2024年シェフ・オブ・ザ・イヤーは、ロンドンに彗星の如く現れたナイジェリア系女性料理人
England[London]
2024.07.01
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text by Yuka Hasegawa
(写真)モダン西アフリカ料理店「チシュル」のシェフ、アデジョケ・バカレ氏。今最も注目を集める料理人だ。
2024年6月10日、英国レストラン業界で権威のある「ナショナル・レストラン・アワーズ」が発表され、ナイジェリア系シェフ、アデジョケ・バカレ(Adejoke Bakare)氏が“シェフ・オブ・ザ・イヤー”を受賞し大きな話題となっている。
バカレ氏は2月に発表された『ミシュランガイド2024』グレートブリテン&アイルランド版で、英国初のアフリカ系女性シェフとしてミシュラン一ツ星を獲得。今回の「ナショナル・レストラン・アワーズ」でも、三ツ星、二ツ星を冠するファインダイニング界を牽引するシェフと共に、最終の5人に名を連ねたことで、さらなる熱い視線が集まっていた。
現在は、ロンドンの新進気鋭の店が集まるフィッツロビア地区にモダン西アフリカ料理の店「チシュル(Chishuru)」を構えるバカレ氏。独学で料理を習得し、20年に南ロンドンのブリクストンでポップアップ店を開いて話題になったのがサクセスストーリーの発端だ。同店は、英国のレストラン評論家の大御所、ジェイ・レイナー氏に絶賛され、その後常設となり、22年にはロンドンの情報誌『タイムアウト』でベストレストラン賞を獲得した。
メニューには、ピーナッツと唐辛子が入ったナイジェリアの伝統的なスパイス「ヤージ(Yaji)」を使ったホロホロ鳥、スコッチボネットソースとともに供される古代種のスイカの種が入ったパンケーキ、「モイモイ」と呼ばれる黒マメのペーストの蒸しものなど、ナイジェリア、ガーナなど、西アフリカの土着的な食材やスパイス、テクニックをモダンに昇華させた創作料理が並ぶ。
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(写真)西アフリカの伝統的な食材やスパイス、テクニックを駆使した店の看板メニュー。右下の皿はホロホロ鳥と西アフリカの伝統的なタマネギの入ったスパイシーなヤサ(Yasa)ソース、左下は古代種のスイカの種を使ったソースで仕立てられたグリルドキャベツ。
「今までもいろいろなレストランの賞をいただいてきましたが、ミシュランの星を授与されたことは、この上なく嬉しい。アフリカ系の女性として星をもらったことで、多くの、私のようなシェフにインスピレーションを与えられたらと思う。“You can’t be what you can’t see (見えないものには、なれない)”ので」とバカレ氏。
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(写真)英国北西部マンチェスターで開催された『ミシュランガイド2024』グレートブリテン&アイルランド版の授賞式で、発表後、名誉あるミシュランのコッココートを授与されるバカレ氏。今回、新たに18店の一ツ星レストランが誕生した。photo by MICHELIN Guide
『ミシュランガイド2024』グレートブリテン&アイルランド版では、同じくロンドンのモダン西アフリカ店「アココ」のアヨ・アデイェミ氏がミシュランの星を獲得したり、NYを拠点とするナイジェリア人シェフ、クワメ・オンウアキ氏がメディアを賑わすなど、アフリカ系シェフが世界的にメインストリームに台頭しつつある昨今だが、その数はまだ数えるほど。また、西アフリカを軸にした創作料理は、美食家たちにとっても新しいジャンルといえるが、「心を込めて料理を作り、自分を信じて、突き進むこと。これがアフリカ系のシェフへのメッセージです!」とバカレ氏は熱く語る。
彼らの活躍は、レストラン業界にとどまらず、常に新しいテイストを求める世界の美食家たちの間でも、人種やジェンダーに関する意識が多様に変化していることを物語る。
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(写真)22年10月に南ロンドン、ブリクストンの店をクローズし、23年9月のフィッツロビア地区に新店をオープン。シンプルなインテリアながら、アフリカの要素がいたるところに散りばめられている。ミシュランを獲得したとはいえ、堅苦しいファインダイニング店ではなく、温かくリラックスしたアットホームな雰囲気を大切にしているという。
◎Chishuru
3 Great Titchfield Street, London W1W 8AX
セットメニューのみ
ランチ(3皿) 45ポンド
ディナー(前菜盛り合わせを含む3皿) 95ポンド
ランチ、ディナー共にベジタリアンメニュー有
https://www.chishuru.com/
*1ポンド=200円(2024年6月時点)