ハイドロポニックス(養液栽培)の野菜に、ロンドンの高級店が熱い視線を注ぐ理由
England [London]
2023.10.16
text by Yuka Hasegawa
(写真トップ)2023年3月、ミシュラン・グリーンスターを獲得したロンドン、メイフェアにある「アプリシティー」で人気のサラダメニュー。「クレート・トゥ・プレート」で採れた色鮮やかなレッドバターヘッド・レタスが使用され、ケールやトマト、味噌をアレンジしたアイオリと共に。
ミシュランが、サステナブルなガストロノミーを積極的に実践するレストランを讃えるために、2021年度版ガイドブックから新設した“グリーンスター”。地球環境に配慮した厨房を実践することは、今や世界の第一線で活躍するシェフにとってデフォルトと言えよう。フードマイレージやフードロス削減を掲げる取り組みはもちろんだが、2023年初頭にグリーンスターを獲得したロンドン「アプリシティー(Apricity)」の看板メニュー、ハイドロポニックスで栽培したレタスで作るサラダが話題となっている。
“ハイドロポニックス”とは、土壌ベースではなく、培養液でダイレクトに栄養を与えてレタスやルッコラなどの葉野菜を水耕・養液栽培する農法。この技術を使って栽培された葉野菜が、ロンドンのレストラン業界に徐々に浸透しつつある。特に、2019年にコンテナ2台を再利用し、LEDライトを使って縦型水耕栽培するファームを立ち上げた「クレート・トゥ・プレート(Crate to Plate)」は、英国におけるハイドロポニックス農法の先駆者として注目されている。
「ハイドロポニックスのメリットは、従来の土壌栽培が必要とする5%の水で、葉野菜の栽培ができるので、環境にとても優しい。また、土壌由来の病原菌の感染のリスクも抑えられるので、化学薬品や殺虫剤を使用しません。さらに、培養液で効率的に栄養を摂取するので、植物が早く育ちやすく生産性が高い」と語るのは、同社のチーフ・オペレーション・オフィサーの、ニッキー・タメーダさん。
縦型水耕栽培を取り入れているので、上段の苗木に冠水した液肥は、自然に下段に移動していくというシステムで、LEDライトなどと共に、全てコンピュターで精密にコントロールされているという。
「バイオディグレーダブル(生分解性)で再利用ができる箱を使用し、電気自動車のバンで市内のレストランや小売店に直接配達。最大限にサステナブルであることを目指しています」
注文後24時間以内に厨房に届くという葉野菜やハーブ。まさに地産地消であり、フードマイルがほぼゼロであるこのシステムは、今後のフードチェーンに新たな選択を提示していると言える。
◎Crate To Plate
https://cratetoplate.farm
*1ポンド=182円(2023年9月時点)
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