もう一つ、フィンランドの強さの秘訣を上げるとすれば、それは都市と自然が非常に近いということ。デザインやITで世界のトップをいくコンパクトシティでありながら、街中には公園が点在し、通勤路で季節の移ろいを感じ取れる。ベリーやきのこの季節には近所の森に出掛け、休日には中心地からフェリーで5分の島でピクニックを楽しむ。
本当の豊かさとは何か? を自然の中に見出しつつ、都市的価値観、洗練やニーズに応える形でアウトプット(商品やサービス)を提案できることが、世界を相手にビジネスをする上で大きな武器になっているのだ。
Wild Food Chef
市内から車で15分の「セントラルパーク」という名の森へ向かった。
案内してくれたのは、店を持たないフリースタイルの料理人、サミ・タルベリ。
野生の植物を採取し、フィンランドの自然の豊かさを料理を通して表現するタルベリは、“Wild Food Chef”として料理本を出版したりTVに出演するほか、フィンランドの野生食材を重要な輸出産品と考える政府主催のケータリングを手掛けるなど、その活動は多岐に渡る。
「これはラビットサラダという苦味のある野草。こっちは、“狐の葉”という名で酸味がある。ネトル(イラクサ)はスープにしてよく食べるよね。あの白い花は“ガーリックマスター”。食べると本当にガーリックの味がするよ」と小雨の降る中、タルベリは次々と食べられる野草をみつけ、摘んでいく。
「葉も花も成長ごとに違うフレーバーがある」と味見をしながら、頭の中でそれぞれの野草の甘味、酸味、苦味、塩味などを組み合わせていくタルベリ。1時間ほど森を散策すると、20種類近くの野草や花が集まった。
これらを持参したオイルと塩、コショウで和え、チーズと共にラップサンドに。仕上げにモミの木の新芽を散らして、最高に贅沢なランチの完成だ。
「森はスーパーマーケット。フレーバー豊かな食材の宝庫なんだ」というタルベリ。暮らしのすぐそばに食べられる森がある。それがフィンランドの豊かさであり、世界が憧れる贅沢かもしれない。
Wild Food Chefをもっと知りたい方は、こちら。
Sami Tallberg
http://samitallberg.com/
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