味よし、食感よし、価格は手ごろ。麹菌で作る代用肉に注目!
Germany [Berlin]
2025.04.07

text by Hideko Kawachi / photographs by Nosh.bio
Nosh.bio(ノッシュ・ビオ)社が開発した「麹チャンク」。鶏肉のような歯応えとジューシーさに驚く。
大規模で工業的な畜産がもたらす環境負荷は大きい。そのため持続可能な社会にはプラントベース食品の普及が鍵となると言われている。しかし近年、代替肉や魚は、原材料の価格高騰や運搬のCO2排出量、添加物の多さなどの問題が指摘される。新製品は食品としての認可に時間がかかり、遅々として進まない状況だ。
ベルリンでは、スタートアップ「ノッシュ・ビオ(Nosh.Bio)」が新開発した“麹菌から作るプロテイン”が、現状を打破する存在として注目を浴びている。
「私たちはまず、現時点での植物性プロテインに関する問題点を明確にし、大量生産商品市場に適した解決策を考え始めました」というのは、ノッシュ・ビオのCEOでファウンダーの1人、ティム・フロンチェックさんだ。
まず手頃な価格。どんなに良い製品でも高すぎては一般市場には広まらない。肉と同様の価格帯で、少ない素材で大量に製造が可能であることが重要だと考えたという。

また代替肉の多くが“まずい”と敬遠される理由になっている、食感。肉に近い歯応えやジューシーさの実現。そして食品添加物。肉や魚に食感や味を似せるために食品添加物が多くなると、消費者は離れていく。遺伝子組み換え製品もNGだ。またアイデアはよくても製品の認可に時間がかかりすぎるのも現実的ではない。
そこで生まれたのが、すでに食品として認可されている麹菌=アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus Oryzae)をプロテインの構造と同じ形に作るというアイデアである。
「アスペルギルス・オリゼーは繊維が非常に長く、培養するだけで肉のような食感になるので添加物を入れたり加工するプロセスが不要です。本来の旨味を生かしてもいいし、取り除くこともできます。乾燥させれば保存もしやすく、アイスクリームやソースにとろみをつけることもできますよ。これを混ぜたアイスは通常のものよりも室温で50%溶けにくいことがわかっています。つまり、冷蔵エネルギーを抑えることも可能なのです」
原料にはほとんどお金はかからない。糖分を含む液体に麹菌を浸けて発酵させるのだが、今後は、例えばジャガイモを加工する段階で出るデンプンを含む水を使うなど、他の食品製造の副産物を利用することも考えているという。現在の研究では3万8000〜7万5000リットルのタンクを、たった2日でいっぱいにすることができるそうだ。
創業からわずか数年で、欧州最大級の精肉加工品メーカーと商業提携を発表。鶏肉のような食感の植物性代替肉「麹チャンク」を開発している。世界で初めての単一原料による肉の代用品となるという。ノッシュ・ビオの麹製品が世界を席巻する日も近いかもしれない?

◎Nosh.Bio
https://www.nosh.bio/