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FEATURE / MOVEMENT

アルファ ロメオ「Art of Taste」プロジェクト第2弾 藤尾康浩シェフ #02

秋の農園でプライベートダイニング。食材探しの旅から始まる、たった1組へのおもてなし

2019.07.26

text by Kei Sasaki / photographs by Hide Urabe

アルファ ロメオのアーティスティックな美学を食のマエストロたちが“味”で表現する『Art of Taste』プロジェクト。第2弾は「第3回 サンペレグリノ ヤングシェフ」で世界の頂点に輝いた藤尾康浩シェフが、1組のゲストのために特別なコースをつくります。単においしいだけでなく食べ手と料理人、食材の生産者が幸せの循環でつながるようなコースにしたいと「GIULIETTA」で食材探しの旅に出掛けました。


プライベートダイニング食材その①
茨城・取手「シモタ農芸」の野菜とイチゴ


ぐずついた空模様が何日も続き、この時期にしては珍しく肌寒さを感じる7月上旬の某日。藤尾康浩シェフはGIULIETTAに乗り込み、3軒の生産者を訪ねるため茨城県に向かいました。大阪出身で、海外在住経験の長かった藤尾シェフにとって、茨城県は未踏の地。ハンドルを操作しながら、まだ見ぬ土地とこれから出会う生産者を思い期待が高まります。

最初に訪れたのは取手市の「シモタ農芸」。今年10周年を迎える青山「ファーマーズマーケット」の第一回目から出店する農園で、代表の霜多増雄さんは、数多くの料理人から厚い信頼を寄せられる農業界のカリスマです。



霜多増雄さん(左)の説明を聞きながら「ハウスがトマトの香りに満ち溢れている」と、藤尾シェフ。


「農園を案内する前に話しておきたいことがあってよ。俺は“アルファ ロメオ”に感謝しなくちゃいけねぇんだ」と、霜多さんが切り出します。アルファ ロメオのオーナーだった霜多さんの長男が以前、玉突き事故に巻き込まれた際、奇跡的に大きな怪我もなく助かったからでした。

霜多さんいわく『Art of Taste』の考えは「シモタ農芸」の理念に近いのだといいます。
「俺は“この世はイコールでつながる”と思ってるの。安全な肥料・土壌が安全な野菜をつくり、安全な野菜が食べる人の健康をつくる。全部が繋がっている。幸せの循環だとか相互作用と一緒だろ?」




藤尾シェフは大きく頷きます。それゆえ、霜多さんは「エビデンスのある野菜」を提唱するのです。単に「安全・安心」「おいしい」というのではなく、土壌やたい肥、野菜の成分を分析して、それらを化学的に立証する。長年のデータの蓄積から「有機」だから「安全」、「朝採れ」だから「新鮮」とは言い切れないと警鐘を鳴らします。

霜多さんは40年前から無農薬、無化学肥料はもちろん、除草剤や殺菌剤なども使わずに野菜を育てています。その上で、良好な土壌をつくる鍵はたい肥にあると、完熟堆肥を自家製し、質の高い野菜づくりに適した土壌づくりを徹底しています。では「たい肥」は万能かというとそうではなく、熟成段階で有害物質や細菌を含む場合もあるといいます。たい肥そのものが健全か、改良した土壌が野菜づくりにどのように作用し、出来上がった野菜は「なぜ体にいいのか」、きちんと説明するために、薬科大学と共同で農場内にラボをつくりデータを化学的に分析する。農家としては前例のない取り組みを30年前から続けています。それが霜多さんの言う「エビデンスのある野菜」なのです。



「シモタ農芸」では10年前からおからを使ったたい肥づくりに取り組んでいる。


霜多さんは、今年からいちごの無農薬栽培を試験的にスタートしています。現在、何パターンかの苗を育て、適正を見て品種や方法を絞り込んで行くのだとか。目指すのは、糖と酸のバランスがよく、味に奥行きのある茨城ならではのいちご。時期ではないけれども、苗に実っていた小さな実を手渡された藤尾シェフは、試食し「フルーツビネガーを思わせるキレのある酸味がいい。最近のいちごは甘すぎるきらいがあるけれど、酸味があったほうが料理に活かせる」と、目を輝かせました。



