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JOURNAL / 世界の食トレンド

Germany [Speyer]

午後2時半開店。ドイツでパン職人の働き方改革進行中

2022.04.18

German [Speyer] 午後2時半開店。ドイツでパン職人の働き方改革進行中

text by Hideko Kawachi / photograph by Die Brotpuristen

種類の豊富さとマイスターの技術で知られるドイツのパンだが、近年、人材不足が問題となっている。その解決策の糸口が見つかるのでは?と注目されている店が西ドイツの小都市シュパイヤーにある。


「ディー・ブロートプリステン(Die Brotpuristen)」オーナーのセバスティアン・ドイヴェルは、会社員からの転職組。パン好きが高じて店を開いたのは2016年のことだが、オープンと同時に大きな話題を呼んだ。なぜなら開店時間が午後2時半だったからだ。「私はエゴイストだから(笑)会社員時代と生活のリズムを変えたくなくて。うちの店ではスタッフ全員が朝6〜7時に仕事を開始し、週末は休む。“普通の仕事”と同じです」

パン職人の仕事はとてもハード。朝にパンを買う人が多いため、仕事始めは夜11時頃というのもざら。大量生産する格安チェーン店の台頭で、パンは工場製品というイメージが浸透し、誇りを持てる職業でもなくなったと、ドイヴェルは指摘する。
「開店が遅くても翌日もおいしいパンを焼けばいい。うちでは1週間は保存可能で味も落ちないサワー種を使い、販売するのはライ麦100%や小麦をベースに雑穀を入れたものなど700g以上の大きなパンのみ。種類は定番7種ほどに絞っています」

バゲットのみ、開店に合わせて焼き上がるように仕込み、パネトーネを季節販売する他はお菓子も作らない。売れ残ったパンはサイトに載せて通販する。賃貸料が安い郊外に店を構え、イートインコーナーも作らない。電車も通っていない町だが、車で来て6〜7個と買っていく常連も少なくないという。

削ぎ落としたビジネス形態は、競争相手も多い大都市では難しいだろう。しかし転職組だからこそ実現できた柔軟なアイデアは、ドイツパン業界に一石を投じ、労働環境の改善への意識改革が始まっている。

(写真)ドイツのパン職人の定番ユニフォーム、チェックのパンツもクールじゃないと廃止。「若い人に目標にしてもらえるような存在になることが、パン業界を盛り立てるためにも重要!」とドイヴェルさん(手前左)。



◎Die Brotpuristen
Auestrasse 31, 67346 Speyer
☎+49-62323121900
14:30~18:30
土曜~月曜休
https://diebrotpuristen.de/

*1ユーロ=135円(2022年3月時点)

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