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JOURNAL / 世界の食トレンド

昔懐かしの郷土料理をドイツ国民が再評価の兆し?ダンスホール併設の目から鱗の注目店

Germany [Berlin]

2025.01.20

昔懐かしの郷土料理をドイツ国民が再評価の兆し?ダンスホール併設の目から鱗の注目店

text by Hideko Kawachi
牛肉のタルタルをハリネズミのフォルムに見立てた「メットイーゲル」(14.5ユーロ)。もとは70年代ドイツの人気料理で、メット(豚の生ミンチ肉)にタマネギを刺してイーゲル(ハリネズミ)の形にする、パーティには欠かせない存在だった。牛肉を使えば洒落た一品に。

ドイツではこれまで、ドイツ料理の人気は非常に低かった。2019年のある調査によれば、対象となった52カ国のうち、国内で郷土料理の看板を掲げているレストランが最も少ない国がドイツだった*という。しかしここ数年で、再評価の動きが高まっている。

*DINING OUT AS CULTURAL TRADE/National Bureau of Economic Researchより
調査によると、ドイツ国内のドイツ料理店は34%。ちなみに自国の料理店が多い国ではトルコが80.9%、中国が78.4%、イタリアが78.0%、次いで日本で69%(ファストフードを含む)

その好例が2024年秋にオープンした「ルナ・ドロ(Luna. D’Oro:黄金の月)」だ。創業1913年の歴史あるダンスホール「クレアヒェンス・バルハウス(Clärchens Ballhaus)」併設の郷土料理のレストランで、古くさいイメージがあるパーティメニューをあえて提案したりと、話題を呼んでいる。

「ドイツ料理の可能性は、国内でも国外でも過小評価されていると思う」と言うのは、このレストランを率いるシェフのトビアス・ベックだ。ドイツに住む誰もが一度は食べたことがあるであろう、甘いパプリカ入り茹でソーセージのマスタード&ホースラディッシュ添え、またベックの子どもの時の思い出の味だという「スパゲッティアイス」も取り入れた。

シェフのトビアス・ベック。
シェフのトビアス・ベック。
「デブレツィーナー」と呼ばれる、スイートパプリカ入りの茹でソーセージ。粗挽きで燻製の香りが香ばしく、ホースラディッシュにも合う。
「デブレツィーナー」と呼ばれる、スイートパプリカ入りの茹でソーセージ。粗挽きで燻製の香りが香ばしく、ホースラディッシュにも合う。

店では、郷土料理らしさを失わないように気遣いながらも、アレンジも加えている。例えば1970年代ドイツの人気パーティスナック「メットイーゲル」は、可愛らしいハリネズミを模したフォルムはそのままに、通常は豚の生肉を使うところを、ビーフタルタルに変更。人気のドイツ料理、シュニッツェル(カツレツ)は肉厚のヒラタケを使って、ベジタリアン向けの料理にしている。

観光客が多い立地らしく、ベルリン名物もメニューに並ぶ。キュウリのピクルスはフライにして、ベルリン風仔牛のレバーは、タマネギと炒めるのではなく、レアにグリルしてタマネギのジュに浸して洗練された味わいに。観光客はもちろん、ドイツ人も「実はドイツ料理ってこんなにおいしいんだ!」と目から鱗が落ちる店なのだ。

「ヒラタケのシュニッツェル」(15.5ユーロ)はポテトサラダとパセリマヨネーズを添えて、ボリュームたっぷり。
「ヒラタケのシュニッツェル」(15.5ユーロ)はポテトサラダとパセリマヨネーズを添えて、ボリュームたっぷり。
ベルリン郊外シュプレーヴァルトで作られている甘酸っぱいキュウリのピクルスをフライに。ディルのソースで(6.5ユーロ)。
ベルリン郊外シュプレーヴァルトで作られている甘酸っぱいキュウリのピクルスをフライに。ディルのソースで(6.5ユーロ)。
Clärchens Ballhaus

Clärchens Ballhaus 
Luna. D’Oro
Auguststraße 24/25, 10117 Berlin
17:00~
月、火曜休
要予約
https://claerchensball.haus/

*1ユーロ=164円(2024年12月時点)

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