霜多さんの次男で、シモタ農芸 副社長を務める辰樹さんから、いちご栽培の説明を受ける。

時期ではないけれども苗に実っていた試験栽培中のイチゴ。糖度と酸、みずみずしさと凝縮感のバランスが取れていて、複雑味がある。今秋から本格的な栽培を開始する予定だ。

すでに130種もの野菜やハーブを育てられていて、経営も評価も安定しているのに、まだまだ新しいことにチャレンジされ続けている霜多さん。視察中にすれ違った外国人の若者は、インドネシアの農業大学からの留学生だといいます。「誰かのためになること、幸せにつながることを一つでも多く。そんな霜多さんの姿勢からいい刺激を受けました」藤尾シェフは、大きな収穫を得て「シモタ農芸」を後にしました。



プライベートダイニング食材その②
茨城・かすみがうら「栗の森 四万騎(しまき)農園」の栗


「シモタ農芸」を出た藤尾シェフは、高速道路を1時間ほど走行し、かすみがうら市の栗農園「栗の森 四万騎農園」に向かいます。茨城県は栽培面積、生産量ともに全国一を誇る栗の産地ですが、明治元年に開業して以来、栗専門で歴史を重ねてきた農園はほかにそうありません。代表の兵藤昭彦さんの案内で、農園を歩きます。広々とした農園は彼方まで視界が開け、樹間が広く取られた畑には、心地よい風が吹き抜けます。


創業者である祖父、改革者として農場の発展に貢献した父の後を継ぎ、「栗の森 四万騎農園」を守る兵藤昭彦さん。

「元々、この辺りは赤土の土壌で、農業生産の適地ではなかった。果樹栽培ならできると祖父が栗を植えたのが始まりです」兵藤さんは農園の成り立ちから説明してくれました。草も生えない状態だった土地を「栗が育ちやすい環境に」と、畜産系のたい肥を鋤き込んで土壌改良をしたのは、父で二代目の保さん。結果、下草も生えるようになり、栗の品質も上がったといいます。

「そもそも栗の栽培について、ほとんど知識がなかった」と、話す藤尾シェフに、兵藤さんは丁寧にひとつひとつ、解説をしてくれました。一口に栗といっても、数十の品種があること。それらは米の品種と同じで、見た目や味わいでは即、分類しにくいこと。受粉や結実のしくみについて。収穫はほかの果樹と違い、落ちたものを拾うのが一般的で、食べる部分は実ではなく種であること。「子供の頃から身近だったはずのものなのに、こんなにも栗のことを知らなかったなんて。目から鱗でした」と、藤尾シェフ。


若い苗木。接ぎ木の跡がわかりやすい。2年後には収穫が可能に。

「栗の森 四万騎農園」では、農薬散布はせずに、安全で自然な味わいの栗を育てています。非常に難しいとされる品種別栽培も、行っています。栗を使った加工品も製造。人気の栗のソフトクリーム、栗渋皮煮に栗ふくませ煮(甘露煮)。マロンジャムは、プレーン、ラム、オードヴィーの3種類が揃います。試食した藤尾シェフは、これらのレベルの高さに目を丸くします。


加工品の味の良さにも定評がある。栗そのものの品質の高さと、特性を理解した加工技術があってこそ。栗の森 四万騎農園マロンジャム各種(小瓶180g)1,000円(税別)。

「特に感動したのはオードヴィーのジャム。栗とブランデーの組み合わせは、フランス料理ではよくあるのですが、これは料理に即、活用できそう。肉との相性もとてもいいです」
秋の収穫期には、生食の提案もしているという兵藤さん。昨年10月に収穫し、冷蔵保存していた生栗も剥いて出してくれました。「これはナッツですね。当然、通常のドライナッツより、フレッシュで甘みがあってとてもおいしい」と、藤尾シェフも大満足。





敷地内には大谷石で建てた石蔵があり、年に数回、コンサート会場として活用し、地元の人々を招き入れているといいます。農園とショップスペースの間にも、ベンチやブランコが用意されています。どこも素晴らしく手入れが行き届いていて、そこにいるだけで癒される心地に。

「買い物を楽しんで満足して頂ければ十分ですが、願わくば“いい場所だった”“また来たい”と思ってお帰り頂きたい」と、兵藤さん。期待値を上回る感動を。兵藤さんの視線もまた、計らずも『Art of Taste』と同じ方向に向けられていたのです。



プライベートダイニング食材その③
茨城・石岡「石岡鈴木牧場 ヨーグルト・チーズ工房」の乳製品



「栗の森 四万騎農園」のあるかすみがうら市からお隣、石岡市に移動し、この日最後となる訪問先「石岡鈴木牧場 ヨーグルト・チーズ工房」を訪ねました。牛舎にいる牛たちは皆、毛艶がよく、のんびりと寛いだ様子。そして牛舎独特の臭いがないのに驚きです。





