【ようこそ発酵蔵へ】磐梯山の名水とドイツの醸造技術で造る“地ビール”
福島・猪苗代「猪苗代ビール醸造所」
2022.10.31
text by Kyoko Kita / photographs by Hide Urabe
連載:ようこそ発酵蔵へ
写真で巡る発酵の世界。丁寧に時間をかけて微生物と向き合い、日本の伝統食を次代へつなぐ蔵、生産者を訪ねます。今回は、90年代の「地ビールブーム」にビールの本場ドイツの醸造技術を学び、今も変わらずその製法を守り、造り続けるビール醸造所を案内します。
初めて飲んだ時の感動をそのままに
ペールエールにIPA、ベルジャンホワイトエール等、今やコンビニでも様々なタイプのビールが買えるようになった。若者のビール離れが叫ばれる中、喉ごし重視の「最初の一杯」から、香りと味わいの多様性を楽しむ酒へと、ポジションを変えつつある。
日本に第1次クラフトビール(当時は「地ビール」が一般的)ブームがやってきたのは、90 年代後半。全国の観光地に小規模醸造所が作られた。多くは従来とさほど変わらぬビールを造る中、いくつかの志ある作り手が、本場の製法を学び、独自の味わいを追求するようになる。「猪苗代ビール」もその一つだ。96年にドイツのマイスターを呼び寄せ、レシピを開発。本国の「ビール純粋令」に基づき、モルトとホップ以外の副原料は一切加えない。いずれも直輸入で、仕込み水は目の前にそびえる磐梯山(ばんだいさん)の湧水を使う。
「現地にサンプルを送り、お墨付きをもらったそうです」と現醸造長の菊地正久さん。粉砕した麦芽を湯と混ぜて糖化させ(=麦汁)、ホップを加えて煮ることで、苦味と香りをつける。工程は単純なようだが、数種類使うモルトとホップの組み合わせは無限で、その量や加えるタイミング、糖化させる温度と時間、酵母の種類等々、様々な条件を組み合わせた緻密な設計図で味と香りを作り込む。「最初に飲んだ時の感動が忘れられません。今もその味を守り続けています」
◎猪苗代ビール醸造所
福島県耶麻郡猪苗代町
三ツ和村東85
☎0120-37-2177
http://inawashirojibeer.com
(雑誌『料理通信』2018年5月号掲載)
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