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JOURNAL / JAPAN

ようこそ発酵蔵へ【醤油 Shoyu】

埼玉・川越「松本醤油商店」

Jan 24, 2022

text by Kyoko Kita / photographs by Hide Urabe

写真で巡る発酵の世界。丁寧に時間をかけて微生物と向き合い、日本の伝統食を次代へつなぐ蔵、生産者を訪ねます。今回は180年前に建てられた土壁の醤油蔵へご案内します。

蔵は川越市の重要建築物。その年の天候や気候、また桶によっても味が変わるため、もろみをブレンドして味を調える。

もろみの状態を見ながらの櫂入れは重労働。


江戸時代の桶は分厚いため、削って修繕が可能。

もろみを袋に入れて重ね、上から圧力をかけて絞る「舟絞り」。

45年前に婿入りし松本の4代目を継いだ松本公夫さん。


伝統を未来へ繋ぐ、攻めの姿勢

松本公夫さんは、その入り口で一礼をした。天保元年、約180 年前に建てられた土壁の醤油蔵。中は薄暗く静まり返り、同じ頃に造られたという6千リットルの杉桶が立ち並ぶ。酵母菌や乳酸菌の気配すら感じるような厳かな空気。「この蔵がある間はここで醤油を造りたい」と松本さんは言う。

「江戸の台所」と呼ばれ、かつては醸造蔵も多く立ち並んだ川越。それが50 年程前からめっきり数を減らした。価格競争の波は「松本醤油」にも例外なく押し寄せた。「こんな町中ではなく、郊外に大きな工場を作って量産したらどうかという話もありました。でもボタン一つでできたらつまらない」。そして、周囲とはまるで逆の方向に舵を切る。「少なくてもいい、ひと口で特別なものとわかる醤油を造ろう」と。

目指したのは、再仕込み醤油の深い旨味と、濃口醤油の華やかな香りの両立。造りの基本は伝統に則りつつ、試行錯誤を重ねた。再仕込み醤油は麹に生醤油を加え、できたもろみを約1年熟成させるため、時間も手間もかかる。それでも「やればやっただけ結果が出るのが、ものづくりの楽しさです」。

無添加の加工品開発や、小売店の併設、醤油を使った町おこし、蔵見学。松本さんは常に時流を見つめ、攻めの一手を打ってきた。その姿勢が 180 年の伝統を、また未来へと繋いでいく。

2年熟成の再仕込み醤油「はつかり醤油」¥594/500ml(税込)と、1年熟成の濃口醤油「天保蔵醤油」¥486 /300ml(税込)は共に国産の小麦と丸大豆を使用。無添加のドレッシングや漬物も人気。



◎松本醤油商店
埼玉県川越市仲町10-13
☎049-222-0432
https://www.hatsukari.co.jp/

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