COVID-19対策―― 世界の飲食店はどう動いたか? ドイツ編
2020.06.19
COVID-19対策――
世界の飲食店はどう動いたか? ドイツ編
Jun. 19, 2020
世界の飲食店や飲食業に携わる人々はこの危機にどう対応し、何を学び、何を模索しているのか?コロナの渦中にいる、各国のジャーナリストがリポートします。
「小さな雇用を守る」政策は、飲食店を救えるか?
4月20日、外出と接触制限の緩和をスタートしたドイツ。しかし、4月末の時点で、飲食店は再開の目処が立っていない。5月末までこの状況が続けば、ホテル・飲食業界全体の赤字は約180億ユーロにのぼると、独ホテル・レストラン協会は発表した。
中小零細企業、フリーランスなど「小さな雇用の維持」に重きを置いたきめ細かな政策を打ち出した連邦政府だが、家賃も高く観光客もいないベルリンで、小さな飲食店は持ちこたえられるのか? 今年オープン6年目になる「ヘルツ&ニーレ」のオーナーソムリエ、ミヒャエルさんに話を聞いた。共同オーナーのシェフのクリストフさんと、フルタイムの従業員が1名。テラスも合わせれば50席ほどの店だ。
スタッフは3人なので、国と州の即時支援金を合わせて14000ユーロ(約160万円)が申請できる。「オンラインで簡単な申請をしてから3日後に支払いがあり、そのスピードには本当に助かりました」。しかし、11月、12月と店舗の入っている建物の工事で不測の休業期間があったため、長期間持ちこたえられるほどの蓄えはない。3月頭からはイベントが次々と中止になり、ケータリングの仕事がなくなった。店は3月半ばまで通常営業をしていたが、外出を控える人が増え、来店数も減っていたという。
本格的な休業を余儀なくされた3月23日、隣接するレストランの呼びかけで「Kochen fur Helden(ヒーローのための料理)」がスタートした。食堂が閉鎖され、自炊もままならない病院や介護施設などで働く人々のために、ボランティアで料理を作るというものだ。食材は仕入れ先から提供を受けたり、スーパーマーケットチェーンが協力。現在、全国102軒のレストランが参加している。フードバンクのための料理作りも行う。「お金にはならないですが、誰もが苦しい状況の中で、少しでも最前線で頑張ってくれている人の助けになれば。仕入れも無駄にならないですし」と、クリストフさん。
ボランティア活動の一方で店の売り上げのため、もともと販売していた伝統料理や保存食の瓶詰めのラインナップを増やし、週に1~2度店頭で販売する。賞味期限も長く、まとめて製造できるため経済的で、衛生面でもテイクアウトより安心感がある。休業対象となっていない食料品店でも取り扱いがあり、売れ行きは上々だという。
多くの店と同様に、自前の前売り食事券も販売するが、最初こそ常連客を中心にサポートが集まったものの、1カ月も経つと、業界全体でテイクアウトや食事券の売れ行きは減少傾向に。
「今は貯金を少しずつ切り崩しながらやっていますが、この状況が6月まで続いたら後はありません」と一刻も早い緩和を願っていたミヒャエルさんだが、5月半ばから飲食店の再開が可能になり笑顔が戻った。感染拡大防止のガイドラインに沿った営業は席数が減り、対応にもコストがかかるが、何よりもまたお客を迎えることができるのが嬉しいと語ってくれた。
<世界のコロナ対策:ドイツの場合>
▼行動制限要請、地域・全国封鎖の時期
3/18~ 飲食店の営業時間規制(ベルリン6:00~18:00、州によっては休業)
3/23~ 外出制限・接触制限(4/20から一部緩和)
▼飲食業への要請や命令内容
3/23~ 外出制限に伴い、全国の飲食店・ホテルは休業(テイクアウト、デリバリーのみ可)
(以下、解除の流れ)
5/9~ 感染拡大防止条例ガイドラインに沿って営業再開(州により再開時期は異なる)
▼飲食業(企業全般)への主な救済策
◎ 支援金 (ドイツ連邦による)
3カ月分の運転資金(賃料や什器リース料など)に充てることが可能。人件費や保険料への使用は不可
●個人事業主、従業員が5人までの企業:最大9,000ユーロ( 約108万円)
●従業員が10人までの企業:最大15,000ユーロ(約180万円)
◎ 賃金補償
操業短縮手当として従業員の給料の60%
◎ 失業手当
3/1~6/30に新たに申請した場合は、最初の6カ月間は資産監査はなしで受給できる
◎ 家賃支払い猶予
4/1~6/30の間は家賃滞納があっても2年間は貸主から賃貸契約を解除できない
◎ 納税猶予
支払い義務の一時的停止措置
◎ 税制援助
7/1~来年6/30まで消費税を19%から7%に引き下げ
◎ 融資(ドイツ復興金融公庫による)
昨年の3カ月分の売上高を上限に、従業員50人まで最大50万ユーロ(約6000万円)、従業員50人以上で最大80万ユーロ(約9600万円)。利子は3%(従業員11~250人までの企業向け)など
◎ Herz & Niere
https://herzundniere.berlin/
(『料理通信』2020年7月号/「ワールドトピックス」より)