「癒しの自炊」を提唱。ハーバード大が開発した“調理医学”コーチングプログラム
America [Cambridge]
2024.10.17
text by Kuniko Yasutake / photographs by Harvard Medical School and Plant Docs
(写真)ハーバード大学がカリキュラムを開発した、「調理医学」オンライン指導者養成プログラム「CHEF (Culinary Health Education Fundamentals)」。2024年9月時点で、終了証取得者は3000人に上る。単一的な食事療法を強制しない調理医学の基礎知識、調理実習法、さらに撮影機器の効果的な使い方まで、アクティブ・ラーニングとコーチングを通して学べる全米唯一のコースだ。
「調理医学(Culinary Medicine)」とは、米医学界で体系化がスタートして20年足らずの新分野だ。非感染症疾患の予防・治療・予後の心身機能回復を、投薬のみに頼らず、食を通して実現させることを目的とする。科学的根拠をベースに症状に応じた食材選び、調理法、食べ方まで、患者の文化的背景も考慮し多角的に探求するという学問なのだ。
ハーバード大学医学部監修のCHEF (Culinary Health Education Fundamentals) コーチング・プログラムは、教える人も学ぶ人も同時に調理を実践しながらスキルアップを図るレッスン法で、「癒しの自炊」を提唱する。シェフの経験がある医学博士によって2014年に開発され、2020年オンライン化された。医師や看護師、リハビリ師等の医療福祉従事者に加え、パーソナルトレーナーといった顧客のウェルネス促進に携わる職業も対象で、同校卒業生でなくとも受講できる。オンデマンドのビデオクラス修了から3年以内に、5週間の実習(年4回実施)に参加する2部構成だ。
元小児科医で、ロードアイランド州を拠点に食と医療をつなぐ教育サービスを展開する、非営利団体「プラント・ドクス(Plant Docs)」共同代表のサンドラ・ミュージアル氏もCHEFプログラムを受講。「学生時代、食を変えれば症状の改善が可能で、患者を薬漬けから解放できるなんて教えてもらわなかった」と話す。
2023年現在、メディカルスクールの3分の1が調理医学を履修科目としてカリキュラムに取り入れるほどとなった米国。調理医学に関する社会人教育講座も、高等教育機関や地域団体を通して複数誕生している。 1970年代の日本で「医食同源」を初めて唱導したのも調理を学んだ医師だったが、非感染症疾患の減少がSDGs指標のひとつであることを考えると、今後“シェフドクター”は、米国のみならず世界的に必要とされる存在になるかもしれない。
◎Culinary Health Education Fundamentals (CHEF) Coaching
受講料 第1部 270ドル、第2部 495ドル
https://cmecatalog.hms.harvard.edu/culinary-health-education-fundamentals-chef-coaching-basics
*1ドル=148円(2024年10月時点)