日本 [埼玉]
国産のお茶で安心安全の健康飲料を
未来に届けたい日本の食材 #13コンブチャ
2022.02.28
![日本 [埼玉] 国産のお茶で安心安全の健康飲料を 未来に届けたい日本の食材 #13コンブチャ](https://r-tsushin.com/wp-content/uploads/2022/02/hattori_yukio13_01-scaled.jpg)
変わりゆく時代の中で、変わることなく次世代へ伝えたい日本の食材があります。手間を惜しまず、実直に向き合う生産者の手から生まれた個性豊かな食材を、学校法人 服部学園 服部栄養専門学校理事長・校長、服部幸應さんが案内します。
連載:未来に届けたい日本の食材
アメリカのみならずヨーロッパでも大人気のコンブチャ。酵素、酢酸、ポリフェノール、ビタミンなどの栄養素を含み、日本でも美容や健康意識の高い人たちの間で注目を集めています。国産の茶葉コンブチャを造る「KOMBUCHA SHIP」のブルワリーに、ブリューマスターの島田祐二さんを訪ねました。
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ブリューマスターの島田祐二さん。クラフトビール造りでの長年の経験を生かし、現在のブルワリーを設計した。
コンブチャは昆布とは無関係の微炭酸発酵ドリンクのこと。砂糖を加えたお茶に、酢酸菌とスコビーという菌株を入れて発酵させたものです。では、ブルワリーからご覧いただきましょう。ここは、一から私が設計しました。醸造機器は、アメリカの自家醸造愛好家向けショップで購入したビール用発酵タンクとドイツ製のワイン用発酵タンク、スウェーデン製の熱交換器など、現在の規模に合ったパーツをアレンジして組み立てました。
健康飲料を作りながら環境を破壊しては意味がないので、蒸気を外に出さない給湯ラインや特殊循環型ボイラーを始め、環境保護を考えた造りにしています。
材料はほとんどがオーガニック。茶葉は、すべて京都の永田茶園製で有機JAS認証を取得したもの。緑茶は宇治、掛川、大分産のブレンド。冷蔵保存したものを、必要に応じて焙煎して送ってもらっています。紅茶は大分産です。加える砂糖は、日本やヨーロッパ、アメリカでも有機JAS認証がとれているブラジル産のきび砂糖。スコビー(菌株)はアメリカの酵母会社から購入したものです。
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日本の強みを生かした新しいコンブチャ作り。コンブチャ作りを支えるスコビー(写真左)に加え大切なのがベースのお茶だ。大泉工場では、国産の緑茶と紅茶を使用。濃く出すとエグミが味のバランスを崩すため、抽出は薄めに。長いお茶の文化を持つ日本の強みを生かしたコンブチャ造りに今後、益々期待が集まりそうだ。
コンブチャは紅茶で造るのが一般的ですが、うちでは緑茶も使っています。まず、6段階のフィルターを通した水で各々抽出してからブレンドし、砂糖を加えます。抽出したお茶は70〜80℃ですが、熱交換器を通して冷却し、一気に温度を26〜28℃に下げます。早く冷まさないと、雑菌に汚染されてしまうんです。そして、スコビーをできるだけ早く入れます。さらに、前に造ったコンブチャを酵母のスターターとして追加で加えます。これに布をかぶせ、開放した状態で、湿度20〜30%、温度26〜28℃の部屋で1〜2週間発酵させます。
アメリカではここから、密閉した状態で二次発酵をさせ、アルコール度数を上げるのですが、日本は製造途中であっても、アルコール度数が1%を超えると酒税法に触れてしまいます。うちでは砂糖の量を抑えて0.2〜0.3%で一次発酵を終わらせ、樽詰め前に微炭酸を加えています。
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(写真左)菌に健全な仕事をしてもらうため、人間の仕事の9割は衛生管理。現在2名のスタッフで回している。
(写真右) 醸造にはアメリカで自家醸造用に使われているタンクも活躍。
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(写真左)発酵にはドイツ製のワイン用タンクを使用。布をかぶせ、開放した状態で1~2週間ほど発酵させる。
(写真右)国産の緑茶は海外から視察に来たコンブチャ関係者から、よく製造元を聞かれるそう。
アメリカではコンブチャは非加熱が一般的なのですが、日本で流通しているものは加熱殺菌したものがほとんど。うちでは、ブルワリー内のタップルームと、2017年に東京・西麻布にオープンしたカフェ「大泉工場NISHIAZABU」、および取扱店である飲食店などで非加熱のコンブチャを提供しています。白ワインのような感覚で食事にもよく合います。ぜひ、お試しください。
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ハイビスカス&レモングラスやユズなど、季節のフレーバーコンブチャも好評。
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(写真左)樽詰めにして、飲食店への卸しも少しずつ増えてきた。
(写真右)工房のある敷地内では、毎月第2土、日曜に行われるファーマーズマーケットでコンブチャが飲める。
◎大泉工場
埼玉県川口市領家5-4-1
☎048-222-1171
https://www.oks-j.com/
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