プラントベース・シェフがBBCの看板料理コンテスト番組で最高峰に
England [London]
2024.08.26
text by Yuka Hasegawa
(写真)研ぎ澄まされたテクニックを駆使して丁寧に調理されるヴィーガンディッシュの数々。上中央の白い皿は店の看板の一品である、バイオダイナミック農法で作られたキャロットの塩漬け、フェンネルのスイート&サワー、ハイビスカスと共に調理したパープルキャロットなどの盛り合わせ。シンプルかつインパクトのあるプレゼンテーションも魅力だ。photo by Safia Shakarchi
2006年からオンエアされ、今年でシーズン19を迎えたBBCの看板料理コンテスト番組「グレート・ブリティッシュ・メニュー (Great British Menu:以下GBM)」。アマチュア・ベーカーたちが腕を競う「ブリティッシュ・ベイクオフ」と肩を並べる英国の国民的番組だ。GBMはプロのシェフがエントリーし、前菜・魚・メイン・デザート部門のチャンピオンを目指す。最終的に各部門の勝者計4人が、その年毎の特別イベントの晩餐会で、自らのディッシュを披露する。
2024年3月に放映されたGBMで注目を集めたのが、コンテストの最高峰「チャンピオン・オブ・チャンピオンズ」に輝いたカーク・ハワース氏。GBM初のプラントベース・シェフであり、卓越したクリエイティビティと緻密なテクニックで、ヴィーガンの皿をファインダイニングに進化させた気鋭のシェフとして、現在メディアで引っ張りだこだ。
そのハワース氏が、24年7月上旬、東ロンドンに初の実店舗「プレイツ(Plates)」をオープンし、さらなる熱い視線を浴びている。
「“動物由来の食材を使わない”という制約があるからこそ、大地に根付いた食材に真摯に対峙し、試行錯誤を重ねて素材の本来の味の深みを出していきます。一つの素材に惜しみなく手を加え、妥協せず、味のレイヤー(層)を丁寧に重ねていく。そうすれば、野菜の方から、新しい“テイスト”の境地を開いてくれるのです」と語るハワース氏。
例えば、英国産の舞茸をスチームして、ヘイ(干し草)でスモーク後、グリルでバーベキュー。仕上げは白醤油をスプレーして、燻製酢を垂らす。GBMのデザート部門で審査員から絶賛されチャンピオンを獲得した皿は、サワーチェリージャムとマカデミアナッツの入った生カカオのケーキ。3種類のアフリカ産コショウとバニラキャラメルソースと共に供される。
先日の予約開始と共に、TV番組で披露されたハワース氏の創作料理を味わいたいというフーディのアクセスが殺到。25席のこぢんまりした店舗ということも相まって、25年2月まで予約がいっぱいとのこと。
「日々研鑽を積み、ゲストに、スペシャルな食の経験を提供していきたい」と話すハワース氏。ヴィーガンブームが少し落ち着きをみせていた昨今のロンドンだが、氏の華麗なる登場で、プラントベースのガストロノミーは新たなチャプターに突入したようだ。
◎Plates
320 Old St, London EC1V 9DR
セットメニューのみ ランチ、ディナーともに
75(7皿)~90(8皿)ポンド
https://plates-london.com
*1ポンド=187円(2024年8月時点)