

[2] 細かいみじん切りに
セロリの葉を舌触りがよくなるように包丁で細かくみじん切りにする。
POINT:水分を出さない!

[3]バターとオリーブ油、両方使う
フライパンにオリーブ油、ニンニク、バターを入れ、弱火にかける。

[4]水を加える
バターの気泡が細かくなり、茶色に色づく直前に水を加えて火を強め、ひと煮立ちさせたら火を止める。

[5]調味する
塩、コショウをふる。平行して指定時間通りにパスタをゆでる。
POINT:先に味を決めておく


[6]強火であおる
ゆで上がったら5を強火にかけ、パスタを加え、フライパンを4、5回ほどあおる。これを2回繰り返す。
POINT:ここからは手早く!

[7]セロリの葉を投入
2のセロリの葉を加える。

[8]さらに鍋をあおる
トングで混ぜ合わせたら、さらに4、5回程あおる。

[9]鍋肌でセロリの香りを立てる
パスタをトングで掴み、セロリの葉を鍋肌に直接あてるようにぐるりと2周させる。数回あおり、器に盛る。
POINT:葉はしんなりとパスタに絡みつく

セロリの葉が堂々の主役を張るパスタ、名付けて、「セロリコ」。セロリの葉は熱するとハーブのように香り、たっぷりのバター&チーズと好相性。新感覚の味わいだ。


<野菜を引き立てる名脇役:タバスコとパルミジャーノ>

好みで添える。パルミジャーノ・レッジャーノのコクと旨味、タバスコの酸味と辛味が、清涼感あるセロリの香りにくっきりとした輪郭を与える。


◎29 in bottiglia
Instagram: ventinove_29inb

(雑誌『料理通信』2019年9月号掲載)

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