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JOURNAL / 世界の食トレンド

「戦争ではなく、フムスを作ろう!」パレスチナ&イスラエルの共同オーナーが平和のメッセージを発信

Germany [Berlin]

2024.01.15

text & photographs by Hideko Kawachi(photo1,3,4)
(写真)「フムス・サビーフ(HUMMUS SABICH)」(14ユーロ)。肉厚の揚げナスにスパイシーなソース、とろけるフムスの食感がよく合う。おすすめのペパーミントとローズウォーターのホットドリンクを添えて。

シリアやレバノン、ヨルダン、イスラエルやパレスチナなどの「レバント料理」が流行っているベルリン。モダンなアレンジでミシュランの星を獲得している高級店から、気さくなストリートフードまで、多彩な味が楽しめる。

2023年10月7日のイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃に端を発する戦争は、これらのレストランにも影を落とした。その中で、パレスチナ人とイスラエル人が共同経営するレストラン「カナン(KANAAN)」が打ち出したメッセージが、大きな反響を呼んでいる。

「憎しみよりも愛を選ぶことが、前に進む唯一の道(中略)。憎しみはもうたくさんだ。これ以上の復讐を求めても私たちの傷は癒えない。私たちの子どもたちが、私たちが今いるような悪夢を体験しなくていい未来のために努力をすることが、私たちの世代の責任だ。愛は闇を追い払うことができる唯一の力であり、私たちは毎日カナンでその力を目の当たりにしている」


(写真)オズ・ベン・ダヴィト(左)とシャリル・ダヴィート。

ハマスの攻撃目標となったイスラエル南部キブツ・レイムに親族がいるオーナーのオズ・ベン・ダヴィトは、あまりのショックに数日店を開けられなかったという。共同オーナーのシャリル・ダヴィートはその時、イスラエルにいた。しかし、店をオープンしておいしい料理を出し続けていかねばと気持ちを奮い立たせ、10月10日に、Instagramにアップしたのが上のメッセージである。

オズ・ベンとシャリルがカナンをオープンしたのは、2015年のこと。
「最初のきっかけは“イスラエル・パレスチナ問題”だったんですよ」とオズ・ベンは笑う。シャリルが作ったフムスが、自分の思うフムスと違ったのだ。両者どちらも、自分の国こそがフムス発祥の地だと主張し、一緒に料理をするうちに店のアイデアがまとまっていた。
「戦争ではなく、フムスを作ろうじゃないか!」

店名の“カナン”とは、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教の祖であるアブラハムが、最初に移住した約束の地のこと。オズ・ベンとシャリルにとって、カナンは希望と統一のシンボルなのだという。

同じ食卓に着き、料理を分け合うというシンプルな行為を通じて、平和のメッセージを広めていこうと考えている2人。料理の味はもちろんのこと、そんなオーナーの姿勢に共感を覚え、応援したいと訪れる客も多い。フムスを食べながら、一刻も早く、平和が訪れるようにと願わずにはいられない。

(写真)ずっと準備中だった料理本は2023年10月中旬に発刊。暗い日々だからこそ、2人の料理はいっそうその重要性を増している。『Kanaan - das israelisch-palästinensische Kochbuch』(Südwest Verlag刊)


(写真)「Make Hummus Not War」のポスターが入口を飾る、カナンの店先。


*1ユーロ=157円(2023年12月時点)

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