出迎えてくれた鈴木昇さんは、牛舎を足早に案内すると、「こちらへ来て下さい」と、藤尾シェフをその裏手へと促します。作業場の一角に積まれた乾燥させた牧草を手に取ると、顔をうずめるようにしてその臭いを嗅ぎ始めました。

「これは牛たちが食べる牧草、発酵飼料です。藤尾さんも嗅いでみて下さい」
飼料の山に鈴木さんにならって顔をうずめ、「牛になった気分だ(笑)」と、藤尾シェフは冗談を言います。「いやでも冗談ではなく、食べられそうというか、ちょっとおいしそうというか。嫌な感じが全然ないです」

その言葉を聞いて、鈴木さんは大きく頷きます。「私たちが実践しているのは、牛の健康を第一に考える酪農。牛の健康は、牛が食べるものがつくるので、私たちは可能な限り牧草やトウモロコシを自分たちの手で育てています。良質な牧草は、健全な土壌があって初めて育まれる。つまり、巡り巡って、酪農は土づくりがベースなんです」





鈴木さんは、さらに牛舎や作業場から離れた、広い畑の奥に藤尾シェフを案内します。そこに山と積まれていたのは、自家製のたい肥でした。牛糞に木を粉砕したチップを加えたたい肥は70℃前後の温度で発酵中。鈴木さんがスコップで掘り起こすと、白い煙がもわっと上がります。





「発酵たい肥を活用した農業は、アジアの農耕民族の発想。自然の菌の有効活用というわけです。本来、廃棄されるものが、生きた土をつくり、動物の命を健康にする。すごく素敵なことだと思いませんか。ただし、手間がかかるので、量産はできない。100頭ベースで飼育をしなければ採算が取れないといわれる酪農ですが、うちで育てている牛は、たった30頭です。当然、牛乳をはじめ、チーズ、ヨーグルトなどの自社製乳製品の価格も高くなる。でも、それでもいいと、私たちのやり方を支持して下さる消費者の方々に支えられ、続けていられるんです」


自作の発酵たい肥で育てている飼料用トウモロコシの畑。「できることはすべて自分の手で」が鈴木さんのモットー。



工房に戻ると、牛乳、ヨーグルト、チーズ各種の試食が用意されていました。どれも牛の飼育同様、余分な化学物質の添加や過度の加熱殺菌などの処理を行わず、自然のままの味わいを活かしつくられたものです。藤尾シェフは特に牛乳の味に驚いたといいます。
「元々あまり牛乳が得意でないのですが、これはするりと体に入っていく感じ。自分でも不思議です」と、一口ひと口、確かめるように味わいます。




数や量の理論に支配されず、手間暇かかる仕事を支持し、コストを厭わず製品を手にしてくれる一人ひとりのためを思って。藤尾シェフは、「石岡鈴木牧場 ヨーグルト・チーズ工房」で素晴らしいプロダクトに出会えた上に、一組のゲストのための特別コースをつくる意味、やるべき仕事について、鈴木さんの姿勢を見て思いを新たにしました。
鈴木さんだけではありません。この1日の視察で出会った生産者のすべてが、造り手と食べ手の交歓、幸せの相互作用をベースに、日々の仕事に取り組んでいることに気付きます。




料理人である自分が加わることで、その輪をどんな形で広げていけるのか。食材ひとつひとつとの出会いもさることながら、多くの気付きを得て、藤尾シェフは試作の厨房へと向かったのです。





 『Art of Taste』by ALFA ROMEOよりご案内






■藤尾 康浩シェフによるプライベートダイニングへご招待。



Photograph by Toyohiro Zenita(OWL)

あなたの大切な方とご一緒に、世界にひとつだけの特別なひと時を味わってみませんか。
抽選で1組様(最大5名様)。
応募期間【応募期間】7/19(金)〜8/18(日)
https://www.alfaromeo-jp.com/info/campaign/2019/art-of-taste/project02/

■アルファ ロメオ「ジュリエッタ」
藤尾シェフが、イベントのための素材探しの旅に出かけた
「ジュリエッタ」についてはコチラまで。

アルファ ロメオ ジャパン オフィシャルサイト
https://www.alfaromeo-jp.com/


撮影協力 アルフレックスジャパン
































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