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JOURNAL / 世界の食トレンド

ファインダイニングでもノンアルコールの波 独創的クラフトドリンクは“酸”が決め手?

England [London]

2023.12.11

text by Yuka Hasegawa / photographs by Haruko Tomioka
(写真)「ザ・ウォーター・ハウス・プロジェクト」の看板である、ボトルに入ったハウス・インフュージョン(自家製ソフトドリンク)。左から、野生のバラの花びらをインフューズ(浸漬)したレッドカラントベースのドリンク、グースベリーとバニラ、アップルヴィネガーをベースに酢漬けにしたラベージ(レモンやセロリなどを感じさせるハーブ)とリンゴを合わせたドリンク。

世界的に拡大しつつある、“アルコールフリー”の波。昨今のロンドンにおいても、ノンアルコール市場の急成長には目を見張るものがある。低・ゼロアルコールのビールやスピリッツを一堂に会したイベント「マインドフル・ドリンキング・フェスティバル(Mindful Drinking Festival)」が開催されたり、モクテル(アルコールフリーのカクテル)が世界に冠たる英国の老舗バーにも広く浸透している。

この潮流はレストランシーンにも顕著に反映され、ロンドン市内のファインダイニングが提案する、自家製ノンアルコールドリンクとフードのペアリングが話題だ。特にミレニアル世代に人気のエリア、東ロンドン・ブロードウェイマーケットにほど近い「ザ・ウォーター・ハウス・プロジェクト(The Water House Project)」の、おまかせメニューに合わせた創作ノンアルドリンクは、ロンドンの若い美食家の間で注目されている。

たとえば、グースベリー(西洋スグリ)を発酵させた自家製ドリンクをベースに、グースベリーのピクルスとバニラを合わせたハウス・インフュージョン(素材を液体に浸漬して作る自家製ドリンク)。ピクルスの酸味とバニラの甘い香りを含み、サバの料理と合わせる。

「酸味が、サバの脂分をすっきり切ってくれます」と語るのは、同店のオーナーシェフ、ガブリエル・ウォーターハウス氏。ロンドンのミシュランスターを冠する店で研鑽を積みながら、ファインダイニング料理を自宅で提供するサパークラブで名声を築き、2021年に路面店を開業した新進気鋭のシェフだ。

その他、ムール貝の皿にはコリアンダーシード、ベイリーフ、フェンネル、スターアニスやタイムなど多様なハーブをインフューズしたドリンクを。デザートには、スコットランド産の非加熱のヘザーハニーと白樺の樹液を使った独創的なドリンクを合わせる。


(写真)「ザ・ウォーター・ハウス・プロジェクト」のオーナーシェフ、ガブリエル・ウォーターハウス氏。「ノンアルドリンクとはいえ、アルコールドリンクを模倣したもの(たとえばノンアルのワインなど)を目指しているわけではない。ノンアルのハウス・インフュージョンに最も大切なのは、酸味とのバランス。それがなければフラットな味になってしまう」と氏は語る。

店のメニューは季節によって変わり、「料理に合わせて、自家製ドリンクを開発するのを楽しんでいる」と氏。ロンドンの酒類市場調査会社IWSR(International Wine & Spirit Research)のリポートでは、ノンアル市場は2026年までに、現在の33%の成長が見込まれるそう。今後も、ロンドンのシェフやミクソロジストが個々のクリエイティビティを競い合い、独創的なノンアルドリンクが発信されていくのがとても楽しみだ。

(写真)店内は、ウォーターハウス氏の妻パトリシアさんが指揮する、個性的なドライフラワーをふんだんに配したオーガニック感溢れるデコレーションと、インダストリアルな雰囲気が融合したインテリアが印象的。



◎The Water House Project 
1 Corbridge Crescent, Bethnal Green, East London E2 9DT
19:00~(土曜はランチ12:30~も営業)
日曜~火曜休
コース 110ポンド、150ポンド(共にドリンクペアリング付き)
https://www.thewaterhouseproject.com/

*1ポンド=186円(2023年12月時点)

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