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JOURNAL / JAPAN

日本の食 知る・楽しむ

鮎食べコース「比良山荘」 since 1959

連載 ― 世界に伝えたい日本の老舗 服部幸應

May 01, 2016

「鮎食べコース」の華、鮎ご飯。前年の落鮎を干した、干し鮎でとった出汁に、旬のフレッシュな鮎を一緒に炊き込む。鮎の凝縮された味と香りが口の中で炸裂し、えもいわれぬおいしさ。

text by Michiko Watanabe / photographs by Harry Nakanishi

初夏から夏は何といっても鮎。天然遡上する安曇川をはじめ、近隣より仕入れる鮎を、塩焼きをメインに食べ尽くす「鮎食べコース」がいただけるのは、京都から若狭に抜ける鯖街道沿いにある「比良山荘」。この、隅々まで洗練された極上の料理宿を切り盛りする、3代目当主の伊藤剛治さんにお話を伺いました。

日本が誇る、究極の山の幸

スッポンのおだしでクマ肉を煮るという、贅沢極まりない「月とスッポン鍋」。実は特別オーダーの裏メニューです。冬場、山奥で獲れる月輪グマの鍋を、「月鍋」と称してお出ししているのですが、服部先生が今回いらしたのは鮎の時期。ちょうど琵琶湖のスッポンが入りましたので、そのおだしに、冬場のクマ肉を入れて小鍋に仕立てたものでした。それを遊び心で「月とスッポン鍋」とネーミングしましたところ、お気に召していただいたようです。

「月とスッポン鍋」。スッポンのえんぺらとクマ肉入り。服部先生ならずとも、虜になる味。

「比良山荘」の創業は1959年。比良山系に登山する人たちのための、文字通り、山荘としてスタートしました。比叡山の奥の院であり、回峰行の要でもある古刹・明王院と地主神社の門前という立地でもあります。父の代から少しずつ料理に力を入れ始め、お客様から求められるままに、今のようなスタイルになりました。たとえば、初夏から夏は何といっても鮎。鮎が天然遡上する安曇川をはじめ、近隣より仕入れる鮎を、塩焼きをメインに食べ尽くしていただく「鮎食べコース」。これが評判となり、お客様が遠方からも来てくださるようになりました。秋は、名残の鮎と松茸の(奇跡的な)出会いを楽しむ「鮎松」にキノコ。そして、冬は「月鍋」、春は山菜……という風に、四季折々の山の幸を楽しんでいただくようになったのです。

比良山系の山懐に抱かれるようにたたずむ「比良山荘」。きれいに掃き清められた店の前の、水路を流れる水も清らか。

おみ足の悪い方用に特注のテーブルと椅子を置いたところ、その部屋ばかりが人気となり、2012年からテーブル席を増やしたそう。


6月の声を聞くと、山は目にも鮮やかな緑に覆われ、いよいよ鮎のシーズンが到来します。鮎はご覧の通り、こぶり。塩焼きは、頭から骨ごと召し上がっていただきたくて、しっかりと焼き込んであります。10尾くらい、ぺろりといけますでしょう?この鮎に、琵琶湖でとれますウナギ、スッポン、それから、山菜、鹿、イノシシなどが加わります。そして、鯉の洗いや鯉こく、自慢の「鮎のなれずし」が、四季を問わず登場してまいります。町中の店と違って、食材のポテンシャルが高いので、余分なものを削ぎ落とし、できるだけ素朴に、いじり過ぎないよう心がけています。

3代目当主・伊藤剛治さん。鮎ご飯も月鍋も、ご当主自ら客の目の前でサーブしてくれる。


これから夏を迎えようというのに、おかしいかもしれませんが、冬の「月鍋」もぜひお試しください。私はクマ肉がすべての肉の中で、一番ピュアな肉だと思っています。クセもなければアクもない。必ずや忘れられない味になること、間違いありません。その前に、まずは鮎から。お待ちしております。

6月の鮎解禁を待ち焦がれていた食いしん坊たちが、「鮎食べコース」目がけて全国からやって来る。コースの華はもちろん塩焼き。3尾、2尾、2尾と、3回にわたって供される。乾燥させた笹の葉をいぶしながら運ばれてくる。この香りで、食欲は全開に。鮎食べコース15000円、20000円(税サ別)。



◎比良山荘 
滋賀県大津市葛川坊村町94
☎077-599-2058
11:30~14:00(LI) 17:00~19:00(LI)
要予約 宿泊は1日5組まで
京都市内より車で約40分
http://www.hirasansou.com/

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