ロンドンのフーディーから熱い視線、バラ・マーケット・エリアにモダン西アフリカ料理店が誕生
England [London]
2024.02.26
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text by Yuka Hasegawa
(写真)店のシグニチャー料理である揚げパンを使った「アカラ」。モチモチとした弾力のある食感が特徴。高級食材であるスペイン産のカラビネーロ(車エビの一種)と、ココナッツミルクと干しエビなどを使ったヴァタパソースをトッピングして。photo by Charlie McKay
ロンドンブリッジ駅の南に位置し、ファインダイニングに生鮮食品を卸す店が軒を連ねる、英国最大規模の食料品市場バラ・マーケット。その周辺には中東料理、タコスやオイスターバー、すし屋やバオ(包)の専門店など、新進気鋭の店が一同に会し、世界中から訪れる美食家で常に賑わいを見せる。高架下のスペースを改装して2023年10月にオープンし、このエリアの話題になっているのが、西アフリカ料理をモダンにアレンジした「アカラ(AKARA)」だ。
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(写真)高架下スペースを改装した店舗。エントランスのアーチが特徴的。
オーナーは、2020年にロンドンのフィッツロビアに西アフリカ料理を軸にした創作料理「アココ(AKOKO)」をオープンし、一躍脚光を浴びたレストラン起業家アジ・アココミ氏。アココはシェフのおまかせメニュー(10皿120ポンド)のみだが、アカラはアラカルトがメイン。そのカジュアルな雰囲気で、開店以来、若いロンドナーに人気だ。
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(写真)「アココ」と「アカラ」のオーナー、ナイジェリア人の血を受け継ぐアジ・アココミ氏。英国の大学を卒業後、ITプロジェクトマネージャーとして活躍していたが、料理好きが高じて、2017年、レストランをオープンすることを決意し、英国有数の料理学校で学ぶ。18年、西アフリカの食のリサーチのため現地に赴き、20年9月に「アココ」を開店、22年10月新プロジェクト「アカラ」を立ち上げた。photo by Jodie Hinds
店名の“アカラ”とはナイジェリアの家庭料理で、アフリカ原産のブラック・アイド・ビーンズ(黒目豆)の粉で作ったフリッター(揚げパン)のこと。同店では、フリッターの表面に切り込みを入れ、ココナッツミルクを使ったアフリカのヴァタパソースを絡めた車エビ、牛ホホ肉、ホタテ、シャントレル茸のパテなどを詰めて供される。
「西アフリカ人にとって食のアイデンティティも言えるアカラを、ロンドンのダイニング・シーンに紹介したかった」と語るアココミ氏。他にも、スコッチボネットなど複数の唐辛子でマリネして焼き上げるひな鳥のグリル「ラゴスチキン」、南西ナイジェリアに起源を持つ、ココナッツミルクを加えて炊く「ジョロフライス」などが揃う。
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(写真)シグネチャー料理「アカラ」(各種8~10ポンド)以外にも、ビーフ、チキン、ベジ料理など、バランスのとれたアラカルトメニュー(12~34ポンド)が揃う。黒い土鍋の料理は、ココナッツミルクを入れて炊いた店の看板「ジョロフライス」、右「ラゴスチキン」。左手前は、グリルしたキャベツを、”アブヌ・アブヌ”と呼ばれるガーナのグリーンソースと共に。photo by Charlie McKay
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(写真)オリジナルのノンアルドリンク、スコッチボネットを使ったコーディアルのソーダ割り(5ポンド)がおすすめ。唐辛子の程よい辛味とコーディアルのほのかな甘味が感じられる。料理との相性は抜群だ。
「ナイジェリア、ガーナ、セネガルなどの西アフリカには、旨味のある発酵食品や燻製食品、バラエティに富んだ味わいの唐辛子で作るソースなど、多くの興味深い料理が存在する」とアココミ氏。多人種と多文化が共存し、ダイバーシティを長年体現しているロンドンをプラットフォームに、祖国の料理に新しい息吹を吹き込み、創造的なテイストを提案する氏の今後の活躍にますます期待がかかる。
◎AKARA
Arch 208, 18 Stoney Street SE1 9A
12:00~14:00LO、18:00~21:00LO
日曜、月曜休
https://www.akaralondon.co.uk
*1ポンド=187円(2024年2月時点)
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